キオク
××××年
平成××年
××月××日
××時××分
私は死んだ。
白い車に撥ねられた。
フロントガラスに、私の頭がめり込んで…
白い車に、私の血が飛び散ったのを覚えている。
白い世界の中に散る、真っ赤な真っ赤な世界。
ぐるぐる。
ぐるぐる。
世界が紅に染まる。
死んだはずの私は、誰かの声を聞いた。
【やり直したくないか?】
何を?
【人生を、だ】
何故?
【何故?】
何故そんなことを私に言うの?
【お前が気に入ったからだ】
気に入った?
【そう。気に入った】
あなたは誰?
【お前をある世界に連れて行ってやる】
誰なの?
【お前がよく知る世界さ】
ねぇ、聞いてる?
【あぁ、聞いているとも】
あなたは誰?
【案ずるな。俺はいつでもお前の味方だ】
答えになってない。
【いってらっしゃい、あの世界へ】
待って、
【じゃあな、――五十嵐有梨】
待って!!
*
今、五十嵐有梨はこのことを忘れている。
いや、思い出せないように記憶を消されたと言った方が正しいかもしれない。
でも、五十嵐有梨はしっかり生きている。
『行くよ、仁王!』
この
「おう、五十嵐」
"テニスの王子様"の世界で
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