俺は生きた | ナノ


  22 何言ってるの


「何を、話していたんだ?」
『……いろいろ?』


病室に入るとなんとなく気まずくて、勢いよくベッドの脇に座った。


『というか、"睡眠不足"って、寝てなかったの?』
「……蓮一は、表に出ると、眠らないんだ」
『え、』


蓮一が寝ない……?


「何でも、眠ると、"次に目を覚ますことができるかどうか不安だから眠らない"と、言っていた」


目を閉じると、次に開けることができるか不安になる……

目を閉じれば、二度と開けることはできないかもしれない……

蓮一は、そんな恐怖といつも闘っていたんだ。


「しかし、眠ると、俺と"内"で話ができるから、落ち着くあの公園で眠っていたのだろう」
『そう、なんだ』
「栄養失調の件も、食べると眠くなるから、食べるのは極力避けていたんだ……」


……私、蓮一のこと、何も知らないなあ……


『……蓮一、いる?』
「……ちゃんと、いるぞ。話す、か……?」
『できるの……?』
「……ああ。蓮一を、呼んでこよう……」


そう言うと柳くんはすぐに眠りに落ちた。

やっぱり、疲れてるんだなあ……


……ってそんな時に蓮一呼んじゃって良かったのかな……


「……陽毬」
『、蓮一』


ふ、と目を開けた瞳は蓮一の色をしていた。


『身体、大丈夫なの……?』
「……俺が出てくるのはそんなに身体に負担はない」
『そっか』


蓮一はぐったりとベッドに身体を預けた。

本当に大丈夫なのかな……


「……陽毬」
『ん?』
「俺は……」
























「……お前が、好きだった」






















『……え?』


好き"だった"……?


「蓮二に、気付かされた……俺はお前が好きだと」


蓮一はベッドの脇に座る私に手を伸ばし、優しく頬を撫でた。

私は呆然とその動作を受け入れる。


「……誰も気付かなかった俺の存在を、お前は否定しなかった」


何、何言ってるの?


「……お前は、俺に名を付けてくれたな……実はすごく嬉しかったんだ」


ねぇ、その言い方、まるで――


「……陽毬。お前に出会えて、良かった」


やめて、 それ以上言わないで








「ありがとう、陽毬……」


















がくんと、蓮一の腕が私の膝に落ちた。

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