27 失いたくない
任務はその日から、毎晩続いた。
「紗那、顔色悪いで? 大丈夫か?」
『え? 顔が悪いのは元からだよ』
「顔
色が悪い言うたんや! もーっ!」
いつもの休み時間。
蜜柑が心配して声をかけてくれた。
ごめん寝かせてくれ。
寝不足なんだ。
机に突っ伏すと、今度は違う人が寄ってきた。
「おい紗那」
『ん?』
少し顔を上げると、棗くんが怖い顔で私を見下ろしていた。
『なんですか怖い顔してー可愛いお顔が台なしですよ棗くーんー私は眠いので寝かせてほしいなーいや寝かせろ』
「…任務か?」
どかっと机の前にしゃがまれた気配がした。
やめてくれパーマちゃんに睨まれる。
『…そうですけど何か』
「お前…何で自分を大切にしない」
『あなたは人のこと言えるの?』
間もおかずに返してやった。
『人のこと心配する余裕があるなら自分の心配しなさい』
あ、なんかお母さんみたいだな。
「お前な…俺は最近任務が少ないからいいが、お前は――お前、は……」
棗くんは何かに気付いて、ガタンっ! と勢いよく立ち上がり、私の腕を掴んで教室を出た。
『棗くーん授業始まっちゃうよー眠いよー』
「るせぇ」
人気のない所までくると、棗くんは私を壁に追い詰め、バンっと 私の顔の両脇に手をついた。
あれ?
デジャヴュなんだけど。
つーか眠い。
「お前が、俺の任務を、代わりにやっているのか…?」
…あ。
『…何のこと?』
「とぼけんじゃねぇ!!」
ガンっと壁を殴る棗くん。
怖い怖い怖い。
『何だよ。私は知らないってば』
「…」
まぁ実は私がペルソナに頼んだんだけどね。
"日向棗の任務は全て私に"って。
「…俺は、」
『え?』
「俺は…もう二度と大切な人を失いたくねぇ…」
『…』
ボスッと私の肩に顔を埋める棗くん。
実際には泣いていないが、なんと言うか、心が泣いているようだ。
「頼むから…もう、やめてくれ…」
『…』
私はそっと棗くんの背中に手を回した。
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