暁の空へ | ナノ


  109 矛盾


「……っ、は?」


驚きで、私は声が出なかった。


宍戸は、久遠俊が私を殺したって言った。
でも不二は、 井ノ原怜緒……つまり、宍戸が、私を殺したって言った。


二人の言っていることに矛盾が生じる。


「ふざけてんのか、不二!? なんで有梨を愛してた俺が、有梨を殺さなきゃならないんだよ!?」


ガタッと音をたて、不二に掴みかかる勢いで宍戸が立ち上がる。
不二は目を見開き、宍戸を見て何かを考えているようだった。


「……どうやら、僕たちの記憶は違うようだね」


どちらかが、間違った記憶か。
どちらも、間違った記憶か。


「有梨、記憶がある人は他にいないの?」


不二に声をかけられて、私は我にかえる。

記憶がある人……


「仁王は……記憶はないと、思う」
「思う?」
「今までの話を聞く限りだと、私と仁王……久遠俊は、例のオフ会で1回会ってる、よね?」
「うん。それは確か」
「でも仁王は、私が夕月だってことがわからなかった」


私が言うまで、気付かなかったんだもの。
あんなに近くにいたのに。


「木陰……忍足謙也は?」
「謙也くんは……どうだろう。謙也くんは私が夕月だってこと、わかってたみたいだよ。声と雰囲気で」


こっちに来る直前のことは覚えてないって言ってたけど、何か思い出したかもしれないし。


「そう……今、連絡とれる?」
「メールして今電話できるか聞いてみる」


スマホを出してメールを打とうとするが、手が震えてうまくいかない。

どうして震えてるの……?


真実を、知るのが怖い……?


「……有梨?」
「……ごめん、手が、震えて、」


怖い……?


どうして?


何が怖いの?


わかんない。



わかんないよ……












だれか、










だれか









タスケテ





































「五十嵐……?」

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