2 どうしてこうなった
目当ての試合がやっているコートへ行くと、既に試合は全て終了していて。
観客や選手はいなくなり、コート整備をする生徒だけがコートを歩き回っていた。
――青春学園VS比嘉中
結果 青春学園勝利。
……まだ、原作通りか。
やっぱり……立海は決勝戦で青学に負けちゃうのかな……
(……っ、だめだめ!)
私は パンッ と自分で自分の両頬を叩いた。
何弱気になってるんだ。
立海が……皆が、負けるはずがない。
だって、1年生の頃からあんなにきつそうな練習を続けてきて……努力し続けていること、私は知ってる。
大丈夫。きっと……
「あれ、有梨?」
その声に、私は振り向いた。
「……不二」
私の声を聞いた不二はにこりと笑った。
「ちょっと食事にでも行かない?」
*
「不二のカノジョ?」
「違います」
「即答するところがまた怪しいっすねー!」
「違うってば」
待って。何でこうなった。
……そう、確か不二と会って、食事に誘われて……お腹すいてたしいいかなーなんて特に何も考えずにOKしたんだ。
そして連れて来られたのは某居酒屋(開店前)。
そこには青春学園男子テニス部が勢揃い。
「やあ、ごめん待った?」
「遅いにゃー不二ー」
見つかる前に逃げようと思ったが、とんでもない力で腕を掴まれていて、無駄な抵抗はほんの一瞬で終わった。
不二と二人だと思っていたのにこのザマだ。
「僕の友達の五十嵐有梨。カノジョではないよ」
「そうなる予定はー?」
「うーん……どうかな?」
「知らんわ。あ、五十嵐有梨です。初戦突破おめでとうございます部外者がしゃしゃり出てすみません」
「気にしないで。僕が無理矢理連れて来たんだし」
そうですね。
てか青学の皆さんの疑わしい視線が痛いのでさっさと私から視線そらすような何かしてよ!
「じゃあ手塚、そろそろ乾杯しようか」
私の様子を見た不二が手塚に言った。
そしてそさくさとカウンター席に一緒に座り、ジュースを持つ。
「今日は初戦突破ということだったが、各々反省があることだろう。その反省を活かし、これからの試合も臨んでいこう。……乾杯!」
「「「乾杯ー!!」」」
皆はその合図でジュースを飲み、すぐに用意された食事に手を伸ばし始めた。
ようやく、痛い視線から解放される。
私と不二は皆に背を向け、カウンターで軽く食事をし始めた。背後がうるさいけど気にしない。
「何で連れて来たの?」
「何か悩んでそうだったから」
ズバッと言い当てた不二は、やっぱり中身は親友:鷺坂結衣なんだと思った。
「たいしたことじゃないんだよ。……ただ、原作通りだなぁ、って思ってただけ」
「……原作、か……」
「不二は気にしないの?」
「うん、あんまり詳しく覚えてないし」
そうなんだ……
まあ、不二からしたら何十年も前の話だもんね。
「でも、この世界は有梨がいる時点で原作通りじゃないのは確かじゃない?」
「……うーん……」
「未来は誰にもわからないよ。だから面白いんだ」
「……今の不二っぽい」
「僕は不二だよ」
その会話に、二人してクスクスと笑った。
「それに、有梨がいること以外にも、原作通りじゃないことはいっぱいあるよ?」
「そうなの?」
幼少時代は好き勝手やったしねーなんて笑いながら話す不二。
そういえば謙也くんもそんなこと話してたな……自由人め
「不二先輩」
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