氷炎、湖面に浮く。 | ナノ


「へー君が○○ちゃん?チョーかわいいじゃーん!大きくなったら絶対美人になるね!俺が保障する!ねぇどこ住み?てかメアド持ってる?」

「あ、あの」

「んだよ、まだ青くせーガキじゃねーか。アラシヤマといいテメーはいつから幼稚園の先生になったんだぁ?マーカーよぉ。」

「えっと、その…ッひゃっ!?」

「あーっ隊長文句いいながらも今さりげなく○○ちゃんのお尻触ったでしょ!ずるい!俺も○○ちゃんを手取り足取り腰取りしぎゃー!あっつ!あっつ!」

「いやー!?また人が燃えた!」

「やかましいぞ、○○、ロッド」

「いやいや今のはマーカーちゃんが悪いでしょ!?いきなり人燃やしといてそりゃねーぜ!」

なんなの、なんだと言うのだこの状況は。向こう側のソファーに座っているアラくんに助けを求めるが、彼もこうなってしまってはどうしようもない、と言った表情で首を横に振った。
私の右横には特戦部隊、といわれる部隊の隊長だというハーレム様に大きな腕を腰に回されている。時々手がやな動きをするのが気に食わない。
左横にはアラくんにロッド兄はん、と呼ばれているロッドさん。彼も何故か私の肩に腕を回してくる。先ほど燃やされたというのにタフな方だ。
ハーレム様の横に座っているGさんは心配そうな表情でこちらをちらちらと見ていた。許されるなら彼の隣に行きたい。
最初こそアラくんと師匠さんの間にいたのだが、気づけばアラくんも師匠さんも私をほっぽって向こう側のソファーに避難したのだ。ひどい。

「おい、小娘!お前特異体質なんだってなぁ。どーだ、特戦部隊に入らねぇか?」

「だっ…だめどす!そんなん、わてが許しまへん!」

オレンジジュースを飲んでいたアラくんがいきなりダン!と机をたたき立ち上がったので私はビクッと肩を跳ね上げた。なんでアラくんがそんなに怒ることがあるのだろうか。

「おーおー、アラシヤマー…そんなに俺様にガールフレンド取られるのが嫌なのかー?」

「ちっちが…そんなんやあらしまへんし…って隊長はんどこ触ってはりますの!」

「うぅ…この人お酒臭いよぉ…」

「ほら!○○ちゃんも嫌がっておりますさかい、とっとと返しておくんなはれー!」

「そんな道具みたいにッ!ていうかそもそもアラくんが先に逃げ…いたたた!脇腹!脇腹痛い!」

ハーレム様に腰をガッチリとホールドされているのにアラくんが無理こり私の腕を引っ張ってくるせいで脇腹に変な力が入ってしまいギリギリと傷口が痛む。そんな私を見てロッドさんはお腹を抱えて笑っているし師匠さんは師匠さんで我関せずと言わんばかりに紅茶を啜っている。誰でもいいから、助け舟を用意してほしい。


「……隊長…そろそろ離してあげたらどうでしょうか。」

「…チッしゃーねーな、オラよ」

「うう…お腹痛いよお」

「え、えらいすんまへんなぁ○○ちゃん…手荒な真似してもうたさかい…」

「・・・三時のおやつのアラくんの分のプリンで許してあげる」

私の背中をあやすようにポンポンと叩くアラくんはうっ、と言葉を詰まらせたがしばらくしてから苦々しくこくりと頷いた。
助け舟を頂いたGさんにお礼を言ったその時、カチャり、とカップを置く音が聞こえた。

「隊長。そろそろ出発のお時間では」

「んー?おーそうだな。マーカーは、今回も留守番だな?」

「そうしていただけると嬉しいです」

「おーし、暇つぶしもできたしそろそろ行くぞおめーら!
おい、○○!今回は怪我人っつーことだから加減してやったけどな、次会う時は覚悟してろよ!」

「せやからわてが許しまへんって!」

「じゃーねー○○ちゃん!いい女になれよ!」

「あ、あはは…頑張ります」

そうしてまるで嵐のように特戦部隊の方々は帰って行った。なんだか、何もしていないのにドッと疲れが溜まったようだ。ソファーに一息ついて座り込む。
彼らといると疲れると誰にもいうわけでなく師匠さんが呟いた。私はそうですね、と相槌を打ったが、でも師匠さん、なんやかんや言って彼らといる時楽しそうじゃないですか。と心の中で付け足した。


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