俺はここにいた | ナノ


  2 青色に混じる異端の色


清々しいほどの朝。
そりゃあもう、俺の心情とは真反対なほどに。
床に敷かれた布団から体を起こすと、寝癖のついた頭をかきまわした。朝日の差し込む窓からは綺麗な青空が見える。
前だったらテニス日和だなーとかのんきな事を考えてたんだろうけど、今はそれどころじゃない。ここまで来てそんなだったら馬鹿だろ俺。ま、最近じゃそんなことも考えなくたけど、な……。
ため息をひとつこぼすと、布団を三つ折りにして部屋のはじに寄せた。

ガチャッと音を立てて部屋のドアが開けられた。開けたのはもちろん不二で、見るともう着替えを済ませているようだった。



「あ、斗真起きた?おはよう。意外とおきれるんだね」

「ああ、はよ。意外とは余計だ。ん?つか、名前…」

「いちお従兄弟って言う事で話を通しているからね。それにここは僕の家、皆不二だよ」

「あー、そうだな…じゃあ周助でいいか」


改めて、斗真と周助で。





***







「斗真君おはよう」

「おはようございます」


階段を下りた先に居た由美子さんに朝の挨拶をし、さらにリビングに居た淑子さんと周平さんにも同じように挨拶をした。


いきなりの居候だって言うのに、次の日にはもうすでに順応する不二家って………。



「あら、その服周助のでしょ」

「え?…ああ、はい。あいにくテニスウェア持っていなかったので」

「斗真君もかっこいいからそういうの似合うわよね」

「え、そうですか」



用意された朝ご飯の前に周助と並んで座る。とっても美味しそうですね。ご飯から出る湯気がまぶしいです淑子さん。
あと、かっこいいとか言うと調子乗りますよ俺。若干。



「そういえば斗真君も今日からテニス部に参加するのよね」

「はい。いつの間にか部長さんの方に周助が話を通したみたいで」

「斗真醤油とって」

「ほい」


てか、青学のテニス部なんかに参加して俺生きて帰れんのか。だってあれだろ?青学のテニス部は乾●とか●汁とか校庭100周とか。死亡フラグ立ちまくりじゃねーか。



「あ、斗真のハブラシこれね」

「おー」

「ワックス使いたかったらそのへんの使っていいから」

「んー」



うげ、ニキビ発見。
俺ニキビひどいんだよなー、治ったかと思ったんだけどー…再発したか?
とりあえず、ワックスで少し髪を起こして……
家出る前にトイレ行くか。



「母さん行ってくるね」

「はい、いってらっしゃい。斗真君もがんばってね」

「はい、がんばってきます」


玄関先まで送りに来てくれた淑子さんに手を振ると、周助の右隣を並んで歩きはじめた。

いざ、青学へ!

















…って、






「なんか自然にさわやかすぎる朝をおくった………!?」









***


俺がナチュラルに不二家の朝をおくり、少し落ち込みながらも青学の敷地に入り、テニス部の前に晒されながらも自己紹介を終え……あ、ちなみに噛まずに自己紹介できた。心臓バックバックだったけど。(周助がその事に気づいて爆笑してやがった)

んで、そっから年齢を詐欺ってると噂高い部長の手塚に、まさかのレギュラーの練習に参加しろと言われ、周助に付いて行った先のテニスコートに入れば二人すぐに近づいてきた。桃と菊丸ですね。分かります。




整理すると↓こんな


青学に到着

手塚に紹介&ごあいさつ

晒された状態で自己紹介

手塚にレギュラーと同じ練習に参加しろ発言される

Σ(゜ロ゜) ←俺

テニスコートに行く

なんか近寄って来た  ←今ココ













「俺、桃城武って言います!!よろしくおねがいします」

「俺は菊丸英二だよん、よろしくにゃ」

「さっきも言ったけど俺は桐生斗真だ。よろしくな」



凄いいい奴らだな。漫画読んでる時も思ってたけど、こうして面と向かって話してみるとさらにそう思う。そんな機会が来るとは思わなかったけど。
にしても、語尾がにゃってただのイタ…げふんげふん。


とても個性的ですね。はい。



「で、俺に敬語使うってことは桃城は下の学年だよな。二年か?」


知っているけど聞いておく。もし聞かないで思わずポロリなんてしたら、めんどくさいし怪しさ満点になる。
あれだ、布石ってやつ。



「はい、二年桃城武っす!」

「二年でレギュラーかー…強いんだな桃城は」



かく言う俺も二年からレギュラーやってたけど。あの時はよかったよな、今よりもプレッシャーがなかったしな……



「俺は青学二年最強っすからね!!」


俺の言葉に触発されたのか、そんな事を言いだした。と、同時にあーあ、と思う。俺の記憶が正しければ、桃城とライバル関係に当たるアイツが黙っているはずがない。



「あ゛あ゛?んだと!!桃城ぉ!ふざけんなよてめぇ!!」

「ああ?やんのか?!マムシこの野郎!!」



マムシこと海堂董は桃城の言葉が勘触ったのかいきなり桃城に突っかかったと思うと、喧嘩を売って桃城と顔を突き合わせてどこかへ消えた。




「嵐か、あいつらは」

「桃と海堂はいつもあんな感じだよ」

「ん?」



背後から聞こえた声に振り向くと、そこには触角が個性的な副部長の大石と周助、手塚がいた。
先ほど声を発したのは大石のようだ。



「副部長の大石だ。よろしく」

「俺は、河村隆」

「こちらこそよろしく、桐生斗真だ。手塚も、さっき自己紹介したけども改めてよろしくな」



大石と河村と握手をする。
そして、さっきからずっと気になっていた方へ顔を向けた。



「ずっと見られても困るんだけど、俺に用かおちびさん?」



そんな熱烈な視線で見つめられると困るなーなんて冗談は、ツンデレの前では通用しないなと思い自分の中だけで納めた。


俺の事を見上げてくる帽子をかぶったおちびさん―越前つまりこの物語の主人公の目線に合わせるように少し腰を落として、頭に手を乗っけた。もちろん嫌味だ。
そんな俺をムスッと見つめると、越前は頭の上に乗った俺の手を除けた。



「やめてよ」

「はいはい……んで、お前名前は?」

「…越前リョーマ」

「おー、越前な」

「ねぇ」

「何だ」

「桐生先輩って強いの?」

「…どうだろう、な」


…強いか、ね……。



「さっき部長やってるって言ってたじゃん」

「それとこれはまた別もんだ。まぁ…大会で優勝した事はあるがな」

「ふーん…ねぇ、俺と試合してよ」






越前に話しかけられた時点で少し覚悟はしていたが、まさかのそのまんま試合してよパターン。
べたすぎんだろ。べったべっただよ。
さぁ、どうしたものかと悩む。別に試合したくないわけではないが、やったらやったでめんどくさい事になるような気がしてだな…。


「おちびずるーい!!俺だって斗真と試合したいにゃー!」


ほらな、これだよ。
そっから芋づる形式で、桃城、周助と続いた。

俺と試合してもなんなんねぇって、絶対お前らよりか弱いし。テニヌだもんな。人外テニスだもんな。

てか、


「周助、お前半分ふざけてんだろ」

「あ、ばれた?」

「人の不幸がそんなに楽しいか」

「まあね」



笑顔で言い切ったよこの人!誰ですかこんなのに育て上げたのは!!淑子さん、あなたですか!?美人ほど黒いって言いますもんね!?



「ねぇ、試合してよ」

「俺も!俺も試合したい!!」

「フフフ」

「お、お前ら…!」

「おい、桃城うるせぇんだよ!!桐生さんが困ってんだろ!」

「んだと、マムシ!!」

「な、なあ。ちょっと静かに…」





あ、ひとつ気が付いたこと言ってもいいですか。











「全員校庭100周!!」



手塚が爆発しそうだって。

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