見てしまった。
それは自分にとって良くないどころか悪いこと。
知らない方が幸せだったこと。
*
はっと目を覚ましたメロは、昨夜のことを思い出す。
いつもの通り、図書室で一人勉強をしたあとのことだった。
何の気なしにニアの部屋の前を通ったとき、リノの話し声が聞こえた。
リノがニアのところへよく行っているのは知っていた。
なんでニアなんかのところに…と思ったのは一度や二度ではなかったが。
だからその時も、最初は、普通に会話しているだけだと思っていた。
しかし、明らかに声の調子が違う。
いつものリノの声ではない、もっと官能的とも言える声。
そんなに大きく廊下に響いては居なかったが、ドアのすぐ前に立てば十分聞こえる大きさだった。
「リノ…?」
心臓が痛いくらいに鼓動した。
見たくないけど見たい。
自分の目で確かめなければ気がすまない。
思い過ごしかもしれない。
気づかれないように、そっとドアを開いて覗き見た。
──そこには、自分が最も想像したくない光景。
甘い声でニアの名前を呼ぶリノと、それに答えるようにキスをし、愛撫するニア。
見たことのない顔。聞いたことのない声。知らない体。
自分の心音がドクンドクンと、脳に響く。
信じたくない。
「あっ…な、なんかへん…っ、」
一際大きく喘いだリノの声で、我に帰る。
これ以上見てはいられない。
色々と限界だった。
メロは逃げるようにその場を去った。
「くそ…っ」
寝室で、他の三人が寝ている中、メロは今見た光景を消そうと奮闘した。
そして、今に至る。
どんなに嫌でも朝とは巡ってくるもので、メロの気分とは裏腹に、太陽が燦々と輝いていた。
「おはよーメロ。顔色悪くねぇか?大丈夫?」
「マット…大丈夫だ。」
「あんまそうは見えないけど、まっいーか。」
何やら鼻歌を歌っているマットは置いておいて、メロは廊下へ出た。
「リノ、ニアの部屋に居たの?朝ベッドに下ろした居ないからビックリしたわよ!」
「えへへ、ごめんなさい先生。ニアに勉強教えて貰ってたらそのまま寝ちゃって…」
リノの声。
「リノ…」
リノと話したくて触れたくて、名前を呼んだが届かない。
先にニアがリノに話し掛けた。
「すみません、手加減すれば良かったですね。」
そう言ったニアの横で、リノはカッと顔を赤くした。
「勉強の手加減ってことかしら?」
「えぇ、まぁ、そんなとこです。」
先生の問に平然と答えるニア。
リノは恥ずかしそうに、見えないようにニアの服をきゅっと引っ張った。
不愉快だ。
朝食の時間を告げる鐘が鳴る。
部屋から出てきた子供達はバタバタと食堂へ向かった。
「リノ、おはよう。」
「メロ!おはよー!」
にこっと明るく笑うリノ。
その声に安心する。
が、しかし。
「おはようございます、メロ。」
メロの最も気にくわない男、ニアもまたリノの隣に座っていた。
じっと、意味ありげに見つめられる。
昨日見ていたことがバレているのだろうかと、メロは少し狼狽した。
「あ、あぁ。」
メロは微妙な顔で適当に返事をした。
彼の頭の中は朝の挨拶どころではない。
「メロ──…」
ニアが口を開きかけたとき、先生の声が響いた。
「皆揃ったわね、それでは合わせて、いただきます!」
「いただきます!!」
ニアは口をつぐみ、食事の方へ向き直った。
「メロ、どうかしたの?」
リノが変な様子のニアとメロをみて、心配そうに尋ねた。
「いや…何でもない。」
*
朝食を済まし、各々授業まで20分ほどの自由時間となった。
ボールを持って走り回る子供達がいる廊下で、メロはリノを見つけた。
「リノ!」
「なーに?メロ。」
振り向いた彼女の髪が、ふわりと宙に浮き、それだけでメロの胸は高鳴った。
「あのさ…授業終わった放課後に倉庫の前に来れる?」
「うん、いいよ。…なんで?」
「話があるんだ。一人で来れる?」
「いけるよ!じゃあ、またあとでだね。」
「うん、あとで。」
リノはその身を翻し、教室へ入っていった。
授業が終わり、昼食も終わり、また授業が終わって所謂放課後。
リノは何時もならニアのもとへ行くのだが、メロと会うために、そそくさと倉庫へ向かった。
「メロ!おまたせ。話って?」
「…」
メロは視線を地面に落として、リノと目を合わせていない。
「…メロ?」
「──ごめん。」
リノはグッと腕を引かれて、倉庫の壁へ追い詰められる。
頬の横に、メロは手をついて、逃げ場を無くした。
「メロ…っんぅ…っ
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」
塞がれる唇。
突然のことで、理解できず、されるがままになってしまう。
「んぅ──ん〜っ!!」
パシパシと、メロの背中を叩くが、一向にやめる気配はない。
「ッ……!め、ろっ…!」
やっと離されて、酸素を吸う。
苦しさのあまりに、涙が頬を伝った。
「リノ、昨日、ニアのとこで勉強してたって…嘘だろ?」
「え…な、なんで……」
「部屋に帰る途中見ちゃったんだ。」
「うそ………でしょ?」
首を横に振るメロ。
「リノは…ニアの事が好き?」
うつむいていて、メロの表情は読み取れない。
しかし、声が僅かに震えていた。
「……うん。」
「そっか…。」
「メロ…?」
「俺はここでも一番にはなれないんだな…」
メロは崩れるように、その場に座り込む。
「こんな状況で言うのも、変だけど……好きだよ、リノ。ずっと、前から。」
やっと顔をあげたメロの表情は、悲しい笑顔だった。
「メロ……」
そんなに悲しい顔をさせてしまうくらい、愛してくれたというのだろうか。
難しいことは、まだ子供なリノにはわからない。
だけど、メロの気持ちはしっかり伝わった。
「私、でも……」
「いいよ、ニアが好きなんだろ?」
「…」
リノは答えられなかった。
メロの泣きそうな笑顔を見てしまっては、何も言えない。
「…リノ。」
メロは急に真剣な顔つきになった。
その声にも力が籠っていた。
「それでも、俺は諦めないから。」
再び触れあう唇。
半ば強引に舌をねじこまれ、深く絡む。
「メロ…!?」
離れたと思えば、手を引かれ倉庫へ押し込まれる。
メロは後ろ手で、簡単に鍵をしめて、リノの方へ歩み寄った。
「メロ、何するつもりなの?どうして…」
「だから諦めないって言っただろ?ニアが一回したなら俺もしてチャラ──いや、そんな顔しないでよ、屑みたいな理論だってわかってるから…。」
「…私、こういうのはよくないと思う。」
「知ってるよ。」
「それに今の私はニアが好きなんだよ?それじゃダメでしょう?」
「それも知ってるよ。全て込みで、リノとしたい。」
真剣な顔で言うので、リノは調子が狂ってしまった。
こうなったときのメロは断固として自分の意思を曲げない。
「それに、今は好きじゃなくても、これから好きにさせれば良いってだけのことだから。」
ゆっくりと、押し倒される。
倒された先は床ではなく、柔らかいマットレスのようなもの。
リノは罪悪感に苛まれた。
ニア以外とすることに罪を感じた。
なのに拒めないのだ。
自分が最低だとわかっているのに拒めない。
リノが知るには早すぎる葛藤だった。
「余計な事は考えなくて良い、只気持ちよくなることだけ考えるんだ。」
メロの言葉に、リノは無言で頷いた。
「ん……」
右の首筋に、温かい感覚。
小さな水音が倉庫で反響して、二人を包む。
メロはリノの服を脱がして、上から下へ、順番にキスを愛おしそうに落としていった。
「…痕つけたい。」
「な、なにいってんの!?やだよ!?」
メロは少し考えてから、リノのお腹に一つ痕をつけた。
「った…!メロ!?今ダメって…」
「マーキング、みたいな。」
聞く耳を持たないメロ。
もう無駄だと悟ったリノは、諦めることにした。
不意に、メロの手が太ももに触れた。
そして秘部に、顔を近づけそこを舐め上げた。
「ひっぁ…ん!」
溢れだしている蜜と唾液が混ざりあって、卑猥な音が響く。
「メロ!?そんなとこ、なめ、ちゃ…っぁ」
舌の先が少し中に入り、ぬるりとした感触がリノを襲う。
「あ、ぁ…ッ」
ゆっくり、じっとりと解されていく。
「も…だめ…ぇッ」
達する寸前まできたところで、顔を離される。
「メロ…?」
「まだいかせないよ。」
メロはリノの中へ指を滑り込ませた。
蕩けるように柔らかく熱い。
「平気…かな。」
体を火照らせ、肩で息をしているリノ。
全身が快楽を求めてうずいていた。
メロは服を脱ぎ、避妊具のゴムを取りだした。
「………ゴム…?」
「え、みるの初めてじゃないだろ?」
「…初めて見たけど…」
「はぁ!?じゃあ、ニアは生でやったのかよ!?」
「そ、そういえば…」
「外で出せる自信があったってことか?…僕は多分無理だけど。」
そう言いながら、リノの足を持ち、間に入る。
「いい?」
「ん…」
慎重に、その場所へ入っていく。
「っ…は…柔らか…」
「ん…っ…ぁ、…」
「っ……全部入った…」
「メロ、…ぁ、…ッ」
柔らかくて温かい、表現しがたい快感がメロに押し寄せる。
リノはぎゅっと目を瞑って、快楽に集中した。
ぐちゅ、と音が響く。
「動いて、いい…?」
「う、ん……」
更にその音は大きくなり、反響して二人を欲情させる。
「はぁッ……んぁ…ぁっ」
メロは右手で、リノの胸に触れ、敏感な部分を弄る。
「あッあぁ…んっ」
より締まりが良くなり、メロにもリノにも限界が近づいてくる。
「むり、もぅ…ぁ…ッあぁっ…ん
![](//img.mobilerz.net/img/j/8252.gif)
」
「リノ…ッ、俺、も…ッ」
図らずも声が大きくなる。
リノは体をビクッと揺らし、シーツを握り締めた。
真っ白になる頭と、ぼーっとする耳。
リノはぼんやりと天井を眺めた。
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