はじめてのクリスマス 後編




「よし、コレでいいってばよ」

「うん」

 窓辺に置いた月紫石の隣に、煌の目を盗み選んだ真っ赤なマフラーとお揃いのように見える、ニットのあたたかそうな帽子が包まれたプレゼントを置いた二人は顔を見合わせ満足そうに笑った。

 白と赤。

 さながら、煌自身がサンタクロースのようである。

「コレで風邪なんてひかねーよな」

「うんうん、あたたかく過ごせるね……ところで、ナルトくんは煌のプレゼント決まったの?」

「おう、コレが意外や意外、結構アッサリ決まったんだってばよ」

「何か……聞いてもいい?」

「ああ、昼頃には届く予定なんだけどな……」

 ひそりと小さな声で告げれば、ヒナタは驚いた顔をしてナルトを見つめ、それから首筋にぎゅぅっと抱きつく。

「ナルトくん、素敵過ぎますっ」

「へへっ、そう言われると嬉しいってばよ」

 腕に飛び込んできたヒナタを抱きとめたナルトは、嬉しそうに微笑みながら、唇を寄せて頬に口付ける。

 心いっぱい満たしてくれる彼女の優しさに包まれながら、ナルトはポケットに忍ばせてあるプレゼントをいつ渡すかと悩みつつ、今にするかとほくそ笑んだ。

 きっと驚いてくれる、そして喜んでくれるだろうと、ナルトはそれを取り出して、ヒナタに小さく声をかけた。

「あのさ……ヒナタにプレゼントがあるんだってばよ」

「あ、わ、私も……」

「んじゃ、同時に……だな」

「うん」

 大事に巻物にしまいこんでいたらしいヒナタは小さな巻物を開き、チャクラを流し込んでから現れた大き目の包みを大事そうに胸に抱き、ナルトは手のひらサイズの小さな包みを見せて、『クリスマスプレゼント』と、同時に言って交換する。

 ナルトはヒナタがラッピングしたであろう袋を開き、中のものを取り出せば、鮮やかなオレンジ色が飛び出してきて、目を一瞬丸くすると、続いて頬を綻ばせ、涙が出るほどの喜びに包まれながら、ジッとそれを見つめる。

 ヒナタが編んでくれた、オレンジ色のマフラー。

 網目も綺麗でものすごく柔らかくあたたかい。

 網目ひとつひとつに愛情が篭っているような気がして、ナルトは一度ぎゅっと抱きしめると、へへっと笑ってから首へと巻きつけた。

「すげェあったけー……サンキュ……ヒナタ」

「う、うん……えっと、こっちは……」

 ナルトの幸せそうな顔を見て、完全に照れてしまったヒナタは視線を彷徨わせたあと、手元へと視線を戻し、包装紙をきれいにあけて、小箱の蓋を開くと、何やらベルベットの布地に包まれた、まるで指輪ケースのようなものが出てきて、ドキリと胸を大きく高鳴らせ、目を見開きナルトを思わず見つめる。

「あけてみろよ」

「で、でも……こ、これって……その……」

「お前のために買ったんだから、遠慮なくあけろって」

 どこかしっとりとしたナルトの優しい笑みを見つめ、それからケースを見つめて、恐る恐る震える指で開けば、案の定その中には指輪が二つ納まっていた。

「ヒナタの指に似合いそうだなーって思って買ったのはいいんだけどさ、ペアだったんだってばよ」

 ナルトのそんなことばを聞きながら、小さい方のリングを指にとってみる。

 ホワイトゴールドとピンクゴールドの輪が斜めにクロスしたデザインで、ホワイトゴールドの台に絡みつくピンクゴールドは、左サイドに小さなハート型があしらわれ、クロスしているホワイトゴールドとピンクゴールドの中央に小さなダイヤ、そして、真正面から見えるホワイトゴールドの台には小さなダイヤが数粒行儀良く並んでおり、リングの中に何か文字が刻まれていた。

「こ……れ……こっちには、[I need you]って……」

「もう1つのほう見て見てみろよ」

「えっと……こっちには……[all in all]……」

 え……と、ヒナタが声を上げてナルトを見れば、彼は赤い頬をしながら視線を彷徨わせてから、コホンッとひとつ咳払いをして、口を開く。

「文字色々あったんだけどさ……えー、まー……そ、その……なんだ……ありきたりな言葉で悪ぃんだけど……つなげてみたら『全部ひっくるめて、キミが必要』って……ことでさ」

 言ってしまってから、本当に照れたのか、ナルトはガバッと窓の方へと視線を向けてしまい、ヒナタの方からは耳しか窺い知ることができないが、月明かりからでもわかるくらい真っ赤である。

 オレンジ色のマフラーをつんっと引っ張り、ヒナタはナルトを自分のほうへ向かせると、胸に飛び込みぎゅぅっと抱きつく。

「も、もう……それ……プロポーズ……だよ」

「だってさ……心からそう思うんだぜ?」

「ナルトくん……」

「全部必要なんだ。オレにとって、ヒナタがいることが嬉しい……ほら、指輪貸せよ。はめてやるから」

「う、うん……」

 ソッと取られた手は左。

 指輪を大事そうに通されたのは、左の薬指……

 その意味がわからないほど、子供でも無知でもない。

「ナルトく……ん」

「予約……聖なる夜に誓う。遠くない未来に、きっと……ここに……贈るから。それまでの予約な」

「うん……待ってる……」

「おう」

 顔を見合わせくすりと笑い、ヒナタは今度はもう1つのペアである指輪をジッと見つめた。

 ホワイトゴールドと黒っぽいメタル素材で、同じようなクロスデザインの指輪。

(ナルトくんも……つける……のかな?……ど、どうするんだろう……一緒に……つけて……くれるの?)

 そんなヒナタの考えをお見通しだとでも言うように、ナルトはニッと笑うと、指輪をとってヒナタの手のひらに載せる。

「今度はオレにヒナタがつけて」

「……な、ナルトくんも……つける……の?」

「そりゃそーだろ?嫌か?」

「ううんっ!う、嬉しい……」

 恐る恐る指輪をとって、左手をとっていいのかどうか迷うヒナタの手の行方を、ナルトはジッと見つめていた。

 どこがいい?

 どうする?

 と、ナルトは心の中でヒナタに問いかけ、そしてヒナタの手がゆっくりとナルトの左手をとった瞬間、ナルトは自分の胸がどくりと大きく音を立てた気がして息を詰めてしまった。

 ヒナタの指がそっと指輪をはめたのを見届けたナルトは、自然と込み上げてくる笑みを隠し切れずに、ヒナタをただ見つめる。

「……ここ……で……良かった?」

「ヒナタはどうなんだよ」

「わ、わたしは……ここが……良かったの……」

「同じだってばよ。ここ以外にはめてたら、お仕置きだよなー」

「ふぇっ!?」

「そりゃそーだろ?オレは、お前の何だよ……ヒナタ」

「こ……恋人……」

「だけじゃねーってばよ。将来、確実に旦那になんだからさ」

 ナルトがそう迷うことなく言えば、ヒナタはぴくんっと反応したあと、ふわりと笑い小さく頷いた。

 互いの左手の薬指にはめられた指輪が、月光を受けてキラリと輝き、その輝きを見つめ、ヒナタは柔らかな笑みを浮かべる。

 そんなヒナタの左手と、ナルトの左手が触れあい、重なり、指と指が絡み合う。

 引き寄せられるように顔を上げたヒナタは、その先に熱の篭った視線で見つめてくる愛しい人に、言葉をかけることも出来ずに目をゆるりと閉じる。

 任務に出かける前のように熱い口付けを感じながら、体をふるりと震わせた。

 この後に起こること、期待していること、全てを感じ取ることができる。

「任務前に言ったように……あっためてやるよ」

「こ、心は……いっぱい……あったかい……よ」

「次は体な?」

「あたたかい……くらいじゃ……済まない……よ」

「ああ、熱くしてやる。身も心も、溶けちまえ……」

 ぎゅっと握られた手が解かれ、意図を持って這うのを感じながら、ヒナタは目を閉じ熱に浮かされたように声を漏らす。

 慣らされた体は些細な動きにすら反応を返し、すぐに上がってしまう息に戸惑いながら、白い喉を逸らせた。

「可愛いってばよ……」

 うっとりと呟かれる声を聞きながら、遠くで鈴の涼やかな音を聞いた気がして、ヒナタは瞳を開けば、視野いっぱいに愛しげに微笑むナルトの表情が見えて、涙が滲むほどの幸福を感じる。

 自分という存在に、こうまでして執着し欲しいと喰らい付いてくる愛しい人がいままでいただろうかと振り返り見てみるが、やっぱりそんな存在はいるはずもなく、誰よりも求めてきた相手が求めてくれる喜びに打ち震えた。

「全部……オレのもんだ……」

 密やかに囁かれた言葉は、更にヒナタを熱くし、もう息すらできないように喘ぎ、呼吸を求める。

 しかし、その呼吸すら奪うようなナルトの口付けを受け入れながら、脳がとろけてしまうのではないかと、ナルトからもたらされた熱でいっぱいいっぱいになりつつあるヒナタはぼんやりと考えた。

 激しく、だけど優しく求めてくる愛しい彼を抱きしめ、ヒナタは熱い吐息を漏らす。

「あ……つい……」

「もっと熱くなれ……ヒナタ」

 どこまで熱くなれるんだろう、どこまで熱くなればいいんだろう、どこまで……と、思考を巡らせようとするが、そんなことが容易にできるはずもなく、ただ、ナルトの全てに翻弄され、外の寒さなど無縁の熱に溶かされ、甘い声を上げるしかなかった──







「きゃーっ!」

「のおぉわぁっ!」

 何の声だ!?

 と、ナルトはベッドから跳ね起き、その音の発生源を見る。

 白い毛玉が真っ赤な帽子を掴んで、自分の上に乗っかっている……と、確認したナルトは、ほっと吐息をついて朝から元気な息子の頭をぐりぐり撫でた。

「どうしたってばよ」

「さんちゃ、きたー、ぷれぜんとっ!」

「煌は良い子だから、サンタさんきてくれたんだな。良かったなー」

 撫で繰り回されてきゃーと嬉しそうに声を上げていた煌は、次は母に報告しようと、騒いでいてもぴくりとも動かない母に狙いを定めて飛び出そうとするが、それをナルトがいち早く気づき止める。

「あー、母ちゃんは、もうちょっと寝かしておいてやってくれってばよ。ちっと遅かった……からな」

「にんむ、たいへん?」

「あー、うーん……いや、その……まー、い、色々あんだよ」

「いろいろー?」

「そう、色々」

 ナルトは赤くなり、純真無垢な煌の目から視線を逸らせて、昨夜ちょっと無理させたかな……と、少しばかり反省した。

 あまりにも可愛かったというのもあるんだから仕方が無いと、いいわけめいた言葉を胸中で呟きながら、とりあえずは……とベッドから降りる。

「父ちゃんは今から風呂入るけど、煌もどうだ?昨日の晩、任務で入ってなかったろ?」

「はいるーっ!」

「おう」

「きょう……さんにん……ちがう」

「だから、母ちゃんはまだ寝かしておいてやれってば、たまには男同士で入ろうぜ」

「はーいっ」

 ぱたぱた飛んできて肩にとまると、ナルトは煌と共に風呂にはいるべく下の階へと下りた。

 ひんやりとする空気が漂う一階に、ぶるりと体を震わせてから、暖房をいれて、もっと寒い浴室に湯を張る。

「そうだ、煌」

「んー、なーに」

「昼過ぎに、綱手のばあちゃんところ行くぞ」

「はーいっ、ばーちゃっ!」

 部屋が大分あたたまってきて、朝食何にするかな……と、冷蔵庫を開けたと同時にドタンッと物凄い音が聞こえて、今朝は賑やかだなと思いながらもナルトは目にも留まらぬ速さで急ぎ二階へと向かえば、音の発生源である彼女は、見事にベッドから落ちていて、したたかに腰を打ったのか、涙目で摩っていた。

「大丈夫か?」

「えっと……お、おはよ……う」

「おはよ。それと、無理すんじゃねーって……昨夜はちょっと激しかったしな」

 最期の言葉は同じく駆けつけてきた煌に聞こえないような小さな声で呟き伝えると、ヒナタが真っ赤な顔をしてナルトを恨めしそうに見つめる。

 そう、この足腰の力の入らなさ加減の原因を作った張本人は、ニヤニヤと笑い、全く反省の色は無い……ようにも見えるが、差し出された手と支えられた体への力加減を見れば、そうでもないのかもしれないと、ヒナタは苦笑を浮かべてしまった。

「かーちゃ、だいじょーぶ?」

「おはよう、煌。大丈夫だよ……ちょ、ちょっと足に力が入らなくて……」

「父ちゃんが運ぶから、問題ねーって」

「んっ!」

 えっと声を上げたヒナタを、親子二人は見事にスルーして、ナルトは慣れた様子でヒナタを抱き上げ、煌も慣れた様子でそんな二人の前をぱたぱた飛ぶ。

「さーて、とりあえず、風呂と朝飯だ」

 ナルトの言葉に、ヒナタも煌も頷くと、いつもの朝の光景に心穏やかな時間の流れを感じ、自然と笑みを浮かべる。

「そーだ、かーちゃ、さんちゃ、きたー」

「良かったね、煌。煌はいい子だから、ちゃんとサンタさんがご褒美を用意してくれたんだよ」

「うんっ!とーちゃと、かーちゃは……?」

「父ちゃんと母ちゃんは、子供……じゃねーだろ?サンタさんは子供にプレゼントくれるんだぜ?お前っていう子供が居るのに、そりゃねーってばよ」

 ナルトが笑って言えば、ナルホドと納得したように煌はきゃっきゃ笑い、赤い帽子をふわふわ揺らす。

 ヒナタがくすくす笑いながら帽子をちゃんとかぶせてやり、思いのほかソレで安定したのか、煌は嬉しそうに羽をはためかせる。

 ナルトとヒナタは嬉しそうに飛んでいく煌の後ろ姿をみながら、後はマフラーと……と、自分たちのクリスマスプレゼントを想像の中で着せてみると、何となく嬉しくなって微笑む。

「でも、マフラーに隠れちまうかな」

「首許につけるの?」

「そっちのほうが安定するんじゃねーかな。頭だと……色々となぁ」

「そっか……角……」

「そ、ソレが問題だってばよ」

 両親が何か話をしているのをキョトンとしてみていた煌は、ただ、二人がとても仲睦まじいチャクラの交じり合いをしているのを感じて、目を細める。

(きら、しあわせー、とーちゃと、かーちゃ、いちゃらぶー)

 と、余計にテンションを上げた煌に、今度は両親のほうがそれを見て首をかしげるが、とりあえずは……と、ナルトは朝から元気一杯の息子を捕まえ、3人一緒に浴室へと消えていくのであった。







「漸く来たね」

 火影執務室へ伺ったのは昼下がりの頃であった。

 遅めの朝食を取ったあと、部屋の掃除やら洗濯物やらと忙しく動いていたので、妙に時間をとってしまったのだ。

「へへ、遅くなってすまねーってばよ」

「いいや、丁度良かった。今さっき届いたばかりだ」

「サンキュ、ばあちゃん」

「ふっ、まあ、お前にしちゃ、良く考え付いたもんだよ」

 綱手はそういうと、大きな机の上に桐箱に入った物を取り出し、ナルトへと渡す。

 それを受け取ったナルトは、中身を確認してから礼を言い、煌へと向き直る。

「煌、父ちゃんからお前にクリスマスプレゼントだってばよ」

「とーちゃ……から?さんちゃ、から、もう、もらった、のに?」

「父ちゃんからもプレゼントさせてくれって」

 ナルトはワシワシと煌の頭を撫でて言うと、桐箱の中から取り出したものを煌へと渡した。

 父から渡されたものを見た煌は、一瞬言葉を失い、そして、びっくりして父を見てから、後ろにいた母を見る。

「良かったね、煌」

 手元にある煌にあわせて作られた小さな小さな木ノ葉の額宛を見つめていた煌は、ヒナタの言葉に視線を彷徨わせ、本当にこれを貰ってしまっていいのかと疑問を貼り付けたまま、父と母を見つめた。

「かーちゃ……と、とーちゃ、……貰って、いい……の?」

「あったり前だろ?お前は、オレたちと同じ木ノ葉の忍なんだからさ」

「まあ、お前の場合は特例だがね」

 綱手もくくくっと低く笑いながらそう言うと、全身を歓喜でぶるりっと震わせた煌を見つめて、口元に笑みを浮かべた。

 その小さな全身でいっぱいいっぱい喜びを表現する煌。

 言葉はまだついてこないようだが、毛を逆立てたようなぶるぶるっという震えは、感情の昂ぶりを教えてくれるのには十分であり、ナルトもヒナタも顔を見合わせ目を細める。

「とーちゃ、ありがとーーっ!!」

「ぐおっ」

 不意打ちに、弾丸のごとく飛んできた煌は、ドカリとナルトの肩口に頭突きをするように飛び込み止ると、ぐりぐりぐりぐりと頭を擦り付けた。

 全身いっぱいに喜びを溢れさせる煌を見ながら、綱手もシズネもくすりと笑みを浮かべ、その後ろでごそごそと何やら準備している母であるヒナタの様子を見る。

 どうやら編んでいた赤いマフラーが完成していたようで、それをソッと近づき、首許へと巻いてしまった。

「これは、母様から」

「……かーちゃ……」

「上手に編めていないけど……」

「父ちゃんのコレも母ちゃん作だぜ?お揃いだよな」

「とーちゃと、おそろいーっ!かーちゃ、すごーっ!ありがとーっ!!」

 今度はヒナタに抱きつき、ぐりぐりぐりぐりと額を擦り付ける煌。

 優しく煌を抱きとめて、柔らかな笑みを浮かべてよしよしと撫でるその姿に愛しさが募って、ナルトはヒナタ諸共煌を抱きしめた。

「父ちゃんも母ちゃんも、煌が大好きだってばよ」

「サンタさんに負けないくらい、煌の頑張りを見ているからね」

 そのサンタはお前たちだろうがと、苦笑を浮かべながら綱手は、赤い帽子とマフラーに身をつつみ、額宛をどこにつけようかと思案している煌を見つめて微笑む。

 その時、きらりと光ったものがあるのに気づいた綱手は、自然とヒナタの左手の薬指へと視線をやり、それから、同じようにナルトの左手の薬指へと視線を移せば、ナルホドとほくそ笑んだ。

(全く……外は寒いというのに、熱いやつらもいたもんだねぇ)

 呆れてからかってやろうと口を開きかけたその時、違う意味で熱い二人が執務室へと飛び込んできて、どうやら業務再開らしいと、綱手は大きな溜息をつく。

 色違いのお揃いの指輪。

 それが、永遠の誓いの指輪に、いずれはなるのだろうと微笑みながら、綱手は、違う意味で熱い連中、ガイとリーと話をしている、うずまき一家を見つめ笑みを深めた。

 誘われるように人が集まり、あっという間に執務室は人で溢れかえり、ナルトの指にある見慣れないものにいち早く気づいたカカシがからかい、ヒナタの指にあるものに、いのとサクラが黄色い声をあげ、どうやら業務再開だと思ったのは間違いか……と、シズネと顔を見合わせ軽く溜息をつく。

 だが、それはとても平和に満ち溢れ、優しいものであり、心あたたまる光景でもあった。



 もう、外の寒さなど気にならない。



 窓を叩く冷たい風の音も、この部屋の中までは入って来れないとでも言うように遠くへ行き過ぎ、陽だまりのようなあたたかさを感じさせる部屋の空気に、誰もが笑みを浮かべていた。



「今晩は、ちゃんとご馳走用意するからね」

「一緒に作るかっ」

「きらもーっ、きらもーっ!」



 ざわめく中で聞こえる、仲睦まじい、うずまき一家の会話に、綱手は密かに今夜そのご馳走にありつこうか……と、にんまり笑いながら、去年とは違うあたたかいクリスマスに心躍らせる。

 きっと賑やかなものになるに違いない。

 誰もがそんなことを考えながら、微笑みあっていて、その仲睦まじい様子から、既に若夫婦と言えるナルトとヒナタを見て顔を見合わせ笑う。

 そして、そんな両親に全幅の信頼を寄せている煌をあたたかく守るのであった──







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