暁の空へ | ナノ


  69 誰だお前


「うわ、」

仁王の熱を計ると38度。
意識朦朧となるはずだわ。

冷えピタを仁王の額にペシッと貼る。


立海テニス部レギュラー陣たちを追っ払って、やっと仁王の看病を始めた。

つか切原くん私のこと睨みすぎでしょ……
怖かったよさすがに……
そりゃあ信用ないのはわかるけどさ……


「ぅ……」
「あ、仁王起きた? 大丈夫? 痛い所ない?」


ぼんやりと私を見る仁王。
焦点が合ってない。

大丈夫かなこれ……
病院行った方がいいかな?
何かの感染症かもしれないし……


「……夕、月……?」
「え、」


へにゃ、と笑う仁王。
熱にやられたか。


「やだな、私の名前は"暁"だよ」
「夕月……」
聞いてる?


ああ、病人相手に真剣になっちゃダメだ。
きっと今は何言っても伝わらない。


「っていうか"夕月"って名前知ってるってことは、聞いてくれたんだ。"最後の闘い"」
「……?」


とろんとした目で私を見る仁王。

思ったことを口に出した私が悪かったよ、うん。


「何か食べたいものある……って聞いても仕方ないんだった。早く寝なよ。おやすみ」
「……やだ」


やだ……って子供か!


「子供じゃないんだから。おとなしく寝なさい」
「お前……夕月、なんだろ……」
「だから私は"暁"だって」
「やっと、会えた……」
「え?」


やっと会えた?


ちょっと待て。そんなに熱にやられたか。病院行く?」
「……病院嫌い」


だから子供かっつーの!!


「やっと、会えたのに……俺の嫁に」
「はぁ?」


俺 の 嫁 ?


「……何、だよ……俺のこと、忘れちまったのか?」
誰だお前


思わずツッコむ。

いつもの独特の喋り方はなく、標準語で喋る仁王。
"詐欺師"の時と同じだ。


「……あさ…ひ…だよ、朝陽……」
「え……?」

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