1 来ました全国大会
「ねえ……」
「ん?」
「応援、必要?」
来ましたよ、全国大会in東京。
仁王に応援しに来てって言われちゃったからね。暇だったからね。
でも全国大会第一試合(立海は一回戦ないから二回戦だけど)、結果は圧勝。
全ての試合が6ー0のラブゲームで終わった。
相手の六里ヶ丘は戦意喪失だ。
「原作通りにやらせてたまるかって意気込んでたんだけどさ、関東大会決勝負けたし……」
「
初耳だよ」
「誰かの応援がないと、くじけそうだったんだよ……みんな」
原作には書かれていなかったけど、関東大会決勝で負けたことが学校でかなりたたかれたみたいだ。
"今年は不作なんじゃない?"
とまで言われたそうだ。
……辛いな。
私は仁王の頭をガシガシと撫でた。
「ちょ、なになになに」
「よく頑張りました」
仁王だけじゃない。
みんな、いっぱい練習してきた。
努力してきた。
圧勝でも、その勝利ひとつひとつ、頑張らなかった試合なんてない。
「……ありがとう五十嵐」
「んー」
「……五十嵐サン」
「んー?」
「そろそろ止めてくれませんかね」
俺の頭ボンバーヘッドになってない? と、私が手を離した後の頭を触ってそさくさと髪型を直す仁王。女子か。
「みんな待ってるんじゃない? 行ったら?」
「えーファンの相手しとるだけだし疲れるー」
実はファンに見つからないように木の陰から試合を観戦しているところだったのだ。
ファン怖い。
「あー! 仁王先輩見っけ!」
「バッ、赤也!! 今いい雰囲気だったのに!!」
「「……」」
ぎゃあぎゃあと植え込みが揺れる。
いい雰囲気って何。
「ほら行きなって」
「
激しく拒否します」
木の陰に縮こまる仁王に私はため息をついた。
実を言うと仁王が"久遠俊"だと知ってから、私の仁王への対応の仕方が変わった気がしてならなかった。
今までは"仁王雅治"……つまり紙の中の人物として、無意識に一線を引いていたんだと思う。
でも、"久遠俊"だって知ってから、それがなくなってしまった気がするんだ。
それが、怖くて仕方がない。
「じゃあ私あっち見てくるから」
「えー」
「そこに隠れてる2人ー仁王を連れていきなさーい」
「らじゃー!」
「え、俺たちっすか!?」
「うわセコっ!」
丸井と切原に連行されていく仁王を見送り、私は試合が行われているとあるコートへ向かった。
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