暁の空へ | ナノ


  7 引っかかること


8月18日。私は全国大会の会場に来ていた。

ちなみに夏休み中なので寝坊してしまい、立海の試合には間に合いませんでした。てへ。
会場着いた時にはもうとっくに終わってたよね。
というか、起きた時に『3回戦勝った! 準決勝進出(((o(*゚▽゚*)o)))』というメッセージが仁王から来ていた。
試合終わるの早すぎん? いや、私が起きるのが遅かったのか……

それでも会場に来たのは見たい試合があったから。
目当てはもちろん、


「ゲームセット! ウォンバイ忍足! 6ゲームストゥ4!」


青学vs氷帝。
昨日青学の人たちと顔を合わせてしまったので、こっそりと木陰から試合を見ていた。

シングルス3の忍足vs桃城は、忍足の勝利。やっぱり原作通りか。
ハァ、と溜息をついて、私は空を見上げた。


(原作通りなら途中で雨が降って、残りは明日に持ち越されるはず)


頭上の空はよく晴れているものの、遠くの空には黒い雲が渦巻いていて、原作通りに雨が降ることを暗示していた。
折りたたみ傘持って来てて良かった、とまた溜息をついた。


「あれ、有梨?」
「げ」
げ?
「ナンデモナイデス」


見つからないように木陰から試合を覗いていたのに、振り返ると不二がいた。


「何してんのさ、今試合中じゃん」
「今回僕補欠だから」
「ぷ、ドンマイ」
え?
「ナンデモナイデス」


転生前のあの優しい女の子はどこに行っちゃったんだろうか。悲しいなあ。
視線を不二からコートに戻すと、ダブルス2が始まろうとしていた。
不二ってば早くみんなのところに戻ったほうがいいと思うんだけど。


「そういえば有梨、海堂が君のこと探してたよ」
「え? なんで?」


突然のことに、私は振り返って不二を見た。
海堂と言えばこれからダブルス2に出る人じゃんか。
そういえば昨日ぶっ倒れてたけど大丈夫だったのかな。


「なんか、昨日のお礼が言いたいって言ってたよ」
「えええ? タオル届けただけなのに」
「迷惑かけたからって、渚……ほら、海堂のお兄さんに言われたらしいよ」
「はあ」


本当に、別にお礼なんていいんだけどなあ。
またコートに視線を戻すと、ダブルス2が既に始まっていた。
氷帝は向日と日吉。青学は乾と海堂。
海堂の様子を見ると、全快のようで。まあ一口くらいしか飲んでないし、大丈夫か。


「お礼なんて大丈夫ですありがとうと伝えておいてー」
「そんなこと言って、あんまり関わりたくないだけでしょ?」
「ご名答」


だってめんどくさいし。


「わかった。伝えてみるけど、海堂は礼儀正しいからダメだったらごめん」
「うん、ありがとう」


じゃ、僕は戻るけど、有梨は熱中症とか気を付けてね、と不二は青学のベンチに戻って行った。
私はまたコートに視線を戻し、ぼんやりと試合を見つめた。


「海堂、か」


海堂と言えば、引っかかるのはあのお兄さん……渚って言ったかな。


『ごめんなーうちの愚弟が……』


丸い頭、サラサラの黒髪、鋭い目付き、黒縁眼鏡。


『だぁいじょうぶだって〜鍛えてるし! ほら力こぶ〜』


ヘラヘラと笑って話す、あの喋り方。


『いいからここはお兄さんに任せておきなさい』


なーんか、懐かしい感じがするというか、なんというか。
それに、やっぱり海堂にお兄さんがいたって記憶がないしなあ。


「ゲームセット! ウォンバイ乾・海堂ペア! 5ゲームストゥ7!」




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