6 なんだ
それも、とても近くから。
ゆっくり顔を上げる。
『ぁ、』
そこには、まっすぐ自分を見る、昨日の狼がいた。
突然のことに、私は動けなかった。
私は、このまま喰われるのだろうか……
噛み裂かれるのだろうか……
その時、私はふと思った。
……でも、この先
……生きていて……何がある……?
何 モ ナ イ私が死んで、誰かが困る……?
誰 モ 困 ラ ナ イあの女子の顔が私に変わり……もう一人の私の口が、ゆっくりと弧を描く。
『……ふ……ははっ』
なあんだ……
私、死んでもいいんじゃん。
狼を見る。
相変わらず狼は、こちらをじっと見つめていた。
『どうしたの? 私を喰いに来たんじゃないの?』
どうせなら……
ただ死ぬより、食べられて この狼の血肉になりたいな……
それとも、そんなことも望んではいけないのかな……
狼が近付いてくる。
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