秋の祭典だってばよ(るなた様)



秋の祭典だってばよ



「んで、イルカ先生が俺に相談ってなんだってばよ?」

「あぁ、実はな…」

〜回想〜

「2週間後に迫った秋の祭典での演劇だが、何かやりたい劇はあるか?」

「イルカ先生、今まではどんな劇をやっていたんですか?」

「それが、こういった演劇事態、お前達が初めてなんだ。
火影様の意向でな。忍びは時に潜入調査など、自分ではないものになりきって行わなければならない任務に就く事がある。
アカデミーで演劇を行うことは重要とのお考えからだ。」

「えー、何それ?めんどくさーい。」

「そう言うな。因みに当日は、里中の人に観られる事になる。真剣に考えるようにな。」

うわっ、マジかよ。
やってらんねー。
ガヤガヤ

(はぁ、まぁ10歳前後のこいつらの反応はこんなもんだろうな。)

「はい!先生、どうせやらなければならないなら、里の英雄のナルト様のお話はどうでしょうか?」

クラスのまとめ役の生徒からの助け船的意見がでる。
それに便乗したのは女の子達だ。

「はいはーい!ナルト様のお話しと言えば、やっぱりあのラブロマンスよねー。」

「キャーッ!私も思った!あれでしょ?あのペイン襲来の。」

「そうそう!素敵よねぇ。敵わないとわかってる相手に立ち向かい告白した日向宗家のお嬢様と、倒され討たれてしまい、哀しみの暴走を止められなかった里の英雄。切なさと素敵さが留まるところを知らないとはこのことよ!」

キャーキャー盛り上がる女の子達。
台本書くのに取材しないと、とか、配役はどうするとかで一気に沸き立つ教室。

「はいはい、そこまでだ。これは本人達の了解をとらないと話が進められない。先生がナルトとヒナタに話をするから、それまで保留だ。」

〜回想終わり〜

「と、言うわけだ。」

話を聞き、固まる俺。現在ヒナタは任務で里に居ないため、俺だけイルカ先生に呼び出された。
あー…でも俺ってばあの時の返事、まだヒナタに伝えてねーってばよ。
ヒナタのあの時の言葉には驚いた。
俺ってば、そんな風に見てくれる人がいるなんて思ったことねーし、ましてや人柱力の俺だ。父ちゃんと母ちゃんに悪いけど、人並みの幸せなんて訪れるはずがねーって内心諦めていた。
そんな俺を"大好きだ"って言ったヒナタ。
嬉しいと思った。
ヒナタの事、すげぇ知りたい自分が今居るのは確かだ。
もう少し、時間が欲しい。
あの言葉は俺にとって奇跡で、大切で。
我が儘なのは承知の上で、返事が出来ないでいる。
なのに、演劇って。

「無理!無理無理無理!!それだけは却下だってば!」

「そうか…。そうだよなぁ。ヒナタにしろ、承知しないだろうと思っていたんだ。」

恥ずかしがりやのヒナタの事だ。そんな演劇を里中の人に見られたら…家に籠って出てこなくなっちまうかもしんねー。
そんなのぜってーごめんだってばよ。

「あぁ、違いねぇ。」

「なぁ、ナルト。それなら代わりの案はないか?あいつら、盛り上がってしまっているから、そんじょそこらの話では満足しないと思うんだ。」

んー、と頭を捻り考える。
10歳前後の奴らが好きそうな話。
1つ知っている。
父ちゃんと母ちゃんの馴れ初めの話だ。
父ちゃんは、顔岩になるほどの有名人だが、箝口令もあったがため、あまり語られる事がない。
その謎多い有名人のラブロマンス。
食いつかねぇ奴はいねーってばよ!

少し父ちゃんと母ちゃんに悪いと思いながら、俺とヒナタの為、とイルカ先生に話すと、そいつは凄いと食いついた。

「ナルト、台本もお願いできないか?」

「うえぇ、それは勘弁してほしいってばよ。」

「その話はお前しか知らないだろうし、四代目様とクシナ様の台詞なども想像しないといけない。息子のお前にならできると思うんだ。なんなら依頼として火影様を通してもいい。この通りだ。」

イルカ先生の頼みなら、断りたくねぇ。…ねぇけど、俺も父ちゃん母ちゃんのことあまり知らねぇし…。
んー、と悩む俺に、火影様に相談しようとイルカ先生が提案した。

「んで、ミナトとクシナの話を演劇にするのか。いいじゃないか。ナルト、脚本の件引き受けてやれ。
2人の事なら、カカシが詳しいだろ。カカシならちょうど今日、任務から戻るはずだから話を通しておいてやる。」

グッドタイミングとでも言わんばかりに、火影執務室の扉が開き、カカシ先生、ヒナタ、サイが任務完了の報告にやってきた。

「任務、無事完了しました。…って、イルカ君とナルトじゃない。どうしたのよ?」

「おぉ、カカシ、ちょうど良かった。イルカの依頼でな。ナルトを手伝ってやれ。」

つなでのばぁちゃんが、カカシ先生に概要を説明すると、

「はぁ。そう言うことね。アドバイスくらいならできるけど…。そうだ!ヒナタも手伝えない?」

「ふえぇっ!わ…私?え、えぇでも…ど、どうして私ですか?」

完全に不意討ちを食らったヒナタは、突然の申し出に戸惑いを隠せない。

「うん、だってヒナタってミナト先生っぽいから。ナルトはクシナさんそのものな感じだし♪俺があれこれ言うより、きっと上手くまとまると思うよ。」

ニコッと笑いながら言うカカシ先生。
それもそうだなと頷くばぁちゃん。

「えぇぇ、で…でも…。わ、私にできるのかな?…な、ナルト君のお父さんって4代目様ですよね?…こ、こんなにウジウジしてたなんてこと…ないですよね?」

「うん。そうだね。ヒナタに似てるってのは、大切な人を守りたい気持ちの強さと、さりげなく優しい気遣いができるところかな?」

「えっ、…でも、それならナルト君で充分なんじゃないかと…。」

「なー、ヒナター。ヒナタは俺が1人で大変なのを手伝ってくんねーの?」

「そ、そんなことない!な、ナルト君がわ、私なんかが4代目様に似てるって言われて…い、嫌じゃないかなって。」

「何言ってんだってば、ヒナタ。俺はお前ほど強くて優しいやつを知らねー。父ちゃんがお前に似てるって言われて、俺ってば、なんか嬉しいってばよ。ヒナタ、頼む!俺を助けてくれってばよー。」

「あ…は、はい。私で良ければ…。」

「よし、決まりだな。ナルトとヒナタは早速執筆に取りかかれ。出来上がり次第カカシが確認し、細かいところのチェックをする事。期限は明日の夕刻までとする。」

「うっす!」「はいっ!」
俺とヒナタ、それぞれ返事をして執務室をあとにし、まずは原稿用紙を買わなくてはと文房具屋で買い揃え、俺のアパートで書くことにした。

「ナルト君、…期限が明日の夕刻ってことは、お昼までにはカカシ先生に見せないといけない訳で…そ、その…な、ナルト君の家に籠らないと終わらない訳で…。」

「そーだな。さっさと書いて終わらせちまおうぜ!」

「え、えぇっと…ナルト君の家にお泊まりさせてもらう事になる訳で…。」

あっ、そうか!
任務とは言え、若い男女が2人きりだってばよ。
そう思うと、急に心臓がドキドキして顔が熱くなる。
ヒナタは?と思い見ると、顔を俯かせ真っ赤になっていた。

「だ、大丈夫だってば、ヒナタ!何もしねーから安心してくれってばよ。」

慌ててそう言い、ドキドキを落ち着かせる事に集中してた俺は、一瞬ヒナタの顔が曇った事に気付かなかった。

(そ、そうだよね。私ったら自分ばかり意識してバカみたい。ナルト君は私の事、女として見ていないよね。)

「ご、ごめんね。…変なこと言って。私、一旦家にもどって必要なもの揃えてくるね。」

シュタッと駆け出すヒナタ。
おぅ、と返事をして俺は自分のアパートへと向かった。

さて、ヒナタが来るまで少しでも進めとくかとペンを持ったまでは良かったが、一向に書き出すことが出来ない。
頭の中で、話の概要は解っているのに、言葉にするとなると難しく、うーんと唸っていると、ピンポーンと鳴りヒナタがやってきた。

「お、おじゃまします。」

「どうぞだってばよ。ヒナタ、待ってたぜ。俺ってば全然話を書けなくて困ってたんだってば。」

「それじゃあ、書くのは私がするね。ナルト君は4代目様とクシナ様のお話を教えてくれる?」

おぅっと、母ちゃんから聞いた話をヒナタに話した。
すると、ヒナタの目が潤み、ポロリと涙が零れ、俺は慌ててタオルを持ってきて拭った。

「ご、ごめんね。突然…。クシナ様怖かったろうなって。4代目様もきっと怖かっただろうね。…きっと…4代目様は、クシナ様の事が大好きだったんじゃないかな?」

母ちゃんが怖かったってのは、きっとヒナタも誘拐された経験があるから、そこからきてるんだろうと思う。

「なぁ、何で父ちゃんの気持ち、ヒナタはそう思うんだってば?」

「…だって、想像でしかないけど…道に落ちている髪の毛でクシナ様の事を見つけ出すなんて…強い想いがないと難しいかな?…と。
そう考えると、大好きな人が連れ去られていってしまうかも…なんて、恐怖以外のなにものでもないもの。」

「…そっか…。そうだよな。…なぁ、こんなこと聞いていいのかわかんねーけど、ヒナタも?」

「うん。怖かった。ナルト君に二度と会えなくなってしまうかも…と思ったら、駆け出さずにいられなかった。…あの時はごめんなさい。」

「なんでヒナタが謝るんだってば!」

「だって、私…結局役に立てなくて…それどころか、ナルト君を危険な目に…」

「違うってばよ、ヒナタ!お前が来てくんなかったら俺は、九尾抜かれて死んでた。…俺は、嬉しかったんだってば!でも、ヒナタが、俺のためなら死ぬことも怖くないって言ったのはダメだ!…ヒナタがペインに刺され、死んじまったと思った途端、辛くて苦しくて怖くて、九尾になっちまってた。…ヒナタ、頼むから生きてくれ。もう失って怖い思いはしたくねぇ。」

ギュッと膝の上で強く拳を握りしめ、目をきつく閉じて泣くのを耐えていると、ヒナタがフワリと俺の肩に腕を回し、優しく抱き締めた。

「わかった。ごめんね、ナルト君。死ぬなんて言わない。ナルト君の気持ち、教えてくれてありがとう。」

握った拳を解き、両腕をヒナタの背中に回しきつく抱き締める。

「あぁ、約束な。…なぁ、ヒナタ。…俺の我が儘であの時の返事してなくてすまねぇと思ってる。…俺は、お前の事まだまだ知らねぇ。これからたくさん知りてぇって思う。…待っててくれなんて言えねぇし、心が変わるなら、俺のせいだし…仕方ねぇと思う。けど、…あぁ、ダメだな、俺。格好つけて離したくねぇ。…ヒナタ…」

言いかけた言葉をヒナタが遮る。

「大丈夫!ナルト君。私、ナルト君が許してくれる限り離れない。…傍に居させて?
どんな答えでも、ナルト君が考えて出してくれたものなら、私は受け止めるよ。待つのも平気だから…」

「ヒナタ…言わせてばっかでごめんな。本当、お前には敵わねぇってばよ。強くて優しい…って、ヤベェ!早く台本書かねぇと!」

慌てて抱き合っていた手をお互い離す。…なんかもったいねーな。もっとヒナタとくっついててー。

ヒナタも、今までの状態を思い出したのか、真っ赤になって、そうだね。と呟く。

それから俺たちは、きっと母ちゃんだったらこう言う、4代目様の気持ちはこんなかな?と台本を急ピッチでまとめあげ、任務明けで徹夜続きのヒナタが、母ちゃんの台詞の語尾を、途中から全部「〜だってばよ」にしてるのに気付き、訂正するハプニングはあったが、なんとか明け方には完成することができた。

この時期、この時間帯は特に冷える。

台本が書き上がった安堵から、急に眠気が押し寄せてきて、フッとヒナタを見ると、うつらうつらとしている。

「ヒナタ、冷えるからこっちこいってば。」

そう言うと、俺の横に来てちょこんと座り肩に顔を埋め、

「おやすみなさい、ナルト君。お疲れ様。」

と言うと、安心したかのように眠りについた。

なんか、素直に甘えてくれると可愛いってばよ。と思いながら、1つしかない毛布を2人で分け合う。


父ちゃんが母ちゃんを惚れさせちまったように、きっと俺も自分の宿命とか馬鹿らしく思えるほど、ヒナタに惚れちまう気がする。



答えがでるまで…
それは、そう遠くない未来にあると確信しながら眠りについた。


〜 f i n 〜 


素敵なお話ありがとうございましたっ><
いやー
ナルトが可愛いですねぇ
しかし、イルカ先生……大変ですねぇ、悪ガキばっかで(苦笑)

ナルトとヒナタのラブロマンスが劇になったら……
うわ、それ見たい!
っていうか、本当にやったら……とりあえず、ヒナタは真っ赤になって逃げて、やっぱり屋敷に引きこもりそう(笑)
いや、他国の人が聞きかじって、妄想交えて書いたとかあって、木ノ葉に逆輸入とかっ!
妄想は尽きませんねぇ

寄り添う二人に萌えさせていただきましたっ
ありがとうございましたーっ><
 






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