87 わからない
「! 俺が、わかるのか?」
体を離して私をじっと見つめる宍戸。
私……今 何て言った?
「ちょ、ちょい待ちい2人とも! 展開が早過ぎてついていけへんのやけど」
忍足(変態)が入ってくる。
宍戸は舌打ちして、私の手を引っ張って、部室の外に連れていこうとした。
「待て! どこに行く」
跡部が慌てて引き止めた。
「部室じゃ話になんねえよ。2人で静かに話ができる所へ行く」
「まず説明してえな。俺らには何が何だか、」
「わからなくていい」
「宍戸」
イライラとしていく宍戸を引き止める。
宍戸は私の方を向き、ハッとして 強く握っていた私の腕を静かに離した。
「……悪い」
「大丈夫。それよりも、ちゃんと説明して?」
「、でも」
「
私もよくわかんないし」
「
お前もか」
記憶が混乱してるんだってば。
仕方ないじゃん。
私はさっき座っていた椅子に座り、宍戸にも座るように促した。
宍戸は渋々近くのソファに座る。
「あー……何だ? どこから話すりゃいいんだ?」
「まず宍戸とお嬢さんの関係から聞いてええか?」
お嬢さん……って私のこと?
「きもっ」
「
口に出てるで」
初対面なのに何やねん……と隅っこの方でのの字を書き始めた変態きもっ
「あー……何だ、有梨は……その……」
そして変態には目もくれず、頬を掻きながら視線を泳がせる宍戸。
やっぱり"宍戸"は"宍戸"ってことか。
天然か。
天然なのか。
「有梨は………………………
お、俺、の………
………彼女です」
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