09
(Tsunayoshi side)

「今回は多くの選手に試合に出てもらいから頻繁にメンバーを変える。全員準備しておくように、いいね。」
「「はい。」」

 とうとう来てしまった、練習試合当日。和成にとっても高校初の試合であるため、朝からテンションMAXであることに対して、俺は普段と変わらないことを装いながらも緊張感に包まれていた。マフィアの戦闘とはタイプの違う緊張感。俺が試合で役に立つのか、という不安と、わくわくする高揚感。これぞ青春、て感じがして、さらに俺の気持ちは高揚する。監督は普段と変わりない様子で指示を出していて、スタメンであるメンバーも普段と変わりはない様子である。ちなみに、入学早々緑間君はスタメン入りを果たしている。たとえ同じポジションの3年生がいても、この世界は実力がものをいう。キセキの世代を獲得することは、どの学校でもそのポジションはキセキのものとなることが当たり前で、緑間君は入学したときからスタメンが確定しているのと同じだと和成は言っていた。緑間君と張り合いたい和成にとって、緑間君が早々とスタメン入りしているのは相当悔しいらしく、追いつこうと必死である。多分、和成がスタメン入りするのもそう遠くない未来だ、カンだけど。

「沢田!今日はしっかりやれよ分かってるよな?」
「宮地先輩・・・そんな脅かさないでくださいよ・・・」
「お前が交代するとしたら俺だろうからな、ポジ一緒だし。初心者だからって甘えてたら轢くぞ。」
「ええ?!」

 今回、俺のポジションはSFにおさまった。つまり、スタメンだと宮地先輩と同じなわけである。笑顔だけど目が笑ってない宮地先輩に脅しのような活を入れられ、顔が引きつりつつ気持ちも引き締まる。そうだ、俺は確かに高校からバスケを始めた初心者だけど、試合に出てしまえばそんなことは関係ない。秀徳高校バスケ部の選手の一人だ。

 そんなこんなでベンチから試合の始まりを見つめる。さすがバスケ部、みんな背が高い。宮地先輩、大坪先輩、緑間君と190オーバーが5人中3人そろっていると圧巻の一言につきる。相手は190オーバーは一人しかいなそうだけど、他4人も180はありそうだった。つまり、身長低めの選手はいない。秀徳バスケ部一背が低い(別に気にしてない!)俺がどう戦っていくのか・・・それは俺の力量次第だろう。低身長というデメリットを、メリットとする方法は日々模索中である。

 1Qは交代なく進む。21対10と秀徳ペースだ。さすが王者。2Qに入るとき、監督が和成へ交代を告げた。試合にでたそうにしていた和成は気合十分、目をぎらぎらさせていた。こうして見ると和成って目つきよくないよなぁっと思う。さながら獲物を狙う鷹だ。

「綱吉、お前もたぶん出番すぐだぜー?心の準備しとけよ!」
「そうだね。・・・初心者だって甘えてられないもんなぁ、ヘマしたら宮地先輩にどやされる。」
「なになに、宮地サンになんか言われた?だーいじょぶだって!」

 眼はぎらつきをみせたまま、和成はへらりと笑う。そんな軽い感じに大丈夫って言われてもね・・・。ま、俺も気合だけなら和成に負けるつもりはない。

「とりあえず先に暴れてくるわ。コートで待ってるぜ、大空。」

 フォローするから安心しな、とこぶしを突き出してきた和成にこぶしを合わせる。大空、そういわれるとさらに気が引き締まった。バスケの試合には関係ないことだけど、俺個人の気を引き締めるには十分だ。こういう言い方は好きではないけど、部下でもある和成の前で醜態をさらすわけには・・・という気持ちになった。あれ、これプレッシャー?!

 試合の間、選手交代が繰り返され俺の交代が言い渡されたのは3Q後半。宮地先輩と交代していた2年の先輩との交代だ。宮地先輩には背中をたたかれ、入部の時に話したのがきっかけでよく話す藤崎先輩には頭を撫でられ・・・ようやくコートに立った。点差は25点、秀徳のリード。点差はじわじわと開いている。
 ちなみに緑間君は今のところフルで出ている。苦しそうな表情は見えず、淡々とボールをもらいシュートを打っていた。あんなループの高いシュートは嫌だなぁ・・・精神的なダメージがでかい。

「よー綱吉。お前身長で舐められるだろうからそこんとこガツンとやってやれよー!」
「うるさいな知ってるよ!!」

 そうだよね、一瞬ざわついたもんね。なんか小さいのでてきたぞ、と。おかげで自分でも自分の目が据わってるのが分かる。そのまま面白がってろよ、度胆抜いてやるから!
 集中すると、神経が研ぎ澄まされていくのが分かる。いうならば、超モードに似たような感覚。超直感がフルに働いてる。今現在相手チームにボールがある。そしてパスのタイミングと方向、高さ・・・うん、分かるかも。

「な?!スティール?!」
「ナイス綱吉!」

 俺がスティールしたボールは和成の手に渡り秀徳チームの攻撃に切り替わる。低身長の俺がオフェンスのときに何ができるのかというと、ディフェンスの壁を交わしながらボールを運ぶこと。
 和成からボールが渡される。目の前には相手のディフェンス。超直感をフル活用し、右へフェイントかけつつ交わす。ディフェンスする相手を出し抜くには技術や精神力はもちろん駆け引きも肝心だと俺は思ってる。そして駆け引きは俺の得意分野だ。

「あのチビ、何人ディフェンス抜かす気だよ・・・!?」
「三人抜いたぜ?!」

 ディフェンス陣は驚きで動けなくなっているのか、レイアップシュートが簡単に決まった。そこまで驚かれると逆に嫌だなー、なんて苦笑いをしていると、和成が駆け寄ってきて大げさに喜ぶ。なんでも俺が自分と一緒にバスケしていて感動した、らしい。ともかく俺が言いたいのは一つに限る。

「低身長なめんな。」







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