キオク2
あんたは普通の子供だと思ったのに……!!
陽が当たる所で目が赤くなるなんて気持ち悪い
あんたが生まれてからうちはトラブル続きよ!!
お兄ちゃんは勉強もできるし運動もできるわ……それなのにあんたは何もできないのね!!
この、疫病神が……っ!!!両親の愛情は全て兄に……あいつに行った。
あいつに悪いことが起きないように俺とあいつは隔離された。
学校には、帽子を被ってなるべく陽に当たらないように気をつけた。
そんな時出会った、年上のお姉さん。
明るくて、優しくて……そんな彼女に、いつしか"恋"をしていたんだ。
でもある日の放課後、俺は見てしまったんだ。
……あいつとお姉さんが、手を繋いで楽しく買い物している姿を。
……ああ、俺は恋もしちゃいけないのか……。
俺はその日から引きこもりがちになった。
そしてある日母が禁断の言葉を言ったんだ。
「
あんたなんて産まなきゃよかった」
プツンと 何かが、俺の中で切れた。
俺はフラフラと街中を歩き始めた。
どこがいいかな……
なるべく静かな所がいいかな……
目の前をたくさんの車が通り過ぎる。
……何かもう、そんなこと考えるのも面倒臭いや……
疲れた……
フラリと足が車に向けて動く。
ああ、最後にあの人に会いたかったなあ……
目を閉じると、あの人の笑顔が思い浮かぶ。
……俺、本当に貴方のことが好きだったんだ……
でもごめん、あいつと幸せになんて俺は願えない。
あいつ以外の、素敵な人と幸せになってよ……
「……バイバイ」
パアアアとクラクションの音が耳を劈く。
「
駄目!!!!!!」
え……?
「なん、で……」
何でここにいるんだよ
こっちに来たら危ないよ
こっちに来るなと 身体を押そうとした手はあまりにも反応が遅くて
あの人が俺の身体を抱きしめた時
身体に強い衝撃を受け俺は意識を失った
*
何で
何でだよ
何で、
何で死んでるんだよふと目を開けると目の前に真っ赤な目をした"俺"が立っていた。
「まだあの人を生きさせる方法がひとつある」
「"この世界"じゃない、"別の世界"にトリップさせればいいのさ」
「生き返らせるわけじゃないが、それであの人は"あっちの世界"で幸せに生きていられる」
スッと差し出された手を、俺は見つめた。
不思議と、抵抗はなかった。
俺は、その手をとったんだ。
"俺"は真っ赤な目を細めてニヤリと笑った。
「トリップさせるのは簡単だが、代償が必要だ」
"俺"の話を、俺はぼんやりと聞いていた。
"俺"は横に視線を動かした。
俺もつられて視線を動かすと、あの人とあいつと、男と女がいた。
「この三人。こいつらも同じ世界に飛ばさなければならない」
え……
それじゃあまたあの人とあいつが、
「心配するな。"向こうの世界"の魂と身体の数に3つのズレがあったらしい。既にあっちにある身体に魂を入れる……いわゆる転生ってやつだ」
転生……?
見た目は違うってことか?
でも、中身が同じなら、……
「心配なら適当に記憶を消しておいてやるよ」
じゃああの人の中のあいつの記憶を消してくれ
あいつを幸せにはさせない
「……おっと、やっぱり慣れねえ身体は使いにくいな。余計なのも消えちまったか……まあいいか」
俺はあの人が幸せならそれでいい。
「漫画の中の世界に行くんだ。あの人もきっと楽しんで生きていける」
漫画の中の世界に行くのか……
「そうさ。お前がそう望んだからな」
俺が……?
「そう。お前が望んだことだ。ただし望みを叶える代償として、お前自身は"傍観者"になって貰う」
傍観、者
「何、難しいことはない。ただ世界を見ているだけでいいのさ」
見ている、だけ……
「俺もいるから安心しろ。さあ」
"俺"は俺を見つめる。
俺は、静かに頷いた。
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