78 マジよ
桃をつまむ仁王に、仁王が覚えていないさっきのことを一通り話す。
「マジか」
「マジだ」
仁王は照れ臭そうに指で頬を掻いた。
「朝陽……久遠俊、だっけ」
「おう……何か恥ずかしいな」
「何で?」
「俺からしたら10年以上も前の記憶だぜ?」
あ、そうか。
朝陽は仁王に成り代わって今年で……15年目?
「幼少期の苦労はよく聞いてます。本当にお疲れ様でした。よく頑張ったね……っ!」
「
余計に悲しくなったんだが。てか聞いてますって、誰から」
木陰のこと言っちゃっていいかな。
いいよね!←
「木陰って覚えてる?」
「木陰? 覚えてるも何も、俺の大親友」
え、そうだったんだ
全然知らなかった
「実は木陰さ、忍足謙也に成り代わったんだよね」
「……
え?」
「木陰も成り代わってこの世界にいるの」
「
ちょっと大阪行ってくる」
「
落ち着きなさい。あなた今病人だから!」
「あ……」
立ち上がろうとして立てた膝を戻し、しょぼんとうなだれる仁王。
そんな顔するなよ。
「てか、勢いで行ってから"どうしよう"ってなるのが目に見えてるんだけど」
「う、」
グサッと何かが胸に刺さったように倒れる仁王。
元気だな。
そこで ふと木陰とは異なる点があることに気付いた。
「……仁王ってさ、あの独特な喋り方は"意識して"やってるの?」
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