79 意識
「ん? おう。気い抜くとすぐ標準語になっちまうから結構大変なんだよな」
木陰は"普通に"喋ろうとしても関西弁になっちゃうのに……
人それぞれなのかな。
「立海に入ったのだって、原作通りに事を進めようと意識したからだし」
「え、」
「本当は地元の中学校が良かった」
そうなったら立海に仁王がいないってことになっちゃうじゃん!
「でも、原作では描かれてない仁王の日常は、俺のやりたいこといっぱいしてる」
「ニマ動とか?」
「そうそう。"詐欺師"を作ったのも、意識して"仁王"を演じるのが疲れるから、だな」
じゃあ"詐欺師"は、唯一 朝陽が仁王を演じなくて済む、息抜きの存在だったんだ……
「ニマ動やってなかったら五十嵐とも出会わなかったわけだし」
「……それってさ、原作に影響してない?」
「……どうにかなる!」
……やっぱり私、この世界に大きな影響を与えてしまっている。
私がこの世界に来なければ、仁王と出会わなかったし、仁王が私と出会わなければ、"成り代わり"の存在は知られなかったはずなのに……
こんな時に、よく考えてしまう。
"私は何故この世界に来たの?"
って……
「五十嵐?」
「……もしかしたら……この世界は、原作通りに進まないのかもしれない」
prev /
next