35 不二の過去-2[不二side]
"お前さえいなければ"
「僕が……」
……僕が学園に行けば、裕太や、由美子姉さんや、父さん、母さんは……幸せになれる。
大事な家族だから……
幸せになって欲しいから……
「母さん……」
「あら周助。どこ行ってたの? もうすぐ夕飯できるから――」
「僕、学園に行くよ」
ガシャン……
持っていた皿を落とした母さん。
蒼白の顔で僕の肩を掴んで、視線を合わせてきた。
「どうしたの!? 周助、学園の人に何か言われたの!?」
「……ちがうよ」
「なら、どうして――」
家族を守るため……僕は――
「
僕は、家族が大嫌いなんだ。もう一緒に生活するのは嫌なんだよ」
「う……」
ゆっくりと目を開けると、紗那ちゃんの顔があった。
紗那ちゃんは柔らかく微笑んだ。
『おかえりなさい、不二先輩』
つぅ……と生暖かいものが頬を伝った。
「……ただいま、みんな」
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