おかしな彼奴ら | ナノ


  7.【HQ!!×庭球】四天・烏野ついでに及川でバレー!


「チームわけどうする?」



電車に揺られてる時、僕は珍しく王様達に向けてそう言った。
王様達は気にせず考える。



「そうだな……まず俺と」

「トビオちゃんと俺はセットね☆」

「は?何言ってんすか?セッター二人とかいらないんで俺と及川さんは絶対に同じチームにはなりませんよ?」

「えーいいじゃんセッター二人でもー!ツーセッターってやつだよー!」

「及川さんうるさいっす」
「大王様うるさい」

「……ごめんなさい」



まあ王様の言うことは最もだよね。
寧ろその二人を中心にチームわけすると思うからね。



「でもどうするんだ?7人だぞ?」



日向が俺を必死に、必死に見上げて言う。

日向の言う通り、今いるメンバーは僕、王様、日向、大王様、白石、光、遠山の7人。
3人のチームにしたかったけどそれじゃあ1人余る。

まず王様と大王様は分けるでしょ。
で、日向と遠山も分ける。これは勘。

問題は僕と白石と光。
白石は180くらいありそうだから僕と白石を分けることになりそうだけど……
何せテニス部の能力が未知数。



「……ま、ちょっと様子見て、って感じで」

「……つ、月島がやる気出してる」

「何?」

「うひっなんでも!」











電車から降りて数分歩いて着いたのは、烏野の皆行きつけのバレーができる体育館のような場所。
もしかしたら誰かいるかも、と思い来たが……



「あ!菅原さんだ!」

「あれ、どうしたのお前ら……って、及川じゃん」

「!スガちゃん!」

「麻婆豆腐と激辛ラーメンいつ奢ってくれるの?」

「……」



案の定、体育館には澤村さん、菅原さん、東峰さん、西谷さん、田中さんの5人がいて、ペア練習をしていた。
奇数なので菅原さんは余ってしまったようだ。



「ちょうど良かった。バレーしたいってそこのバレー馬鹿どもが言うもんだから軽く試合でもしようかなって思ってたところなんですよー」

「へー……そちらの3人は?」

「あ、大阪の友達です」

「大阪?」



菅原さんが スガちゃん話を聞いてくれとうるさい及川を一蹴し、練習している他の人たちを集めてくれた。



「おー見事に揃ったな!」

「あ゙ー?何で青城の主将がいるんですかコラ」

「やっぱお前らもバレーだよな!」

「何か知らない人たちが見えるなぁ……」



汗だくの先輩たちがタオルとドリンクを持ってぞろぞろと出てくる。



「先輩方お疲れ様です。話すと長くなるので簡単に説明しますと、大阪の友達が宮城に来てついでに大王様とも会ったのでバレーすることになりました」

「いろいろ端折りすぎ」



菅原さんが間髪入れずにツッこむ。

だって説明メンドクサイ……
という顔をしていると、光たちを見た澤村さんが ふむ、と言った。



「ちょうど12人だし6人6人で試合できるな」



さすが澤村さん。
場の流れをわかっていらっしゃる。



「で、そちらが月島の大阪の友達?」

「はい」



自己紹介して、と目配せすると 真っ先に白石が前に出た。



「はじめまして。大阪四天宝寺中テニス部部長3年、白石蔵ノ助と申します」

「同じくテニス部2年財前光っす」

「同じくテニス部1年の遠山金太郎いいます!あんじょーよろしゅう!」

「あ!金太郎は俺の従兄弟!です!」



日向が金太郎の背中を叩くと、先輩方は少し驚きつつも、その身長を見て納得したようだ。



「へぇ、日向の従兄弟!……あ、俺は烏野高校バレー部副主将、3年の菅原孝支。よろしくな」

「俺は烏野高校バレー部主将の3年、澤村大地だ」

「俺は同じく2年!田中龍之介だ!」

「俺も同じく2年!リベロの西谷夕!ほら旭さんも!」

「え、ああ、3年の東峰旭です……」

「「「……ん?」」」



何人かの声が一致した。

……やっぱり、と僕の中では "もしかして" というものが "確信" に変わっていた。



「やっぱり……東峰さんと白石の声そっくりだね」

「え?そうかなぁ……」

「似てますかね?」

「似てる似てる!旭の方がカッスカスだけど!」



菅原さんの言葉に東峰さんが多大なダメージを受ける。
一方白石は似ているかどうかよくわからないようだ。

似てる、似てない、と抗争になっていると、澤村さんが パンパンと手を叩いた。



「はいはい、ヒゲチョコの声がカッスカスなのは周知の事実だから」

「ヒドイッ」

「で?テニス部の中学生を俺達と一緒にバレーさせるつもりなの?」

「スルーか」



澤村さんはにこにこと僕を見てくる。
どうやら、澤村さんはやるなら本気でやるみたいだ。
こっちは楽しければ良かったんだけどな……



「はい。日向の従兄弟の遠山は日向の100倍運動神経良いみたいだし、」

「月島それは言い過ぎ!確かに金太郎は運動神経良いけど、年上だし、俺 負けねーよ!」

……道中話聞いた限りだと、結構とんでもなかった気がするけど……



「……まあ日向の従兄弟はそんな感じですし」

「お前今メンドクサッって顔したな!」

「だってメンドクサイ。……白石と光は飲み込みが割と早い方だと思うので。人数も人数だし、少し練習して適当にチームわけして試合してみましょう。ついでに大王様もいるし」

「ついで!?」

「あれ、及川いたの?何でいるの?寧ろ何で生きてるの?」

「キャプテンくんだんだんと俺の扱いに慣れてきてるよね……ま、話すと長くなるから言わないけどさ、デートしようと思ったら実は男で落胆したけど憧れの人に会えたから今なら最高のトス上げられそうだなって」

「及川。長くなっていいから詳しく教えろ」

「及川弄りネタが潤うね!」

「もー烏野いや!!」



岩ちゃんに会いに行く!と逃げ出す大王様の首根っこを引っつかむ。



「澤村さん、いいですか?」

「おう、亀甲縛りでも何でもしていいからとりあえず逃げ出さないようにしとけ」

「いや大王様はどうでもいいんで。バレーの試合ですよ」

「俺完全アウェーじゃん……」

「……まあ、部活じゃないしな。たまにはいいだろう」

「ありがとうございます。じゃあ早速着替えてきますね」

「ああ、でもやるからには本気でやるからな」

「はい」

「あざーす!」

「あざっす!」

「よろしくお願いします」



光たちとバレー。
そのことに、何だか無性にワクワクしている僕がいた。









「電車の中でも話したけど、もう一回説明するね。まずコートはこの線」



トントンとラインを足で叩きながらコートを一周する。
初心者に教えるって結構メンドクサイね。
でも相手が光たちだから不思議と苦にならない。



「このサイドの線と、後ろの線から後ろで囲まれた部分がサービスゾーン。サーブの時にこの線踏んだり越えたりしたら反則ね」

「サーブはテニスと同じ感じっすか?」

「サーブはポイントとった方。テニスみたいにサーブ一回したらもう一回、っていうのはなくて、一本勝負。ネットインも得点になる。あとコート内に入ればどこでもOK」

「へえ……」



光たちは熱心に聞いてくれている。
心なしかその目もキラキラしているように見えるが、多分気のせいだろう。



「あと基本的な反則として、ボールを掴む、ボールを2回連続して触る、同じチームが3回以上ボールに触る、ボールを触る動作中にネット上部の白いとことかアンテナに触る、サービスをブロックする……あとは後衛とかリベロとかの反則があるけど、それは多分大丈夫」

「月島にーちゃん!蹴るのはアリか?」

「あんまりよろしくはないけど反則にはならないよ。ボールは身体のどの部分で触れてもOK。ま、返せればの話だけど」

「そーなんか!」



こいつは蹴るつもりなのか?



「……ま、後は大体セッターがどうにかしてくれるデショ」

「セッター?」

「トス上げる人のこと。ここで言うと、王様……影山と及川さんと菅原さんだね。君らのポジションはこれから決めるから、まず基本的な打ち方を教えてもらおう」



教えるの上手そうな大王様と菅原さんと澤村さんに任せようかな……と3人を呼びに行こうとしたら、光がきょとんと僕を見た。



「蛍さんは教えてくれないんすか?」

「……教えるほど上手くないから。ブロックのコツくらいなら教えられるケド」



……僕なんて身長があるだけで、まだまだなんだから。

僕は光たちに背を向けて3人を呼びに行った。









「なあ月島!結局チームわけどーすんだ?」

「ポジション決まらないうちはどうにもできないデショ」

「あ、そっか」



はぁ、と溜息をつくと、隣でサーブ練習をする日向が笑った。



「……何」

「金太郎たちといる時はいつもの月島じゃなかったのに、今はいつもの月島だな!」

「……喧嘩売ってる?」

「は!?何でだよ売ってねーよ!!」



……何かムカつく。

僕は光たちの方を見た。
光は菅原さんに、白石は澤村さんに、金太郎は大王様に教わっている。
やっぱりなかなか飲み込みが早いようで、パス練習もスムーズにできているみたいだ。
ま、体育の授業とかでやったことあるだろうしそれくらいはできるか……



「俺昔さ、金太郎とよく遊んでたんだよね」

「……何、いきなり」

「金太郎は昔から運動神経良かったから……俺がバレー始めて、金太郎もバレーやればいいなって思ってたけど、金太郎はテニス始めて……」



日向のボールを握る手に力が入る。



「……もしかして、今回のがきっかけでバレーに転向しないかな、とか思ってる?」

「えっあ、いや……うん」



もしそうなったらいいなってだけでそんなに深くは……とごにょごにょ言う日向に僕はまた溜息をついた。



「あのねぇ、もし君が今他の競技……例えば、跳躍力を発揮できる陸上とか、バスケとかやって、すっごい上手くできて気持ち良かったとするデショ?それで君はバレー辞める?」



日向はハッとして僕を見る。



「……やめ、ない」

「それと同じデショ。あの子ら、結構テニス好きみたいだし」

「……うん」



シュン、と落ち込む日向。
何これ僕がいじめてるみたいじゃん。



「……ま、バレーは楽しければいいんじゃないの?」

「……!そうだよな!!」



パァっと笑顔になる日向に僕は正直"ハッちょろい"と思いました。まる。



「月島!影山!チームわけするから来てくれ!」

「っす!!」

「?はい」



澤村さんが呼んでる。
……何で僕を呼んだんだろう?
僕意見なんて無視して決めちゃっていいのに……

そう思いながら僕は持っていたボールを日向に押し付け、澤村さんの元へ走った。















次回、チームわけ発表&試合開始!










おまけ
【スガさんに教わる財前side】



「改めて烏野高校3年、副主将の菅原孝支です。よろしくね」

「よろしゅうお願いします。財前光です」



俺の担当になったのは銀髪の何かふわふわした人。
にこにことしていて裏が読めないタイプや……



「財前くんはバレーやったことある?」

「体育の授業と球技大会で少し」

「そっかそっか!ならアンダーとオーバーはわかるな?」

「はい」

「じゃあちょっとやってみっぺし!来たボールを返せばいいから」

「わかりました」



少し距離をとって菅原さんがボールを優しく投げた。
俺はアンダーでそれを返す。
綺麗に菅原さんの頭上に返ったそのボールを菅原さんはトン、と優しくスパイクする。
それを俺はまた返す。



「腰落とすと取りやすいかも」

「はい」

「脇締めて」

「はい」

「次オーバーな」



何回か続けた後、菅原さんはスパイクではなく、オーバーで返してきた。
俺もオーバーで返す。



「次ちょっと高めに」

「はい」

「次は低め」

「はい」



そのままミスなくポンポンと続く。
そろそろ疲れてきたな、と思ったところで、菅原さんはボールをキャッチした。



「お前上手いなあ!」

「はあ、あざっす」

「レシーブなんてうちの日向より上手いんじゃないかな」

「それはないです」

「そんなことないって!じゃあ次はスパイクやろうか」

「はい」



菅原さんが上げたボールを俺が打つ、という繰り返し。
これ得意かもしれん。



「なー財前くん」

「はい?」

「財前くんは何で宮城来たの?付き添い?」



余裕が出てきたのを見計らったのか、菅原さんがトスをしながら聞いてきた。
俺も打ちながら答える。



「ああ、いや……それもありますけど、一番は蛍さんに会いたかったってとこっすわ」

「蛍さん……って、月島!?」

「?はい。ネット上で知り合って」

「ネット上!?呟くアレとか?」

「いえ、某笑顔動画っす」



バーン……



俺の打ったスパイクが菅原さんを通り越して床に当たって跳ねた音が、やけに大きく響いた。



「……何か?」

「……財前くん。白玉と言えば?」

「善哉」

「おやつと言えば?」

「善哉」

「善哉は?」

「主食です」



ガシィッと菅原さんが手を握ってきた。



「ぜんざいPの同志……!!ってことは月島もそうなのか!?いやぁ、なかなかぜんざいPの同志見つからなくて!これで心置きなく語れるよ!!もー語りたくて語りたくて仕方なくてさー!!」



天使の笑顔を振り撒く菅原さん。
……俺のファンって結構いるんやな(←嬉しい)



「……菅原さん、」

「ん?」

「実は、俺……」

「何だ?どした?」












「ぜんざいPなんすわ」









バターン









「!?!?スガーーー!?!?!?」
「スガさあああああん!?!?」
「スガが倒れたあああああ!!!!!」













【白石に教える澤村side】


「改めて、烏野高校バレー部主将、3年の澤村大地だ。よろしく」

「よろしゅうお願いします。白石蔵ノ介です」



俺が教えるのは、一言で言うとイケメン。
確か中3で部長やってるって言ってたっけ。
……にしても……

俺は彼の左腕に目がいった。



「……左腕、怪我してるのか?」

「え?あぁ、」



白石の左腕には包帯が巻かれていた。
怪我をしてるなら無理をしてやらせる訳にはいかない、と思ったが、白石は笑った。



「怪我とかじゃないんです」

「?じゃあ何だ?」

「……ま、一言で言うと、あそこのゴンタグレをコントロールするための包帯ってとこですかね」

「ゴンタグレ?……ああ、」



白石が視線を向けた方に視線を向けると、及川に教わる……確か遠山?がいた。
日向の従兄弟ってことだったし、やんちゃなのだろう。



「あ、もしかしてバレーだと邪魔ですかね?」

「そうだな、素手でやるのに慣れている奴にはいづいだろうけど……まあ少し打ってみるか。パス練習しよう」

「はい」



ちなみに"いづい"っていうのは、"しっくりこない"とかってことだ。


それから白石と何回かパス練習をしたが……オーバーはまだ大丈夫だが、アンダーが苦手なようだ。
レシーブが下手な日向や月島の部類に入るかな。



「まあ初心者だしそのくらいだろうから落ち込むなよ」

「すんません……」

「白石はタッパあるし、バレーじゃ有利だぞ。何cmあるんだ?」

「178です」

「おお、中3にしてはでかいな……ちょっとスパイクとブロックやってみるか」

「はい」



爽やかな風が白石に吹く。

ああ……イケメン爆発しろ。











【金太郎に教える及川side】



「さっきも言ったけど俺、及川徹ね。一応青葉城西高校バレー部主将でセッターやってる」



何で俺がさっきまで俺を騙してた奴にバレー教えなきゃなんないわけ?

目の前には例の赤髪のちっこいのがいた。



「遠山金太郎や!よろしゅう!」

「うん、さっきも聞いた。金ちゃんでいい?」

「おん!トール!」



笑顔が素敵……じゃなくて!



「5つも下の奴に呼び捨てされるのはなぁ〜」

「ん?じゃあ……及川?」

「それも呼び捨てだよね?」



イラッときて思わず強く言ってしまうと、金ちゃんは見るからにしょぼんとした。
効果音つけるなら しょっぼーん……って感じかな!



「ごめんごめん、トールでいいよ。特別ね」

「!ほんまか!」

「……うん」



天使の笑顔……じゃなくて!



「じゃあさっそくパス練習!」

「おー!」



ヤバい。
夕子ちゃんが離れない。







「アンダーもオーバーもできないってどういうこと!?授業とかでやんないの!?」

「バレーはやったんやけど、それは教わってない!」

「嘘でしょ!?」

「ほんまや!ボール落とさなきゃええんやろ!」



ああ……この子本能で動く系のアレなんだな。
きっと烏野のチビちゃんタイプなんだな。



「もういいレシーブは諦めた!」

「えー」

「レシーブは一朝一夕で身につけられるもんじゃないの!」

「いっちょう……いっせき……?」

「ちょっとの時間ってこと!スパイク練習やるよ!」

「おー!」



まあ……なんだかんだでうまくやれてるのかな、俺……

さっすが及川さんだね!!










金太郎の跳躍力に驚いた及川が奇声を発するまで あと1分。





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