108 違う
大きな衝撃で呆然とする私と、辛そうに話をする宍戸の間に、黙って話を聞いていた不二が口を挟んだ。
「……何だよ。今更止めたっておせえぞ」
「君……今の話、本気?」
「……は?」
本気って……
本気も何も、今の宍戸の話が、真実なんでしょ……
私は…………久遠俊に、……殺されたんだ。
「どういう意味だよ」
「本気で今の話が真実だと思ってるの……?」
「なんで嘘をつかなきゃなんねえんだよ? お前だって記憶があるはずだろ?」
「……
違う」
………え?
「違う……?」
「何がだ?何か俺間違ったこと言ったか?」
わからないから教えてくれ、と言うように不二に体を向ける宍戸に嘘をつく様子は無くて。
不二はそんな宍戸を見て愕然とした様子だった。
「……不二?」
「何なんだよ、言いたいことあるなららっきり言えよ」
「そうだよ、不二」
「……」
不二は、うわ言のように呟いた。
「……有梨の背中を押したのは、久遠俊じゃない……」
「………
井ノ原怜緒、君だ」
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