[主人公side]


「……みんな……ごめん」


記憶を取り戻した不二先輩が、私たちに向かって頭を下げてきた。


『どうして謝るんですか? 学園に拉致された記憶は埋め込まれたものだったんでしょ?』
「でも……みんなを傷つけ、裏切ったことに変わりはない」


唇を噛み締め、ただ震えている不二先輩。

周りの先輩方は、どうしようかとオロオロしている。
特に大石先輩。


『不二先輩は、もう私たちと仲良くしたくないんですか?』
「!! 違うよ……!!」
『それに……私たちは今、不二先輩のことを"敵"と認識してると思いますか?』
「っ、それは……」
『……答えはＮＯです』
「!!」


不二先輩が驚きで顔を上げる。

……そう。
不二先輩が私たちを裏切ったことに変わりはない。
でも私たちは、不二先輩を裏切ってない。


『不二先輩は、今までも、そしてこれからも、私たちの仲間です』
「どう……して……」
「だって、今までずっと同じチームで一緒に頑張ってきたじゃないっスか」


それ以外に理由いります?とリョーマが言う。
それに続いて、先輩達も。


「そうだぞ〜不二!! 俺たち"仲間"じゃん!!」
「ずーっと一緒に戦ってきたじゃないか!」
「俺、不二とのダブルスが一番しっくりくるんだ!!」
「俺の作ったドリンクを飲めるのも、不二なんだぞ」
「俺、まだアンタを倒してないっすよフシュー…」
「また一緒にテニスしましょうよ!!」
「……不二」


ザッ……と 手塚先輩が不二先輩に歩み寄る。


「俺達は……みんなで、優勝するんだろ?」
『不二先輩なしじゃ、優勝できませんよ!!』
「ま、俺はどうでもいいけど。……でもさ、戻ってきてくれるんでしょ?」


「……みんな……」


不二先輩が、いつものようにフッと笑った。


「みんなが仲間で、本当に良かった」

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