92 マジか
私は、自分の異変に気付いていた。
……いつもなら、話しているうちに……時間が経つうちに、少しずつ思い出すはずなのに……
"井ノ原怜緒"の記憶が、全く思い出されない……と、いうことに……
「……俺の他にも、その、……俺みたいなのがいるのか?」
「……いるよ」
私は、仁王のこと、謙也くんのことを話した。
宍戸は、終始複雑な顔をして聞いていた。
その途中、とんでもないことがわかった。
「"雷神"――それが俺のニマ名だ」
「……"雷神"?」
"雷神"……って。
私はこの前投稿したばかりの曲"最後の闘い"を思い出した。
そのコメントの中の、忘れられない一言。
【夕月に会いたい@雷神】
「あのコメント、宍戸だったのか」
「……見てくれたのか」
「うん」
宍戸も仁王と同じように、曲を聞いた時、"夕月P"の名前を見た時にピンときたらしい。
やっぱり、あの名前にして良かった。
全てを話し終えて、また沈黙が流れる。
「……有梨」
「ん?」
長い沈黙の中、意を決したように宍戸が私の名前を呼んだ。
「あのさ……さっきは"俺の彼女"とか言っちゃったけど、あれはあの場を逃げ切る為であって、別に気にしなくていいからな」
「え?」
「だから! もう一回、友達から始めようっつってんだよ!」
もう一回?
友達から?
始める?
「何を?」
「〜〜〜〜っだあああ
あああああ!!!!!!!!」
「
うるさっ」
宍戸はガジガジと頭を掻きむしって顔を真っ赤にして叫んだ。
「だから!! 俺はまだお前のこと好きだっつってんだ!!!」
「……マジか」
私は平凡なモブだからこんなことないと思ってた。
初めてテニプリキャラに告白されたよ!「俺はテニプリキャラじゃねえ!」
「え、違うの!?」
「いや確かにそうだけども
そうじゃねえ!」
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