67 謎の女[少年Aside]
「ああ、今すぐ神奈川に戻って欲しいんだ」
《何故私が県外にいると!!??》
「氷帝にいるんでしょ? それくらいわかるよ」
氷帝にいる?
「え? ああ、仁王が練習中に熱出してぶっ倒れちゃってさ。仁王のご両親今週いないみたいで、仁王の看病する人がいないんだ。――そう。家隣でしょ? しかもだだっ広い家に一人暮らしだし。一晩くらい仁王おいてやってよ」
家が隣……?
仁王先輩の家の隣の家の人?
《男と女が一つ屋根の下で一晩過ごせと!?》
「そうだけど? ――大丈夫だよ。仁王はかなりの高熱で意識朦朧だし。有梨は色気無いし」
《正直に言わないで下さい》
有梨……?
幸村部長が名前で呼んだ……?
ますます頭が混乱する。
本当、何者なんだ?
考えているうちに幸村部長が電話を切った。
「幸村部長、誰に連絡してたんスか……?」
恐る恐る聞くと、幸村部長は笑って答えた。
「仁王の隣の家の住人だよ」
あまりにも優しい笑顔だったから、思わずこう聞いてしまった。
「仲良いんスか?」
すると幸村部長は少し考えてからこう答えた。
「悪くはないんじゃない?」
ますます謎は深まるばかりだ。
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