1万打企画 | ナノ


  ヘタレ×天然


「倉科さんっ」
『ん? あ、おはよ仁王くん』
「お、おは、おはよ!」


ニコリと笑って教室に入っていく倉科さん。
実は俺はこの倉科さんが大好きだ。

でも、告白ができないのだ。
なぜかというと……


「や、ややややっぎゅう!!! お、俺、倉科さんに挨拶できたぜよ!!」
「おや、おめでとうございます仁王くん。また1歩、成長しましたね」


ぱあっと気分が明るくなるのを感じる。

……そう。
俺は今日初めて倉科さんに挨拶できた。


俺は俗に言うヘタレなのだ。


「この調子で頑張りましょうね」
「お、おう!!」




















「……駄目だ。全っ然駄目だよ!!」


陰から仁王と倉科さんの様子を見守っている立海レギュラーたち。

仁王は柳生にしか倉科さんが好きなことは言っていないし、柳生にしかばれていないと思っているが、立海レギュラーたちにはバレバレである。

階段の踊り場で立海レギュラーたちはしゃがんで、いつものように会議をしている時、突然幸村が立ち上がった。


「あのう……何で俺まで3年生の教室棟に、」
そんなことはどうでもいいよ。このままでは仁王はいけない……何か対策を……」


赤也が恐る恐る話し掛けるが幸村によって一刀両断。
幸村はうろうろして呻きながら考える。


「つまりはさ、何か"きっかけ"があればいいんだよ。それが上手くいけば後はあっという間さ」
「ゆ、幸村……部活は」
そんなことはどうでもいいよ。死にたいの? 真田」


素晴らしい笑顔を真田に向ける幸村。
いやでも部活はやらないと。
だってこれテニス漫画「ギャグ漫画の間違いでしょ」
はい、そうですね!


「よし……大切な部員のピンチ、ここは部長である俺が一肌脱ごうじゃないか!」


























『仁王くん、用ってなあに?』
「え」
『え?』


突然倉科さんが話し掛けてきた。
心の準備も何もしていなかったのでその場で硬直。


『幸村くんが "仁王が倉科さんに用があるみたいだから、仁王を見たら倉科さんから話し掛けてあげて" って……』


ゆ き む ら !?



いやいやいやいやいきなりレベル高すぎません?
今日やっと倉科さんに挨拶できたんだよ?


『仁王くん?』


倉科さんは顔をかくんと傾げて俺を見上げる。

かかかか可愛いいいいいい!!!!!!!!


『おーい』
「うぇ、あ、えと、その、」
『ん?』


用事用事用事……!!
これはチャンスなんじゃ!!
何か倉科さんに伝えたいことは……!


「あ、あの、」
『ん?』
付き合って下さい!!
『え?』
「あ」


しまった……っ!!
倉科さんが可愛過ぎて思わず……!!
顔に熱が集まるのがわかった。

慌てて片手で顔を覆い隠す。

すると、倉科さんの くすっとした笑い声が聞こえた。

少し顔をずらして倉科さんを見ると、倉科さんはくすくすと笑っていた。


『あはは、何だ、そんなこと?』
「えっ?」
どこに付き合って欲しいの?
「……























その様子を陰から見ていた "仁王を暖かく見守りつつどうにかするぞ"隊の隊長はチッと舌打ちした。


「倉科さんが鈍感だっていう噂は聞いていたけど……あれは鈍感と天然が作り出した魔物だな……」
























その日の部活。
そこには、何故か機嫌の良いルンルンした仁王がいた。


「どうしたんですか仁王くん」


にこにこといつものように柳生が話し掛けると、仁王はパアアアアという効果音が聞こえてきそうなほどの笑顔で柳生に小走りに近付いた。

その時柳生には 仁王の腰にブンブンと引きちぎれんばかりに振った犬の尻尾が見えたという。


「聞いて柳生!」
「はい、聞きますよ」


息を荒くする仁王を、柳生はにこにこと微笑ましく見守った。


「こ、今度な、倉科さんとジュエリーショップ行くことになったんじゃ!!



倉科さんと


ジュエリーショップ



「……はい?


ジュエリーショップ?
と、さすがの柳生も頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

「倉科さん、俺が姉ちゃんの誕生日プレゼント悩んでるの知ってたんだなあ……!!」


キラキラと遠い空を見てうっとりする仁王を、柳生はあることを考えながら見ていた。


(確か幸村くんの話だと……勢いで仁王くんが"付き合って"と倉科さんに言ってしまい、さらにそれに倉科さんは"どこに?"と返した、と……
……まさか、それに続きがあった?)


柳生の探偵妄想ワールドが広がる。


("どこに?"と聞いてきた倉科さんを、仁王くんは"倉科さんは俺が姉ちゃんの誕生日プレゼント悩んでるの知ってたんだ! 倉科さんやっぱりすごい!!"と勘違い。そして仁王くんは"ジュエリーショップ"と答えてしまった……
……と。こんなもんですかね)


妄想ワールドから抜け出し、くいっと眼鏡を上げる。
そして、いまだにうっとりと空を見上げる仁王を見て、フ と笑った。


「仁王くん」
「何じゃ?」
「いいプレゼント、見つかるといいですね」


仁王はまた、満面の笑みで


「うん!」


と答えたのであった。
























(あ、仁王くん。お姉様へのプレゼント、喜んでくれましたか?)

(ああ!! 倉科さんが選んでくれたアマガエルのストラップあげたらすごい喜んでくれたぜよ!! 倉科さんのおかげじゃな!!)

(ア、アマガエル……? 仁王くん、それ貴方にとってはどうだったんです?)

(結構可愛かったぜよ!!)

(……。……そ、それは良かったですね。(似た者同士ということですかね。……というか何故ジュエリーショップにアマガエルのストラップが……))















(あ、幸村くん。仁王くんに話し掛けてきたよ。なんかお姉さんの誕生日プレゼントで悩んでたみたい。教えてくれてありがとね)

(出たな魔物)

(魔物?)










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水木様リク「ヘタレ仁王」でした!


ヘタレ仁王ってギャップがあっていいね。可愛いね。

柳生がお父さんですね笑

これからも"仁王を暖かく見守りつつどうにかするぞ"隊は、仁王の邪魔(!?)をしていくのでしょう……

夢主は管理人お任せということで、夢主は「ド天然」にしました。

お気に召しましたでしょうか??


水木様、リクエストありがとうございました!!!

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