99 大きいのはどっち?
「え?」
「何かあったんだろ?」
「なんで、」
「お前、今日テンション低い」
やっぱ変わらねえんだよな、と笑いながら言う宍戸。
「何か心配事とか悩みとかあると、すぐにテンションに出るんだよ、お前」
心配事?
悩み?
「俺には言えないことか?」
「え、」
自分の心の中にモヤモヤがあるのはわかる。
けど、それが何なのかわからない。
でも私は、無意識に口を動かしていた。
「……最近、思うようになったことがあるの」
「思うようになったこと?」
「……もしかしたら私は、ただのモブじゃないんじゃないかって。……
テニプリキャラを引き寄せてしまうんじゃないかって……」
私は心の中のモヤモヤの部分を全部宍戸にぶつけた。
宍戸は真剣に聞いてくれた。
「……お前は、テニプリキャラと関わりたくないのか?」
「……あんまり、関わりたくない。やっぱり、テニプリのキャラっていうのは紙の中の存在なんだよね」
「じゃあ、キャラに関わって良いことはなかったのか?」
キャラに関わって良かったこと?
「……ニマ動で活動しているキャラがいることを知ることができた」
「
それ良いことなのか。まあいい。それから?」
「……」
思い出されるのは、前の世界で友達だった人。
「木陰とか、朝陽とか……真昼の夜とかと、出会えた」
前の世界で"木陰"としてニマ動で活動していた忍足謙也。
"朝陽"として活動していた仁王雅治。
"真昼の夜"として活動して、前の世界での私の彼氏であったという宍戸亮。
この人たちに出会って、トリップしたり、成り代わったりして辛い思いをして、
苦しんでいるのは私だけじゃないんだって思うことができた。
「テニプリキャラに出会って、悪いこともあったかもしれねえ。けど、良いことの方が大きいはずだぜ?」
宍戸の言葉に、心が晴れていくのがわかる。
「……ありがとう」
結局、宍戸にジュースを奢ってもらってしまった。
「これからどこ行く?」
「んー、用事はもう済んだし、宍戸の行きたい所いいよ」
「いや、俺も特にねえ」
宍戸と顔を見合わせ、笑い合う。
「じゃあとりあえずぶらぶら歩こうぜえ!」
「
急にテンション高くなったな! いいぜ」
そうやって、喫茶店の前の信号を渡ろうとした時だった。
「有梨……?」
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