64 見つけた[少年Sside]
「、白石」
試合を終えたらしい白石が、タオルで汗を拭いながら話に入ってきた。
「白石の知り合いか?」
「んー、まぁ俺も知り合いのうちに入るんかな?」
「は?」
「財前と謙也の仲良しさんや」
財前光と忍足謙也の?
「神奈川に住んどるんやけど、練習試合で東京来るから会いに来てって言うたら来てくれたらしいで」
「神奈川?」
「おん。確か……立海大附属中やったかな」
「立海だと?」
跡部が眉をひそめる。
立海、か……。
もう一度そいつを見る。
どこかに電話をかけていたらしいが、携帯をしまい、テニスコートの外へ歩き出した。
「ん、何や、帰ってしまうんかいな?」
――その時、不意に風がそいつの帽子の鍔を押し上げ、そいつの顔が見えた。
「……え……」
その顔は、知り合いに良く似ていて……
「……白石。あいつの名前は?」
「ん?」
「名前だよ!! あいつの」
いきなり怒鳴った俺に白石は驚きながらも答えた。
「五十嵐……有梨さん、やけど?」
五十嵐有梨「有梨……っ!?」
「っ!? おい、宍戸!!??」
俺は屋内テニスコートを出て、一直線に正門に走った。
見つけたのに……っ
やっと、見つけたのに……っ
このまま逃がしてたまるかよ……っ!!!!
今なら50mを5秒……いや、4秒で走れるかもしれない。
それくらい、かつて無い程俺は全力疾走していた。
正門の前には既にバスが停まっていて、そいつが乗った所だった。
行くな……っ!!
行くなっ!!「
有梨っっ!!!!!」
名前を叫ぶと、閉まったドアの向こうで目を見開く有梨と 目が合った。
俺の願いを無視してバスは出発する。
でも、いい。
・・・
あいつだって、確認できた。
――やっと見つけたぜ、有梨
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