55 俺のおかげ!
パンパンと不機嫌なぜんざいPが手を叩く。
せっかくお蔵さんと出会えたのに。
「俺のおかげやな!」
「え?」
「俺が誘わなかったら出会えてへんもんな!!」
ガハハハと笑うスピードスター。
「謙也さんに先越されただけで俺も誘う気でしたけど」
「なん……やと」
ぐはあっと崩れるスピードスター。
感情が激しいな。
「俺かて……暁と話したいことたくさんあったんや……2人で………」
謙也くん……?
「……しょうがないな」
「え?」
「一周だけね」
"木陰"があまりにも寂しそうな表情をするから、私は謙也くんを連れて氷帝の敷地内を散歩することにした。
「有梨先輩と謙也さんって、」
「ん?」
「俺には入れない、深い"何か"があるんすよね……」
謙也さんとは最近知り合ったばっかのはずなのに、と財前は不機嫌そうに言った。
「せやなあ……あの様子からすると、二人の間に"何か"があるのは確かやな」
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