29 痛い音
『…え、
仁王先輩?』
「ん? おお、紗那か。どうした?」
『
それはこっちの台詞です!! なんかゴキッとかメキッとかいう痛い音が聞こえたと思ったら』
草の影にいたのは仁王先輩でした。
こっちは青い顔して何が起きてんのかとドキドキしてたのに、あまりにもさらりと言うもんだから通報しようかと思ったわ。
「あぁ。俺のアリスは全身変形じゃろ? 変形する時に骨とか皮とか伸ばしたりしなきゃならんからのう…痛い音がするんは、
仕方ないのう…」
『いやいやいや、仕方ないのう…じゃなくて、痛くないんですか?』
「あぁ。全く」
あ、そうなんだ。
痛くないんだ。
あんな音して。
『次は幸村先輩になるんですか?』
「幸村はやめておくと決めてるんじゃ」
『じゃあ真田先輩?』
「老け顔は無理じゃ」
『柳先輩?』
「細目は目に悪いんでのう」
『柳生先輩?』
「さっきまでなっとった」
『丸井先輩?』
「甘いものはあんまり好きじゃないんでのう」
『桑原先輩?』
「ハゲはさすがに…」
『切原先輩?』
「…ワカメも無理じゃ」
……。
『
守備範囲狭っ!!』
「自覚しとる…」
はい、仁王先輩のしょぼーんいただきましたー。
その時だ。
その場の空気が5度くらい下がったのがわかった。
どうしてかな?
「あれ? 紗那ちゃんに仁王。どうしたの?」
あぁ。
原因がわかったよ。
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