06
(Tsunayoshi side)

「海常高校の練習試合、ですか。」
「そう。沢田はバスケ初心者で試合の雰囲気に慣れてないだろう。偵察してどんなものか見てきて。緑間と高尾も行くっていうし、海常にはキセキの世代もいるからね、ちょうどいい。」
「は、はい、わかりました。」
「ちなみに沢田、来週の練習試合出てもらうから。活躍次第じゃ1軍上がれるからそのつもりでね。」
「はぁ・・・ってええ?!」

 これが昨日、練習後にあった監督との会話である。え、俺本格的にバスケ初めて1か月もたってないんですけど?!ちょっと無謀な挑戦じゃ・・・だのなんだの必死に訴えてみるが監督は聞き耳もたず、玉砕。そりゃ確かに始めた頃よりはうまくなった自覚はあるけど周りと比べたら全然だし技術もおぼつかないし身長だって、癪だけど低いのに。癪だけど!ただ体力ごまかし忘れてチート(もう認める)なだけなのに。
 和成はにやにやしながら「よかったな〜!」しか言わないし、緑間君はやはりな、みたいな顔してるし!え、ていうか俺って緑間君にとっちゃ眼中にない初心者プレイヤーなはずなんだけどなんでそんな顔した?!練習きつくて1年は半分以上辞めちゃったけど生き残ってるからか?いや、そんなことであのキセキの世代に初心者の俺がプレイヤーとして見られてるとか・・・

 なんてぶつぶついってたら和成から迎えの知らせが入る。今日は監督のご命令の元、海常高校の練習試合を和成と緑間君と見に行く予定だ。なんでも海常高校と相手校である誠凛高校には緑間君の同中の子がいるとか。つまり、帝光中で、キセキの世代。誠凛の子シックスマン、だとか。緑間君から監督に行かせてくれと頼んだらしい。緑間君の唯我独尊っぷりにしびれをきらした我がバスケ部には緑間君限定でわがままは1日三回までっていうルールがあるから、それを使い切っての申し出みたいだ。

「えっと和成。これで神奈川までいくつもり?」
「いやー、真ちゃん冗談通じなくてさー。チャリにリアカーつけてみた!」
「・・・・・・。(え、これに乗れと?)」
「ちょ、ガチ引き悲しい!和成泣いちゃう!」
「・・・俺、先行くから。ちょっと飛んでいくから。」
「いやいやいや、それやっちゃダメなやつ。」

 迎えに来たと思ったら和成は自転車にリアカーひきつれてやってきた。俺の顔は壮大にひきつり2、3歩引いたため和成の泣きマネがはいる。え、本当にこれで行くの・・・。ていうかどこからリアカーなんてものを調達してきたのか。尋ねると調達してきたのはなんと緑間君らしい。てっきりボンゴレ使ったんじゃ?!とか思ってた俺。緑間君のその調達力はなんなんだ。

「とにかく出発するぜ?さー後ろのって!」
「はぁ・・・自転車漕ぐの交代するから、きつくなったらいってね。」

 あきらめる様子のない和成にため息をつき、潔く後ろのリアカー部分に乗る。これ、緑間君もくるんだよね?男子高校生二人を自転車で引くのって結構大変なんじゃないかな・・・。目的地は神奈川なわけだし、結構距離もある。普通に電車乗り継いでいきたかったなぁ。


***


「緑間の奴、先に、行きやがって、誰のせいで、遅れ、たと・・・!」
「か、変わるよ和成・・・」
「いんや、次はぜってー、あいつに、漕がせる!」

 緑間君と合流したと思ったらおは朝に時間をとられ、出発が遅くなり・・・試合が終わってしまうと遅れた本人はリアカーを降りて先に行ってしまった。あの自由人っぷりには頭が下がります。自由人といえば雲雀さんだけど、あの人は人が群れているのを見た瞬間トンファー振り回すから緑間君のほうがマシかな、なんて。
 それにしても緑間君のじゃんけんの強さは尋常じゃなかった。赤信号で止まったらじゃんけんして負けた人が漕ぐ、というルールの元、海常高校にチャリアカーで来た俺たち。その間、和成は自転車を漕ぎ続けた。緑間君はおは朝で運が補正されてるだとかでじゃんけん最強、俺は超直感でじゃんけん最強、結果和成は負け続けた。俺はまだしも緑間君、というかあは朝がすごすぎてもはや恐怖を感じる。

「やっと、ついた・・・!ぎりぎり、見れっかな?」
「お疲れ様、和成。休んでからおいでよ、俺ちょっと見てくる。」
「おう!・・・ってここで一人待つの恥ずかしいわ!」

 なにやらごちゃごちゃ言っているが気にせず体育館へ向かう。あれだけ自転車漕いでたんだし、和成は少し休まないと動けないだろう。
 初めて来た学校だし、広いから迷うかなーとか思ったけど直感に従っていればそんなこともなく。体育館に無事たどり着き空いているドアから顔を出せば現在4Q、残り1分半。本当にぎりぎりだな・・・。緑間君を探してみるとちゃっかり二階から見ていた。試合は点取り点取られの繰り返し、かなりハイペースだ。俺はバスケの試合を間近で見るのはこれが初めてだ。行きかうボール、激しく動く選手たち・・・完全に未知の世界に感じる。青いユニフォームの金髪・・・あれがキセキの世代、黄瀬涼太かな?確か主将のPGも全国で有名だったような・・・と事前に得た情報と照らし合わせながら観戦する。誠凛は創部一年目にして都大会ベスト4だっけ、すごいなぁ。まだバスケの知識が浅い俺はこれくらいの感想しか出てこない。
 両者一歩も引かず試合は進んでいく。誠凛は赤髪で眉毛が面白い人中心に攻めてるみたいだけど、かすかに感じる違和感。よーく目を凝らしてみると水色の髪の選手がパスを回してることに気が付いた。え、なんであんなに影薄いの?!

 結果は誠凛の勝利。よほど自分たちが勝つと思ってたのか、海常の部員は唖然として固まっている。黄瀬涼太は泣いていた。何でも初めて負けたとか・・・それはそれですごいな。試合が終わると緑間君はすぐ二階から降りてきた。きっと黄瀬君に話しかけに行くんだろう、黄瀬君が出て行った方向に歩みを進めている。

「おーい、緑間君。」
「沢田か、なんだ。」
「俺、誠凛に知り合い見つけたかちょっと行ってくるね。和成はそのうち来ると思う。」
「あぁ、わかった。」

 勝利にわく誠凛。その中にとても見覚えのある人を見つけたのだ。部活に入ったとは聞いていたけど、まさかバスケ部たったとは・・・。その人に声をかけるべく、俺は緑間君とは別方向に進んだ。




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