暁の空へ | ナノ


  130 起こす!


「げ、いたのか宍戸」
「何だよ、いちゃ悪いかよ」
「いや、そういうことじゃないけど……いやいや、寧ろ居てくれて良かったんだけど……」


仁王は燐をチラッと見た。
燐は仁王の背中から宍戸を見ていた。


「颯太、こいつを頼む」
「ん? おお」


仁王は燐を一回謙也の傍に下ろした。
そして自らは有梨の眠るベッド脇に立って有梨を見つめる。


「……そういえば、五十嵐を起こすとか言うてたけど、どうやって起こすん?」
「……。……と、とにかく、話しかける」


目を泳がせる仁王に"ああ、無計画なのか"と謙也は思った。


「起きろ五十嵐!」
開けゴマみたいに言うなや
「これしか思いつかないんだよ。五十嵐!」


何度も有梨の名前を呼ぶ仁王を、宍戸は呆然と見ていた。


……何やってんだ、仁王……


「宍戸と颯太もぼやっとしてんだったら協力しろよ。五十嵐!」
「何かよくわかんねぇけど、名前呼べば目を覚ますのか?」
「それはやってみなきゃわからん! 五十嵐!」
「……有梨!」
「起きろや五十嵐有梨!」


その時だった。


「有梨!」


音もなく、かつものすごいスピードで 病室に入ってきた――


「! 不二! ジャストタイミング!」


不二だった。
仁王が早く、と手招きする。
不二は必死に名前を呼ぶ宍戸と謙也の様子を見て、一瞬で状況を理解し、そこに加わった。


「有梨! 戻ってきて!!」
「五十嵐!」
「有梨!」
「五十嵐!」
「……」


必死に名前を呼ぶ4人に囲まれている有梨を、燐は謙也の横から黙って見ていた。

すると、


ピッピッ……ピッ……ピッピッ

規則正しく鳴っていた音が突然乱れる。


「! 五十嵐!?」
「有梨!」
「五十嵐!」


有梨は寝苦しそうに眉間にシワを寄せていた。


「おい五十嵐! いつまでそっちにいんだよ、さっさと戻ってこい!」
「有梨! 戻ってこい!」
「みんな待ってるで!」
「有梨! 僕らはこっちにいるよ!」


有梨はさらに眉間にシワを寄せ、呻き始めた。
仁王は有梨の手を握り、名前を呼び続ける。


「五十嵐、こっちだ。こっちだぞ」


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