08
(Tsunayoshi side)
 
 練習試合に出すぞ宣言をいただいた俺は、この一週間監督にしごかれ先輩にしごかれ、ついでに和成にしごかれ・・・明日に練習試合を控えていた。今回の練習試合、相手は中堅の高校で、レギュラー関係なく試合に出すらしい。1軍プラス、俺のように声をかけられた2軍数名。和成はこの練習試合での活躍次第でレギュラー入りできるかも、と張り切っている。今日の自主練も終え、和成と二人で帰る準備をする。いつもなら緑間君も加えて三人でかえるのだが、彼は用事があるらしく早々と練習を切りあげて帰って行った。

「いやー、それにしても綱吉うまくなったよな!」
「うーん、確かに上手くはなったけど初心者からの進歩だからね。まだ試合出れるほどではないと思うんだけど・・・。」
「いやいや、集中してる時のお前の俊敏性とボールハンドリング、結構なモンだぜ?」
「えぇー・・・」
「ポジションはSFかー?それかPG?」
「PGって和成と一緒じゃん。俺司令塔とかできないからね?!」
「でも綱吉にはアレがあるし?」

 そういって自分の頭を指した和成は超直感のことを言いたいんだろう。確かに超直感で先読みしてチームを動かしたり、パス回したりとかもできるだろうけど・・・俺には圧倒的に経験が少ないし司令塔は向いていないと思ってる。身長生かしてディフェンスかわしていくほうが向いてる、はず。和成曰くボールハンドリングもいい線いってるみたいだし。

「そーいや綱吉、あっちの宿題はもう済んでんの?」
「・・・・・・。」
「え、ちょ、綱吉さーん?まさか、進んでなかったり?」
「い、いや進んでる進んでるよ。・・・あと少しだから、うん大丈夫。」

 着替えも終わり、部室を出た後、くだらない話をしてる中で和成が出した話題は俺にとって冷や汗ものだった。宿題とは、この場合当てはまるのは学校の宿題ではなくマフィアの、ボスとしての仕事のことだ。正式に10代目を継ぐこととなった俺に少しではあるが書類整理という仕事が回ってきている。内容はそこまで難しくないし、10代目として必要な案件だけという9代目の優しさが見える。だが、家庭教師サマはスパルタなのだ。提出までの期限が、異様に短い。曰く、「このくれーの量簡単にこなせなくてどうするダメツナ」だそうで。いくら体力チートな俺でも疲れは残るから、集中して書類整理何ぞできるわけもなく・・・結果、進行度がどうしても悪くなるのだ。特にこの1週間は部活が怒涛の日々過ぎて・・・正直手が回ってない。

「それさ、獄寺とかに任せらんねーの?右腕なんだろあいつ。」
「俺のサインが絶対必要なものなんだよね・・・。」
「ああ・・・ま!なんかあったら言えよ!」

 テンション低下中の俺の代わりに和成はテンションを高くして手伝うぜーと言う。ついでに肩を組んで。お、重い・・・。

「お前らほんとに仲いいよなー。」
「あ、先輩方!お疲れっす!」
「お疲れ様です。」

 校門を出たところにレギュラーであり現スタメンでもある三年生、主将の大坪先輩と木村先輩と宮地先輩がそろっていた。部室を出たタイミングは違ったけど帰るタイミングはかぶったみたいだ。秀徳バスケ部は全員努力家であるが、緑間君と和成、そしてこの三人は別格だ。練習に臨む姿勢、バスケに対するひたむきさとストイックさを持ち合わせていて、心から尊敬できる。まぁ、緑間君は中学時代負けなしだっていうスマートさと普段の我儘もあってわかりにくいけど、本人の口癖どおり、人事をつくしている。俺もボスになるために努力はしてきたし、バスケに関してはしている最中だけどほとんどが命がけっていう条件がついている。なんというか、5人の努力とは何かが違うんだよね。

「お前ら中学一緒なんだっけ?」
「違いますよー!偶然にも色々あって高校入る前から仲いいんすよ。な、綱吉。」
「あ、うん。」

 校門前ですれ違ってさようならーとなると思っていた俺は続いていく会話にぼうっとして置いてけぼりだ。さすが社交性が飛びぬけている和成、こわいこわい言ってる先輩と普通に話している。ま、ただ後輩に厳しいだけじゃないって知ってるからってのもあるだろうけど。大坪先輩は少し考えるそぶりを見せた後、俺たちをご飯に誘った。なんでも、今から三人でマジバに行くらしい。

「え、いいんすか?!」
「誘ってるのはこっちだっつの。」
「高尾と沢田とは話してみたいと思ってたしな。」
「どーする、綱吉?」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」

 尊敬する先輩からの思いもよらないお誘い。和成を行きたそうにしているのをわかっている俺は、あまり迷わず二つ返事で返す。たとえ家に帰ったら大量の書類が待っていようとも今は頭の片隅へ追いやる。きっと、なんとかなる。最悪和成と隼人のヘルプを頼むしかない。

 学校から少し離れたところはファミレス、マジバ、コンビニと学生に優しいお店がそろっているところだ。今回、俺たち5人はマジバを選び、丁度よく空いていたテーブル席に腰を掛る。全員何かのセットを頼み、食事しながらの会話が弾んでいた。

「沢田はバスケ初心者だったよな?なにかほかのスポーツをやっていたのか?」
「え?」
「そういや沢田は体力あるよな。」
「ちっさいのにどこからそんな体力生まれてくるんだ?」
「ちっさいって・・・俺はこれから伸びるし先輩が大きいんです!」

 突然振られた体力チートネタと身長ネタにたまらず食い気味に返す。特に身長。これでも中学から20cm近く伸びたんだからな!!ムキになる俺をみてたまらず和成が噴出してから笑いをこらえる。お前もバスケ選手としてはそこまで大きいほうじゃないだろう!

「和成うるさい。・・・えっと、スポーツはやってないんですけど鍛えてはいましたね。」
「へぇ・・・見てると体力だけじゃなくて瞬発力もあるよなお前。どう鍛えたらそこまでになるんだよ。」
「あはは・・・。」
 
 数々の死線を乗り越えたらこうなりました、なんて言えない。最近では体力だけじゃなくて反射神経とかもカンスト気味であることがばれつつある。集中しちゃうと調整できなかったんだよ、っていう言い訳はある。俺の戦闘スタイルが近距離得意だし、炎を使って高速移動なんてしているもんだから、反射神経からくる瞬発力はそこから身に着いちゃったものだ。ていうか宮地先輩、よく見てるなぁ。練習大変なのに、後輩気にかけられるなんて。

「綱吉、中学の途中まではそれはもう運動音痴過ぎてやばかったらしいっすよー!」
「え、まじで?」
「ちょ、何言っちゃってんの和成!中2の頃にすっごくスパルタな家庭教師が来まして・・・勉強だけじゃなくて運動音痴も何とかしろとしごかれました・・・。」

 先輩の観察眼に感動していた矢先、和成は俺の恥ずかしい過去話を出してきた。あのころはみんなにダメツナなんて呼ばれてて、俺も学校嫌がって自主休校とかしてたなぁ。ちなみにリボーンにはまだダメツナ呼ばわりされる。懐かしいけどそれ以上に恥ずかしさがある。もはや黒歴史になりつつあるよ・・・。リボーンが来たことで俺の生活は一変して、嫌なこともたくさんあったけど大切な仲間もできたし、感謝してる。だからってスパルタがよかったとは思わないしやめてほしいけどね?!
 
 俺の遠い目にとうとうこらえられなかった和成は爆笑のスイッチが入り、最終的に素敵な笑顔の宮地先輩が和成をシバいてお開きになった。帰ったらなんと書類の束が増えていて泣く泣く隼人にヘルプを頼んだのは和成に内緒だ。






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