6 蹴散らせ[渚side]
[渚side]
1日経っても、昨日のあの子のことが頭から離れなかった。
タオル届けてくれたってことは、あの場にいたってことだろ?
ということはあの子は青学の生徒……?
ただのそっくりさんかもしれないけど、有梨のことを何か知ってるかもしれない。
早く起きてそこの所 薫に聞けば良かった……
薫の応援と称して見に行くか? と思ったが、俺の足は学校へ向かっていた。
記憶が正しければ、今日は全国大会3回戦。
氷帝が……青学に負ける日だ。
跡部は、部員の前では部長として振る舞うんだろうけど……
学校に帰ってきて解散したら、きっと跡部は生徒会室にやって来て、ただ一人で悔しさを噛み締めるんだと思う。
俺は部長でも生徒会長でもない、ただの"跡部景吾"を支えたい。
2年とちょっと前、
[おい、お前]
[……俺?]
[そう、お前だ。お前、生徒会副会長やらねぇか?]
跡部は地味な俺に声をかけてくれた。
それからずっと、一緒に生徒会活動し続けてきて、跡部は天才ではなく努力家なんだということを知った。
……本当、頑張りすぎなんだよ、あいつは。
2年とちょっとしか一緒に活動してないけど……
まあそれなりに、1年の頃にくらべれば俺にも素を見せてくれるようになったから……
跡部の友人として、俺は跡部を支えたい。
生徒会室のドアを開けると、生徒会長の机の上に仕事が山盛りに積み重なっていた。
……これは酷い。
俺は荷物を置いて、生徒会長の椅子に座り、腕まくりをした。
この量だと、全部終わる頃に跡部たちが帰ってくる……かな
「……なぁ、覚えてるか? Do you...Do you remember?」
俺たち初めて出会ったあの春の日……
……もうすぐ、試合が始まる頃だろうか。
運命なんて蹴散らせよ、跡部
----------------
作中歌:ミュージカル テニスの王子様 より 『Season』
prev /
next