ひだまり日記 | ナノ


  56 俺は、[跡部side]


[跡部side]

俺は間違っていない

俺は正しい

俺はあのお方を信じている

あのお方は正しい

俺は正しい


俺は自分の身体に何本もの糸……マリオットを操る糸を繋げていた。

そうでもしないと、俺は"あいつら"に飲み込まれていきそうで……

あのお方を、裏切ってしまいそうで……


〈やめろ〉
「!?」


突然、"俺"が目の前に現れた。


「な……」
〈あのお方を信じるのは、正しいことか?〉


何本もの糸に繋がれている俺を、"俺"は見下して問う。
"俺"の瞳が鋭く光った。


「当たり前だ……あのお方は正しい。正しいものを信じることは、正しいに決まっている」


俺は"俺"の瞳を見ずに答えた。
"俺"は間髪入れずに次の質問をしてきた。


〈仲間を傷つけるのは正しいことか?〉
「っ!!」


俺はまた一本、糸を俺に繋げた。


「あいつらは……仲間じゃねえ」
〈……〉


《跡部さん》
《跡部!》


どこからか、あいつらの声が聞こえてきた。


〈お前の仲間は誰だ?〉
「……仲、間……」


仲間と聞いて、思い浮かぶのは……あいつらの顔だった。


〈本当に信じるべきは、誰だ?〉


《跡部くん》

あのお方の声が聞こえる。

ふと上を見上げると、あのお方の手が差し延べられていた。


《跡部くん、君は素晴らしいね。……どうだい?僕と一緒に来ないかい?》
「あ……」


俺はあのお方の手に向かって自分の手を伸ばした。


《跡部!》
《跡部さん!》
《跡部ー!!》


すると、あのお方の手の周りに、たくさんの手……あいつらの手が現れた。

俺は伸ばしかけた手を一旦止めた。


《跡部、早う戻ってきいや》
《跡部!皆待ってるぜ!》
《跡部さん、俺たちがいますよ!》


あいつらの声が聞こえる。
でも俺は……あいつらを……この手で、傷つけた……


俺はあのお方の手に手を伸ばす。


跡部先輩!!!


「!」


藍原……?


ぐいっと、俺の目の前まで手が伸びる。


《跡部先輩、皆待ってます。行きましょう!》


眩しいひだまりのような暖かい笑顔が脳裏をよぎった。


「藍原……」





















俺は、藍原の手を取った。

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