5 "柳蓮二"
『あ、』
学校帰り。
昨日の夜見たニット帽の男が公園のベンチに座って缶コーヒーを飲んでいるのが見えた。
私は男の前まで来た。
男は怪訝そうに私を見上げる。
「……何か用か?」
『何か用か?じゃないよ!! アンタ、柳くんじゃなかったのね!?』
「俺は柳だ」
『まだそんな嘘つくの? 帽子取りなさいよ!!』
べりっとニット帽を奪う。
『……え、』
そこには、今日学校で見た"柳蓮二"の顔があった。
『え? え??』
「言っただろ。俺は"柳"だって」
『じゃあ何で今日学校で昨日の夜のこと知らないフリしたのよ?』
「フリじゃねぇよ」
『は?』
てゆーか学校でのキャラとすんごい違くない?
学校じゃあもっとシャキッとしてるよね?
頭の中が混乱する。
『……アンタは"誰"なの?』
聞かずにはいられなかった。
男はニヤリと口角を上げる。
「知りたいか?」
『は?』
「俺が誰か」
『……』
男は立って私を見下ろす。
「俺は"柳蓮二"じゃない」
『はぁ?』
さっき"俺は柳だ"って言ったじゃない!
「まぁ一言で言うと、柳蓮二は"二重人格"ってやつなんだ」
『二重……人格?』
「体は"柳蓮二"だけどな。中身は柳蓮二の"双子の魂"さ」
『双子?』
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