おかしな彼奴ら | ナノ


  6.【HQ!!×庭球】烏野・四天VS及川


【保護者side】


いよいよ作戦決行だ。

可愛いらしい女の子"夕子"と化した金太郎が及川に近付いていった。
ちなみにここからの全過程は月島の動画フォルダに保存されることになっているので、悪しからず。



「行った?気付いたか?」

「あ、大王様気付いた!うわ、めっちゃ顔赤くしてる(笑」

「及川さんのあんな顔初めて見た……」



確かに"夕子"は可愛いが、きっと及川にはフィルターがかかってさらに可愛く見えるのだろう。

"夕子"に気付いたらしい及川は顔を真っ赤にして慌てている。
それを影から見る(撮る)月島、財前、白石、影山、日向。



「……あれは、完全に落ちてるね」

「落ちましたね」

「?落ちたって?」



月島と財前の発言を理解できない日向と影山は頭に?を浮かべて小首を傾げていた。
月島は はぁ、と溜息をつく。

まあこんなのは日常茶飯事だが、いつもと違うのは白石や憧れの財前がいること。
いつものように適当にあしらわずに月島は簡潔に答えた。



「"恋に"、デショ」












【及川side】



(遅くない?迷っちゃったかな?そうだよねステンドグラス前なんてわかりづらいよねよし迎えにいこうか!?)



夕子ちゃんから"仙台駅に着いた"と連絡が来たのは20分前。
遅い。遅すぎる。

迎えに行こうか?との旨をラインで夕子ちゃんに伝えるとすぐに既読がついて、今ステンドグラスが見えたから大丈夫、とのことだった。



(……!?待って待って待って!!ほんとすぐじゃん!!じゅ、じゅんび、こころのじゅんび、あっ髪とか変じゃないかな!?服は!?顔は大丈夫だね!)



こんなに緊張するのは第三セット目、相手がマッチポイントでのサーブ並……いや、バレーだと不思議と落ち着けるから緊張はしないな……いや、多分してるんだけど。

ってことはこんな緊張俺生まれて初めて……!?

生まれ〜てはぁ〜じめちゃあああああああん!

なーんちゃっ


及川ボゲェーー!!!



「て……」



岩ちゃんありがとう。
なんだか一気に冷静になることができたよ。

てか俺の妄想の中にもツッコミ入れに来る岩ちゃんとか(笑)
ホントに俺のこと大好きだよね(笑)


その瞬間、ブルル、と手の中のiPooneが震えた。
夕子ちゃん!?
……あれ?メールだ。知らないメアド……


ーーーーーーーーーー
From:1w@1zum1_h@j1meeen111
title:(無題)
ーーーーーーーーーー

死ね

ーーーーーーーーーー



「……」



俺…… 一生岩ちゃんから逃げられない運命なのかもしれない……



「あ、あの……」



俺は自由の身になれるのかな……



「……あのぅ……」



俺はまさしく籠の中の鳥……そう、"岩ちゃん"という名の籠の中の……



「トール?」

「うぴゃっ!?」



ハッとして視線を下げると、可愛い赤髪の女の、子



「!?!?!?」

「あ、驚かせてしもたんならすまんなぁ」



ふにゃりと笑う女の子可愛い可愛い可愛い可愛((ry

ももももしかしてこの動悸、この感覚は、



「ゆ、夕子、ちゃん……?」

「おん!」



ニカッと笑う夕子ちゃん。


キューン!!!


俺のハートがときめく音が聞こえた。

ヤバいヤバいヤバい超可愛い何これめちゃくちゃ心臓ドキドキいってる暑い暑い暑い仙台暑い!!!!



「トール?」



かくん、と小首が傾げられる。
上目遣いの大きな瞳が俺を心配そうに見上げている。



「……トール?」

「ごめん、ちょっと待って、タイムタイム」



左手を夕子ちゃんの目の前へ待ったポーズ、右手は顔を覆って夕子ちゃんから顔を背けた。

落ち着け及川徹。
落ち着くんだ。
思い出せ。
バレーの試合を。
サーブを上げる前のあの静寂を。

……待ってバレーの試合とこれって同じに考えられなくない!?
どうやったらバレーになる!?
むりむりむりああもうオワタこれ及川徹乙!!



「トール、ほんまに大丈夫?」

「大丈夫!」



もうどうにでもなれ!

目の前の天使は俺の心中など知らずに屈託なく笑った。



「トール、イケメンやな!」

「ふぇ!?」

「背も高いし、モテるやろ?」

「ま、まあ、それなりに!?」



そっかぁ、とまた笑う彼女は、どこか寂しさが感じられた。



(あれ……これってもしかして……)



嫉妬……?



「夕子ちゃん」

「ん?」

「俺、夕子ちゃんしか見てないから」



決まった。
これ絶対に決まった。

ほら彼女も顔を背けてる。
きっと顔赤くして照れ隠ししてるんだね。
あー可愛い!
俺って罪な男!



「も、もうトールったら何言うてん!!」



ドゴーン!!



「ごっふぅ!?」











……今、何が起きたのだろう。

確か顔を背けた彼女の顔を見たくて身体を傾けたんだよね、俺。
そしたら彼女は照れ隠しに……手を振り上げて……


(待って待って待ってドゴーンっておかしくない!?ドゴーンってなに爆撃ですか!?てか叩かれた左脇腹めちゃくちゃ痛いんだけどえ?夕子ちゃん?)



「す、すまんトール……うまいとこ入ってしもた」

「だ、大丈夫、大丈夫……あはは」



とは言ってみたもののホントに痛い。
爆撃だよあれは。
夕子ちゃん怪力なの?
え?夕子ちゃんそういう感じ?

そう考えながら脇腹をさする俺の手の上に、そっと小さな手が置かれた。



「え、」

「痛いの痛いの飛んでけー!」



パタパタと一生懸命手を動かす夕子ちゃん。


ズドス!!!


俺のハートに矢が刺さる音が聞こえた。



(待ってホントに可愛すぎるでしょこの子……!)



「どう?トール」

「バッチリ」



及川徹(内心悶えながら)全回復!



「よーし!じゃあ早速、」



ぽよよんよんよんよよよんよんヘイッ♪



「あ、すまん、家族から電話や。……もしもし?」



(着信音可愛すぎる……!!)



思わず顔を手で覆ってまた悶える。

ああ、そうか、そういえば彼女 一人で大阪から宮城に来たんだよね。
こんな可愛い子一人で行かせてそりゃ心配にもなるよ。


「ん?無事着いたで?……おん。大丈夫やって。おん、おん」



どうでもいいけど "おん" って 超可愛い。
わんこみたい。
おん!



「あ゙あ゛!?」

「うひ!?」

「誰がそんなことするかボゲェ!!」



ブチッと電話を切って、俺を見てにこりと笑う夕子ちゃん。
俺もにこりと笑う。



「すまんな!で、何やったっけ?」



にこにこと笑う夕子ちゃん。

……これは、今のゲス声にはつっこまない方が身のため……?



(うん、さっきの声は空耳、空耳……)



「あ、えーと、今日の予定を軽く説明するね!」











【保護者side】



「ぶふっ(笑」

「及川さん(笑」

「大王様(笑」



一部始終をしっかり見ていた保護者たち。
及川を知る影山月島日向の三人は笑いを堪え切れない様子だ。



「ところで電話の仕掛人の光、何言ったの?」

「ほんまにイラッとすること言うてって言われてたんで"いっそのことそのままメイドのコスプレでもしてニャンニャン言ってくれば?(笑"って言ってきました」

「さすが光」




「じゃあ……そろそろ行くか?」

「そうだね、いってらっしゃいエクスタシー」


作戦その2、いざ決行!










【及川side】



「で、次に……」

「夕子!!」

「え?」



俺が考えたプランを軽く話していると、イケメンがこっち に走ってきた。



(……今、夕子って言った……?)



「し、らいし……」

「何してるん」



しらいし……?
てか何、こいつ……



(イケメンなんですけど……)



ギリィ、と奥歯を噛み締める。
まあ俺よりイケメンってことはないけど、こいつ顔整いすぎじゃないの?
てか夕子ちゃんとどんな関係?

じとっと見ているとその"しらいし"さんとやらと目が合った。



「すみません、うちの夕子が何か?」

「え?あいや、今から仙台を案内しようと……」

「ああ、貴方が」



"しらいし"さんは夕子ちゃんを自分の背に隠し、俺に近付いてきた。
何この威圧感……

でも俺も負けないよ!!
必殺☆食えないスマイル!!



「悪いんやけど……」

「ん?」

「夕子は俺のモンやから」



カッチーン


はぁい、カチンときましたー
何かがカッチ-ンきましたー



「何?夕子ちゃんはモノじゃないんだけど?」

「せやなぁ。でも夕子は俺のやから」

「てか君何なの?夕子ちゃんの何?わざわざ関西から来たわけ?」

「せやで?可愛い夕子と3日も会われへんなんて耐えられんからなぁ」

「仙台を案内する約束してたの、俺なんだけど?」

「仙台なんて夕子の従兄弟に案内させればええやろ?」

「っ、夕子ちゃん!こいつ何なのかな?」



"しらいし"の背に隠れていた夕子ちゃんはビクッと肩を震わせた。



「し、らいし、は……」

「……夕子、ちゃん……?」

「夕子は俺の、やんなぁ?」

「っ、」



またもビクッと肩を震わせ、ゆっくりと首を縦に振る夕子ちゃん。



(あー、わかった。わかったぞ)



この"しらいし"って奴、夕子ちゃんを束縛してるんだ。

だってほら、



「トール……」



彼女の目には、涙が浮かんでるじゃないか。



「えーと、しらいしくん?先約は俺なんだけど」

「そんなこと知ったこっちゃありません」

「夕子ちゃん、一人で来たんだしさ、知ってる人とは会いたくなかったんじゃないの?」

「俺と居た方が安心するやん」

「まだわかんないかなぁ……」



俺は静かに"しらいし"を睨みつけた。



「彼女が好きなら、彼女を尊重しろっつってんだよ」



"しらいし"が一瞬怯んだのを俺は見逃さなかった。



「だいたいさ、四六時中一緒にいたら飽きちゃうって。あ、はっきり言うと"ウザい"ってやつ?君そんなのもわかんないの?お子ちゃまだねぇ〜それでも夕子ちゃんと過ごしたいなら俺勝負受けるよ?……ま、」



俺は夕子ちゃんを抱き寄せ言った。



「夕子ちゃんを好きって気持ちだけは、負ける気しないけどね?」



決まったああああ!

俺 最高!
素晴らしい!
さすが俺!
夕子ちゃんを助ける俺カッコイイ!
キャー徹さーん!



「はーい、大王様のキメ台詞いただきました〜(笑」

「え?」



ビデオカメラをこちらに向けながら歩いてくる長身の男。
あれ?こいつどこかで……



「あ!お前烏野のノッポMB!ええと確か名前は……ツッキー!」

「変な覚え方しないでくれます?月島です」

「どーも大王様(笑」

「ちっす及川さぶふぅ(笑」

「烏野のチビちゃんに飛雄まで……ってか何笑ってんのさ!」



何?全然状況が飲み込めないんだけど……
烏野の三人と知らない男の計四人が来て……



「すまんな、トール」

「え?」



するりと俺の腕をすり抜けて飛雄達の方へ行く夕子ちゃん。
いつの間にか飛雄の隣に"しらいし"も居て……



「大王様ホントに気付かなかったの!?金太郎すげぇ!」

「やろ〜!」



……金太郎?


ぽかんとしている と、月島がぷすーと笑った。



「あれあれ〜?気付かなかったんですかぁ〜?」

「え……え??」



その時、いきなり夕子ちゃんがバサー!っと着ていたワンピースを脱いだ。

ええええ!!



「ちょちょちょちょ夕子ちゃん!こんなとこで脱いじゃ、」



慌てて目を隠すが、聞こえてきたのは笑い声。
そろそろと夕子ちゃんを見る と……



「……え?」

「及川さん、こいつ男っす」

「もしかして女の子だと思ってましんですか大王様〜?(笑」




……ナンダッテ?



バシャシャシャシャという連写の音も気付かないくらいに頭が真っ白になる。



「え……じゃあ、"しらいし"は……?」

「ただの部活の先輩です。さっきまでのは演技で」




……エンギ?



エリンギ?エンジニア?エンジン?



「……演技?」



だんだんと頭が冴えてくる。
その時、先程と変わらない赤髪がぴょこんと前に出てきた。
ヒョウ柄のタンクトップを着ていて、腕にはバランス良く筋肉がついている。



「改めて、遠山金太郎いいます!よろしゅう、トール!」



……。





「えええええええええええええ!!???!?!??!?!?」















「……みんなして俺を騙してたってわけね……」

「すみません及川さぶっふぅ(笑」

「ごめんなさい大王様(笑」

「青城の人たちに写真を売り飛ばそうかと(つい出来心で)」

「とりあえず飛雄とチビちゃんは笑いを堪えきれてないし月島は本音と建前が逆だよね!」



おかしいな、この中で一番年上なの俺のはずなのに。
そこでふと見知らぬ人たちと目が合う。
……まあさっきまでちょっと勘違いしてた人たちだけど。



「……で、こちらの方々は俺はじめましてなんだけど……あ、俺はトールこと及川徹ね」

「あ、申し遅れました。俺は大阪四天宝寺中3年テニス部長白石蔵ノ介と申します」

「あ、これはどうもご丁寧に……」



畜生イケメンだし礼儀正しいしこれで中3とか……



「わい"たこやき"こと、大阪四天宝寺中1年テニス部の遠山金太郎いいますー!」

「うん、さっき聞いた……え、中1だったの」

「あ、大王様!金太郎は俺の従兄弟なんで!」

「あーだからこんなにちっちゃいのね……」

「なんやとー!」



なんだかもう驚きすぎてとんでもないことじゃないと驚かなくなってきたよ。
今の及川さん最強だよ。
なんでもどんとこい!

白石くんの隣に居るピアスの彼と目が合う。



「あ、同じく大阪四天宝寺中2年テニス部の財前光っすわ。……"ぜんざいP"で活動してます」

「財前くんね、よろし……え?」




ぜんざい、P……?



及川徹、ぜんざいPのファン歴2年。




「いいいいいつも目覚ましとランニング中と登校中と休み時間と下校中と寝る前と試合前に聴いてCD全部持ってますファンです握手してくださいいいいいいいいいいい!!!!!」

「お、おん……あざっす」



飛雄と月島の手元からバシャシャシャシャと音が聞こえたが気にしない。
寧ろ写真を後で請求しよう。
何てったって俺は今あのぜんざいPと……握手を!!



「今なら最高のトス上げられそう……!」

「!じゃあバレーしに行きましょうよ!!」



そう言い出したのは烏野のチビちゃんだった。



「そうだな。どーせ及川さんの夕子ちゃんデートの予定は狂いまくりでしょうし」

「当たり前だよ!!てかバレーの予定入ってたよ!!」

「え……大阪から仙台まで来てバレー見せるつもりだったんすかバレー馬鹿ですか」

「お前に言われたくないよ!……バレーが、一番いいと思ったんだよ。俺のカッ」

「じゃあ行こうかー」

「うぉおおい!!」



俺の扱いがここまで酷いのは初めて……!
カッで遮られるとか……カッ……あれ、何て言おうとしてたんだっけ……

するとぜんざいPがちらりと俺の方を見てから あの、と飛雄たちに声をかけた。
え、もしかして俺に加勢を……!?



「俺たちテニス部なんすけど」



そっちかーい!!



「大丈夫。ルールは道中教えるから。とりあえずボール落とさずに三回で返せばいいよ」

「わかりました」

「よし、じゃあ行こう。大王様もちゃんと着いて来てくださいね。あと妄想はみ出てるんでちょっとは自重してください」

「……ハイ」




及川徹。

本日はドッキリにひっかかったり 後輩に命令されたり 散々な一日になりそうです。

とりあえず岩ちゃんに会いたい……(泣)



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