55 アリスの使い方[日吉side]
[日吉side]
「自分にアリスを使う……ってどういうことや?」
遠山が聞く。
「体質系特有のアリスの使い方だ。きっと跡部さんは自分自身にマリオットのアリスを使って、自分で自分を操ろうとしている」
それだけ気持ちが揺らいだってことだ。
でも……
「でも、一度自分にアリスを使い始めて止まらなくなれば……誰にも、どうすることもできない」
「え、」
「考えてみい。自分が自分にアリス使うてるんやで?止めるには、自分と自分の間に入らなあかん」
財前が遠山に言う。
そう……自分と自分の間に入らなければ、止めることはできない。
「クソッ……」
どうすることも、できないのか……っ
悪態をついて地面を叩いた時だった。
大きな影が、俺の後ろに現れた。
「跡部、さん……」
振り向くと、樺地がいた。
「樺地……」
樺地は跡部さんを誰よりも慕っていたからな……ショックを受けるのも無理はない。
「、樺地?」
すると樺地は何も言わず、未だブツブツと自分に向けて何かを言い続けている跡部さんを自分の方へ向かせた。
「
跡部さん」
キイイイイイイン………
「!?」
力強く樺地が跡部さんの名前を呼ぶと、俺はまるで自分の姿を他人の目線で見ている……鏡で自分の姿を見ているような錯覚に陥った。
「樺地……?今、何を、」
「跡部さん」
樺地は跡部さんから目を逸らすことなく話し続ける。
「現実を、見て……ください。仲間を……自分を、見てください」
すると突然、跡部さんの口の動きが止まった。
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