俺は生きた | ナノ


  18 後悔なんて


『い、ない……?』


蓮一は手で髪を強引にかき上げ、空中の一点を見つめていた。


『蓮一?大丈夫?』
「……クソッ、見つからねえ……っ!!」


どこだ、どこにいる、と虚ろな目でつぶやく蓮一を、私はぼんやりと見ていた。
多分私の中のどこかで、"柳くんがいなくなった"ということを、うれしく思う私がいたんだと思う。


『……良かったんじゃない』
「……良かった?」
『だって、柳くんは居なくなったんでしょ?良かったじゃん、もうその身体は蓮一のものだよ』
「……お前、」


蓮一はスッと立ち上がり、私を睨んだ。


「……見損なった」


そして、私の前から去っていった。





……別に、思ったことを言っただけ。
後悔なんてしてない。


次の日学校に来ると、柳くんが無断欠席をしたという噂が学校じゅうに広まっていた。


「陽毬?元気ないけどどうかした?」
『……ううん、何でもないよ』


柳くんと蓮一の性格は正反対だから、やっぱり学校で蓮一が柳くんを演じるのは相当気力使うんだろうな……

蓮一、今どこにいるのかな……
あの公園かな……



気がつくと、蓮一のことを考えている私がいた。



"……見損なった"



昨日見た蓮一の姿がフラッシュバックする。

ねぇ、蓮一……どうしてあんな悲しい目をしていたの?

蓮一……私は貴方の気持ちがわからないよ……





その日の放課後、いつもの公園に行ってみたけど、蓮一はいない。

……どこに行ったの……?
会いたいよ、蓮一







「神崎さん」
『……何ですか幸村くん』


次の日。
何故か幸村くんが私の教室へやってきた。
視線が痛い。嫌だなぁ……


「柳の居場所を知らない?」
『……何で私にそんなこと聞くの?』
「柳と仲良いんじゃないの?」
『……何で』
「何で、って……柳がキミの話を楽しそうにするもんだから」
『……柳くんが?』


柳くんが、私の話を……楽しそうに?

何で?


「柳はキミのことを相当気に入ってるみたいだから、てっきり仲が良いのかと」
『え?』


柳くんが……私を?


『……それ、いつの話?』
「柳がキミの話をしたってやつ?結構前からだよ、多分去年とかじゃないかな」


去年……?

じゃあ、蓮一が私に接触する前から、柳くんは私のことを知っていた……?

柳くんは、私を…………




"私は蓮一が好き"




「……神崎さん?」
『私……なんて、ことを………』



"柳くんは居なくなったんでしょ?良かったじゃん、もうその身体は蓮一のものだよ"



私は蓮一ばかりに気を取られて、柳くんの気持ちを考えてなかった。



"……見損なった"



蓮一は、柳くんの気持ちを知ってたんだ……


『……幸村くん』
「ん?」
『私、蓮……柳くんを、探してくる』

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