秋の祭典、当日だってばよ(るなた様)




俺とヒナタは、アカデミーの生徒の為の台本を完成させ、その後何故か演技指導的な役割まで任せられていた。

綱手のばぁちゃん曰く、
「ここまでやったんなら、最後まで面倒みな。中途半端は良くないからねぇ。」
と、巧く言いくるめられた感じはするが、ヒナタも一緒に居るので、ヒナタの事を少しでも知りたい俺としては、一緒に居る口実をくれたばぁちゃんに内心感謝していた。

……なのに、こいつらときたら、休憩のたびに俺とヒナタを取り囲み、キャアキャアと言いたいことを言ってきやがる。

「ヒナタ様、ナルト様を助けに行かれたとき、何とおっしゃったのですか?」
「今のお二人は、どのようなご関係なのですか? 」
「ヒナタ様、ナルト様がもし貴方を振るようなことがありましたら、いつでも僕が貴方を支え、お側に居ますから。」

俺とヒナタは、そんなガヤガヤをごまかしつつ適当に受け流し、苦笑を浮かべながらやり過ごしていた。

勿論、俺たちは通常通り任務もあり、毎日アカデミーに足を運べる訳ではないので、演技指導っていっても準備が始まったばかりの頃の2回くらいしか行けなかったが……。
そして今日、いよいよ秋の祭典当日を迎えた。
大道具や舞台設営等、人手も必要かな?と、ヒナタと一緒に会場まで足を運ぶと、慌てた様子のイルカ先生とアカデミー生数人。

「よぅ!イルカ先生!どうしたってば?」

「あぁ、ナルトか……。困った事になってな。実は、主役の2人を含む数人が、今流行りの悪質な風邪で寝込んでしまったんだ。
今日いるこいつらも、外せない役処ばかりでな……。
そうだ!ナルト、ヒナタ!お前達なら台詞も完璧だし、出演してくれないか?何から何までお願いばかりですまないが、どうか助けてほしい!」

そう言うと、イルカ先生は俺達に頭を下げる。
そんなに頼まれたら断れねぇってば……と思い、チラリとヒナタを見ると、コクンと俺の目を見て頷いた。
俺もそれに応えるように頷く。

「イルカ先生、頭を上げてくれってばよ。俺もヒナタもやるからさ。んー、でも俺、父ちゃん役出来っかなぁ?俺って母ちゃんの台詞ばっか考えたから……」

「な、ナルト君……そ、その……変化の術を使って演じる訳で……ナルト君がクシナ様を演じたら、違和感なく出来るかなって思って……」

「それだってば!ヒナタ!早速変化してみるってばよ!」
「う、うん。」

変化!と、ヒナタが父ちゃん、俺が母ちゃんに変化する。

「これでどうだってばね?イルカ先生」

「あ、あぁ……流石だな、二人とも。これできっと本番も乗り切れる。本番はあと二時間後だから、20分前までに戻ってくれればいい。舞台設営は俺達に任せて、お前達はその格好に慣れてほしいのと、演劇の宣伝にもなるから、お二人に成りきってデートしてきてくれ。」

「「で、デート!!!」」

ついハモってしまい、お互い顔を見合わせ赤くなって俯いてしまう。

「ハハハッ。その初々しい感じが素で出るのはいいな。まっ、任務だと思って宣伝してきてくれ。」

「に、任務ですね……(それならナルト君にも迷惑かからないかも……) はい、わかりました。」

任務の言葉を聞いて、俺とのデートを承知したヒナタに少しムッとした。

「ミナトー、私とのデートは任務じゃないと出来ないのかってばね?(ヒナタは、任務じゃないと俺とデート出来ないのかってばよ。)」

「え、えぇっ!そ、そんなことない!一緒にいたい!……で、でもナルト君が迷惑かなって……」

つい出たヒナタの本音に嬉しくなり、ニッと笑って軽くデコピンする。

「ヒナター、今はミナトだってばね!」

(は、はうぅ……な、ナルト君、可愛すぎる……お色気の術で女性を演じ慣れてるから……ううん、違う!ナルト君はクシナ様に成りきってるから、可愛いんだ。……私もしっかり務めないと!)

「ん、ごめんね、クシナ。さっ、行こうか?(な、ナルト君に手を繋ぐよう促すなんて!は、恥ずかしすぎる……で、でも、今私は四代目様なの!四代目様、勇気をください!)」

「……あ、えと……さ、さっさと行くってばね!(な、何?ヒナタが俺に手を!?……うわっ、可愛すぎる!んで、めっちゃくちゃ嬉しいってばよー。父ちゃん、サンキュー!!!)」

「(て、手を繋いじゃった!う、嬉しいなっ。四代目様、ありがとうございます。)引っ張らないでよ、クシナ。では、イルカ先生、行ってきます。」

ペコリと挨拶するヒナタ。
振り返ってブンブン手を振る俺。
姿はいつもと違っても、カカシ先生から聞いた父ちゃんと母ちゃんはこんな感じで合ってるらしい。
言葉はいつもと違っても、自然体でいられるのは楽だなと思いながら、笛と太鼓の音が響き、賑わう屋台が並ぶ方へ向かって歩き出した。


「ねぇ、ミナトー。お腹すいたー。(腹へったってばよー。)」

「ん、そうだね、クシナ。何食べたい。(そうだね……ナルト君は何を食べたいの?)」

「たこ焼きに焼きそばでしょ。リンゴ飴も捨てがたいってばね。(あとさあとさ、イカ焼きにラムネも外せないってばよ。)」

「そうは言っても、これから出番が待ってるんだから、ほどほどにね。(ナルト君、多くないかな?)」

「んー、でもねでもねミナト、祭りの屋台で買って食べるのは、普段同じ物を食べるより絶対美味しいんだってば!……そうだ!半分ずつ食べたら、色んな物が食べれてお得だってばね!(俺ってば名案!)」

ギュッとヒナタの両手を握って、顔を見つめる。
あれ?何か赤くねーか?
おーいと顔の前で手をヒラヒラさせてみる。

「(な、ナルト君……可愛すぎるにも程があるよ。そんなキラキラした目で見つめられたら、見惚れて目が離せないよ……わ、私四代目様の気持ち、凄くわかります……)ご、ごめんね、クシナ。……そうしようか。(この親子には、私は勝てません!)」

「……こりゃ驚いたな。本物と見間違える変化だ。雰囲気までそっくりだな。」

声をかけてきたのは、シカマルの父ちゃん。

「クシナは、ナルトだな。ミナトは……ヒナタか?」

「は、はい。ヒナタです。」

「すげぇな、シカマルの父ちゃん。何でわかったんだってば?」

「ハハッ、そこまで中身を似せるやつらは、お前ら以外いないからな。」

「父ちゃんと母ちゃんのこと知ってる人に、そう言ってもらえると嬉しいってばよ。なぁ、ヒナタ。」

「はい。安心しました。四代目様は力だけでなく……そ、その……精神力もとても強い方なんですね。」

「そこに気付くとは、流石だな。まぁ、そんなあいつも、クシナには振り回されてたな。」

「……そ、それ……凄くわかります……」

「えっ!何でだってば?母ちゃん、そんなに強いのかってば?」

「ハハハハッ!ナルトはクシナにそっくりだから、気付かないのも無理はないな。ところで、お前らは何でそんな格好してるんだ?」

事情を説明すると、それは興味深い、知り合いに広めておく。と言ってくれ、別れた。

それから俺たちは、屋台の食い物をがっつり買い込み、広げて食おうぜと神社に向かった。

神社には、ゲジマユとネジ、テンテンの三人が居た。
ゲジマユは、祭りの日だというのに腕立て伏せをしている。
それを、いつものことだと言わんばかりに、特に気にする様子のないネジとテンテン。

良いこと思い付いたってば♪
ニヤリと笑い、俺はヒナタの耳に口を近付ける。

「ヒナタ。」

「ひゃんっ!」

三人が一瞬こちらを見たが、気のせいかと思ったらしく、目をそらした。

「静かにするってばよ、ヒナタ。」

「あ、ご、ごめんね。ナルト君。」

「なぁなぁ、俺とヒナタ、どっちがあいつらに正体見破られないか勝負しねーか?」

「えぇっ!で、でも……」

「ここでバレたら、演じきれてないんだってばよ。本番前の練習と思ってさ?」

「(そ、そっか。ナルト君が練習だと誘ってくれてるのに、断るのはおかしいよね。)うん、わかった。」

「おう、勝負だ、ヒナタ!負けたヤツは勝ったヤツの言うことを何でもきくんだってばよ!」

「そ、そんなっ!」

「勝負にペナルティは付き物だってば?あんまりこそこそやってると、それこそ怪しまれちまう。」

俺はヒナタの手を引っ張り、半ば強引に三人の近くに向かって歩き出した。

「何ぐずぐずしてるんだってばね、ミナト!せっかく買った食べ物が冷めるってばね。(ヒナタ、勝負開始だってばよ!)」

「わ、わかったからクシナ。(な、何でも言うこときくって……ど、どうしたらいいの?……ううん、今はそんなことより、負けないように頑張らないと……)」

「こんにちは。君達、見かけない顔ですね?木ノ葉の額あてをしているという事は、アカデミーを卒業して下忍になりたてというところでしょうか?
僕は木ノ葉の美しき碧い野獣、ロック・リーです。こっちの二人はネジとテンテンです。君達の名前は?」

「こんにちは。私はクシナ、こっちはミナトだってばね!(クククッ、ゲジマユのヤツ、気付いてねーってばよ。)」

「初めまして。(は、はうぅっ……緊張しちゃうよ……)」

「初めまして。ミナト君とクシナちゃんね。下忍になりたてって事は、今班で任務にあたってるのよね?先生は誰なの?」

テンテンが少し屈んで、目線を合わせて質問してきた。

「か、カカシ先生だってばね!」

「ふーん、そうなんだー。ところでクシナちゃんの『〜だってばね』っての、ナルトの口癖に似てるわね。」

「(やべぇ)あー……えーっと……あ、アカデミーでナルト様の口癖が流行ってて使い続けてるだけだってばね!(俺ってば、ナイス言い訳だってばよ!)」

「そうなんだ。ナルト、人気あるのねぇ。」

じっと黙って様子を伺っているのは、ネジだ。何か俺たちの顔を見て考え事をしているようだが、突然ヒナタに向かって話しかけてきた。

「お前、ミナトと言ったか。どう考えても顔岩の四代目にそっくりだな。お前、本当は何者だ?無関係とは言わせない。……白眼!」

そう言って白眼を発動させたネジ。暫く俺達を見つめいたが、どうやら気付いたらしい。

「ヒナタ様!!!それと、お前はナルト!!!お前はヒナタ様を巻き込み、何をやっているのだ!!!返答次第ではタダでは済まさん!!!」

八卦六十四掌の構えをとり、俺を睨み付ける。

「いやいやいや、ネジ……」
「誤解です!!ネジ兄さん!!!」

突然俺の言葉を遮ったヒナタは、庇うように俺に背中を向け、ネジに向き合う。
その様子に驚いたネジは、慌てて構えをとき、ヒナタにペコリと頭を下げる。

「失礼しました、ヒナタ様!!!」

「あ、頭を上げてください、ネジ兄さん! ……こ、こちらこそ、皆さんを騙すような真似をしてすみませんでした。実は……」

経緯を説明するヒナタ。
俺との勝負の事も明かし、再度丁寧に謝った。

「何と、そうでしたか。……で、では……その勝負……」

「そうね。ネジのせいで、ヒナタの負けね。」

「ニシシッ、そうだってばよ。ネジ、俺を勝たせてくれて、サンキューな!」

「ウオォォォォ……お、俺としたことが……ヒナタ様をお守りするどころか逆に貶めてしまうなんて……」

「そ、そんな!ネジ兄さんのせいではありません!」

そんな慰めの言葉が、更にネジを落ち込ませたのか、もう立ち直れないといった様子だ。
やれやれといった様子で呆れるテンテン。ドンマイです、ネジ。と、肩に手を置くゲジマユ。

「しかしナルト君!ヒナタさん!どんな時でも勝負を忘れないお二人は素晴らしいです。これぞ青春!
僕も、お二人の正体に気付かなかったので敗れた事になります!さぁ、何でもやりますので言ってください!!!」

何故か勝手に負けたことになったゲジマユに、そんじゃあ劇の宣伝でもしてくれってばよ。と言うと、お安い御用ですと、あっという間に走って行った。

「ネジ、そろそろ行くわよ。ナルト、ヒナタ、またね。」

そう言うと、テンテンはネジの背中を優しくポンポンと叩き、屋台の方へと行ってしまった。

嵐が去った後かのように、急に静かになる境内。
ヒナタの顔を見ると、同じ事を思ったのか、プッと吹き出し笑いがおきる。

「ハハッ、あいつらおもしれーっ!」

「フフッ、そうだね。そして、チームワークも最高だね。」

「その通りだな!……それはそうとヒナタ、勝負は俺の勝ちだってばよ。」

「あうぅ……そ、そうだね。……参りました。……えっと、私は何をしたらいいのかな?」

「んー、そうだなぁ。考えておくってばよ。やっぱ、ちゃんとヒナタの姿に戻ったときにしたいしな。……っつーか、大事なもん忘れてた!!!ヒナタ、早くこれ食っちまおうぜ!」

そうだね。と、買い漁った食い物を広げて一気にがっつく俺。そんな様子をニコニコ嬉しそうに眺めるヒナタ。途中、噎せる俺の背中を擦り、水を差し出し、大丈夫?慌てると体に良くないよ。と微笑むヒナタ。……っつーか、今顔は父ちゃんなんだけど、違和感ねーな。

「本当、自然体でそっくりだよね。」

突然、俺達の前に現れたカカシ先生が言う。

「やっぱ、そうなのか?カカシ先生。俺もヒナタの対応が、父ちゃんの顔してるくせに全然違和感ねーって思ってたところなんだってばよ。」

「わ、私も、クシナ様の事知らないけど、ナルト君はずっと上手に演じてるなって感心してて……」

「ん?俺特に意識して母ちゃん演じてねーってば?意識したのは言葉遣いくらいなもんだってばよ。」

「えぇっ!そうだったの?……違和感なかったよ。凄いね、ナルト君。」

「なっ、俺の言った通りだろ?男女の違いはあっても、素で内面が似てる。……ところでナルト、そろそろ始まるんじゃないの?こんなところに居て大丈夫?」

「そうだ!戻らねーとやべぇってばよ!!!カカシ先生に時間を心配されるなんて、本格的にまずいってば!!!行くぞ、ヒナタ!!!」

アハハッと苦笑いを浮かべるカカシ先生を後に、俺達は会場へ向かった。

会場に着くと、イルカ先生が冷や汗をかきながら出迎えた。

「ナルト、ヒナタ!もう時間だ!いけるか?」

コクンと二人で頷き、会場の幕が開く。


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演劇も無事終わり、会場からは拍手がこれでもかというほど沸き起こり、イルカ先生含む出演者全員で礼をし、幕が閉じる。そこで俺とヒナタは変化を解き、各々の姿に戻った。

「やったな!イルカ先生!」

「あぁ、みんな素晴らしい演技だったぞ。ナルトはアドリブも多かったが、ヒナタは器用にこなしていたな。とてもぶっつけ本番とは思えない内容だったな。」

そう言って、俺とヒナタの頭をクシャリと撫でるイルカ先生。

「ヘヘッ。実際演じると、こうした方が自然かな?と思うところが結構あってさ、勝手に変更しちまった。突然すまなかったな、ヒナタ。」

「ううん、私もそう思ったから……それに、アドリブに無理して合わせたって感じもなかったし、平気だよ。」

笑いあう俺達。

「まったく……今回の劇は、お前達のどちらか一方が欠けても成立しなかっただろうな。二人とも、ありがとうな!」

その後、アカデミーでお菓子とジュースの簡単な打ち上げに出席し、生徒が帰った後に片付けを終えると、外はもうすっかり暗くなっていた。

「ヒナタ、家まで送るってばよ。」

「あ……え、えぇと……わ、悪いよ。ナルト君。」

「俺がヒナタを送りたいから、何も悪くないんだってばよ。ヒナタは、嫌か?」

「そ、そんな!嫌な訳ない!……あ、ありがとう。」

「ニシシッ、どーいたしましてってばよ。っつーか、寒いな。」

「うん……この時期は、朝晩とっても冷えるよね。」

ふとヒナタを見ると、寒そうに手を擦り、ハァと息をかけ暖めていた。

ニシシッ、俺ってばまた良いこと思い付いたってばよ♪

「ヒナタ、今日の勝負のやつ、今やってほしいってばよ!」

「あっ、そうだよね。……な、何をしたらいいのかな?」

「今日さ、父ちゃんの格好だったけど、ヒナタ俺に手を繋ぐように差し出してくれたよな。あんな感じでヒナタから手を繋いできてほしいんだってばよ。」

「ふえぇっ!わ、私から!?」

「うん。」

「な、ナルト君の手を!?」

「そうだってば。」

「で、でも今日のは……その……四代目様から勇気をもらった気がしたから……できた訳で……」

「ヒーナーター。」

「は、はいっ!」

「約束したってばよ。それとも、役にならねぇと俺と手を繋ぐのは嫌なのか?」

「ま、まさか!そんな事ないよ!だって、とっても嬉しかったんだもの!」

嬉しかった……その言葉に、ヒナタも同じ気持ちだったんだと嬉しくなり、同時に顔が赤くなるのを感じた。
ヤバい!と片手で顔を隠し、ヒナタと反対の方を向く。

「ま、まぁ……その、なんだ……えっと……んじゃ、他の事してもらうかな?……んー、何にすっか…」

言いかけたところで、顔に当てたのとは反対の手がフワッと優しく包まれる。
驚いて見ると、ヒナタが顔を真っ赤にし、少し震えながら俺の手に自分の手を重ねている。
もう、これ以上どうしたらいいのかって感じで、恥じらいに耐えている様子のヒナタ。

それを見た俺は、心の中で何かが弾けた。

グッとその手を握り引き寄せ、ヒナタを腕の中に閉じ込める。
驚き、真っ赤な顔のまま俺を見上げるヒナタ。
そりゃそうだってばよ。俺もビックリだ。
思考が行動に追い付かず、思わず
「寒いから……」
と呟いた。

いやいや、違うだろ俺!
寒いからって抱き締めてたら犯罪だろ!
そうじゃねぇ。
……ヒナタが余りにも愛らしくて、俺の心がもっと欲しいって思っちまった。

人柱力だから……と、人並みの幸せをどこか諦めてた俺。
でも、この状況で、自分に言い訳なんて無理だ。

「俺は、ヒナタが大好きだ。」

追い付いた思考が出した答えは、そのまま言葉になった。

するとヒナタは、俺の胸を押し腕の中から逃れようとする。

「ナルト君……とっても嬉しくて、私には夢のような言葉なんだけど……きっと、思い違いなのかなって……」

そんなヒナタを離すまいと、更にきつく抱き締める。

「何でそんな事言うんだってば、ヒナタ。俺は、お前だから一緒にいたいし、離したくねぇ。……やっと気付いたのに……もう、自分に言い訳して逃げたくねぇ!俺は、心底お前がほしい。」

「……思い違い……では、ないの?」

「ああ。ヒナタが好きだ。」

「……仲間として?」

「それ以上に、女として好きだ。」

「わ、私は……ナルト君が大好きで……ずっと見てきたの。
……さ、サクラちゃんの事は……そ、その……」

あぁ、そうだよな。俺ってばずっとサクラちゃんが好きだって言ってきたから、ヒナタにしては、何故?って信じらんねぇんだろうな。

「俺は、確かにサクラちゃんが好きだった。サスケに認められたくて必死なサクラちゃんが好きだ。……今は、そんなサクラちゃんの想いが、サスケに届くよう応援してるんだ。
俺の心が先へ進めたのは……ヒナタ、お前がいたからだってばよ。俺が悩んだとき、苦しいとき、お前は俺に勇気をくれた。
俺の中で、ヒナタの存在はいつの間にかでっかくなってて……なのに俺は、自分が傷付くのが怖くて、今まで気持ちを誤魔化してた。
でも、もう無理だ!俺は、ヒナタを失いたくねぇ。
……わかってくれ……俺はヒナタが大好きなんだ。」

ヒナタは、俺の腕の中で涙を流していた。慌てて腕から解放し顔をのぞきこむと、ヒナタは涙を拭きながら笑顔を浮かべる。

「ナルト君……ありがとう。
私も、ナルト君を失いたくない。
……ナルト君の事が、大好きです。」

「ハ、ハハッ……やっと通じたってばよー!!!
ヒナタ、すげぇ頑固で、俺の事信じてくれねぇんだもん。切なかったってばよ。でもでも、これでやっと恋人になったんだよな。」

「えぇぇっ!こここ、恋人!?」

「まさか、違うのか!?嘘だろヒナタ!俺達両想いなんだから恋人だろ?」

「は、はは、はい。……で、でも本当に私で……」

「まだ俺が信じられねぇの?……さすがの俺も落ち込むってばよ……」

はぁ、とため息をつき、俺はその場にしゃがみこむ。

「そ、そそ、そんなことない。ごめんなさい、ナルト君。私夢でも見てるようで……」

慌てて俺をのぞきこむヒナタ。
ニヤリと笑い、ヒナタの頬にキスをした。

「ヘヘッ、隙ありだってばよ。」

「な、ななな、ナルト君っ!」

「彼氏のことを信じねぇヒナタが悪いんだってばよー。まだ信じらんねぇんなら、次は口にするってば?」

「し、信じる。……あ、あの、ナルト君。」

「ん?」

「手を……繋ぎたいなって……」

おずおずとヒナタから差し出された手。
嬉しさが昼間の比じゃねぇ。
大事な想いに気付き、通じあえた想いが握りあった手に確かにある。

今なら、人柱力だった母ちゃんの気持ちが理解できる。
惚れちまったら、どうしようもねぇんだな。

寒いと感じていた空気は、いつの間にか感じないほど体が熱く、この幸せをヒナタとゆっくり育てていこうと、握った手に力を込めた。






なんとっ!
変化でイチャイチャしちゃってるナルトとヒナタっ!
くは、か、可愛い二人だーっ><

ネジ兄さん……そこで白眼かっ!
ていうか、ソレは反則技ですよっ(笑)
しかし、ナイスアシストっ
おかげさまで、ナルトくんの思うツボでございます(笑)

最後の言葉、いいですねぇっ
ゆっくり育てていこうっていうのがまた、ナルヒナらしくって><

素敵な作品ありがとうございましたーっ(土下座)

 




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