暁の空へ番外編 | ナノ


  寝起きの生放送


「おはようクラスメイトA」


幸村くんが、スマートフォンの"ニマ生"の画面を私に見せながら挨拶してきた。







事の発端は今日の朝の仁王の言葉だった。


「今日屋上で昼飯食べない日なんだ」


その時は適当にへーとか相槌を打ってた。
でも、昼休み前の怠い怠い数学の授業をサボるには絶好のチャンスではないかと気付き、私は屋上に行った。

そしたらいつの間にか寝ちゃってて。
昼休み始まる前には起きる予定が、寝過ごしてしまったようだ。

そして目を開けたら幸村様。
で、冒頭に戻る。




てか生放送中かよ。


『クラスメイトA?』
「うん」


有梨が暁だってことは内緒ね、と幸村くんに耳打ちされる。

ぶんっと勢いよく起き上がると、目の前に仁王がいた。
寝起きだからか、不機嫌そうに仁王を見た。


『屋上で食べないって言ってなかった?』
「食べる場所を見つけられずに屋上に来たら皆集まってました」


悪びれもなく言う詐欺師。
うん、屋上に勝手に入った私が悪いよね。


「じゃあクラスメイトA、寝起きに一発歌おうか」
なにゆえ


寝起きだし。
おいこらそこの丸豚録音準備すんな。


「ご飯食べに屋上に来たらクラスメイトAがいたので 生放送始めてみたってとこかな」
ごめん全然わかんない


ご飯食べるぞー!
屋上来たぞー!
クラスメイトAがいたぞー!
生放送するぞー!

ってなるか普通!?


「なるなる」
「先輩の生歌聴きたいっす!」
「録音準備バッチリだぜい!」
死ね丸豚


寝起きのテンションの私は赤也を撫で、丸豚には怒声を浴びせる。

生放送の経過時間は20分。残り10分。
時間無いじゃん。

ちらりと幸村くんを見ると……なんとも素晴らしい笑顔だ。
腹をくくろう。


『歌えばいいの?』
「うん。深海○女ね」


私が今度投稿しようとしてたやつ選びやがった!

でも私は特に何も考えず(だって寝起き以下略)、アカペラで歌い始めた。





歌い終わるとコメントが荒れていた。


『あー皆さんお気付きかと思いますがクラスメイトAこと暁ですー』


うおおおおお とか やっぱりかと言ったコメントが画面を埋め尽くす。


「暁の生歌ゲットだぜぃ」
「暁さんの生歌聴けて……今日俺最高っす……!!」
『そんな大層なもんじゃないってば。あと丸豚死ね』


ひでぇ、と丸豚は嘆くが 知らない知らない聞こえない。


「ってことでルシフェルとスペシャルゲスト暁とその他でした!」
『もう屋上で寝ません!』


生放送を終えて一息つくと、幸村様がぽつり。


「やっぱスマフォでの生放送だと音質悪いしコメントの時差もすごいね」
『初めてやったの?』
「うん。今日試す予定だったから屋上で昼食食べるの止めてみたんだ」
















(つまりは)


(すべて)


(スマートフォンの生放送を)


(試したかった幸村様のせい)













「ん?何か言った?」
『いえ何も!!』

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