その日マットは、なんとなく寄っただけだった。
特に用があるわけでもなく、ただ単に会いたかったから。
当然、リノはマットが来ることは知らない。
会って抱き締めたい気分だ、とマットはリノのマンションまでやってきた。
合鍵を持っているので、インターホンを押す必要もなく、スルリと自動ドアを抜けてエレベーターを目指す。
エレベーターの中で、一階ずつあがっていく数字を見ながら心を踊らせる。
急に後ろから抱きついて驚かせてやろうと、意気揚々としてドアの鍵をあける。
足音をたてないように、そろそろとリビングへ向かう廊下の途中、リノの部屋から声が聞こえてきた。
「あれ、部屋にいたのか。」
ドアノブに手をかけて、開けようとしたその時、マットは実に悩ましげな声を聞いてしまった。
「ん…っ…ぁ…」
紛れもなく、リノの喘ぎ声。
声を抑えようとしている様子が伺えた。
「まっじかよ…」
予想もしてなかった状況に驚くと同時に、興奮を覚える。
今までリノと何度も重なってきたが、一人でしているところを見たことはなかった。
この目でその光景を見たい。
ドアノブを捻って、スタスタと部屋のなかに入っていく。
「あっ…え…!?ま、マット…!?」
リノは大きく目を開き、そして咄嗟に毛布で体を隠す。
「来ちゃった。それよりも、リノ?」
ベッドに座り、リノの顎をクイと少し上に向かせる。
「一人でなーにしてたのかな?」
片手を毛布に滑り込ませて、体を撫でる。
「あっ…や…ち、ちがうの…マット、」
「何が違うの?」
先ほどまでリノが弄っていた胸の突起を指で刺激する。
「ひぁっ…ぁん…」
「こっちはまだ触ってなかったの…?」
じっとりと濡れたその部分に、マットは中指を這わせた。
「すごいとろっとろだ…自分でわかる?」
リノの右手をとって、リノの秘部へ持ってくる。
「確かめてごらん?」
「っ、はずかし…ぃ…っ」
「大丈夫大丈夫、ほら。」
リノは恥ずかしそうに、中へ指を滑り込ませる。
「っ…んん…ッ」
「もっと、深く。自分でしてみて?」
「やだよ…っできない…っ」
「手伝ってやるから。」
リノの手に自分の手を重ねて、深く中へ促す。
「ひぁっあっ……ッ」
「好きに動かしていいよ。」
リノは快感にあらがえず、指を動かしてしまう。
「あっ、んっ…んぁあ…ッ」
「俺に見られて興奮してんの?えっちだね、リノ。」
「ち、ちがっ…そんなじゃ…っんぁ…はぁ…ッ」
「でも指止められないんでしょ?かっわい…」
「んっ…ぅ…っはぁッぁ…ん」
口元を押さえて、乱れていくリノ。
「ねぇ、俺が来る前、何を想像してたの?」
「やっ…だ、いわない…っぁん…ッ」
「言ったらキスしてあげようと思ったのに?」
「っん…ぅ………っぁ…マット、のこと…考えて、た…っ」
「良い子、…ん。」
軽く口づけをしてから、もう一度、今度は深く。
「っはぁ、ん…っぅ…はぁ…」
「んっ……ぷは…ッ…ねえ、リノ。一人で、イける?」
「んっ、ぁ…いったら、マット、ご褒美くれ、る…ッ?」
「うん、いっぱいあげちゃう。」
こくん、とリノは頷く。
「んっ、ぁ…ッ…あぁっ…ッ」
左手を口元に置いて、切なげに声をあげるリノ。
「超可愛い。」
耳元で囁くと、リノはそれに反応して体を跳ねさせる。
「はっ…ぁあん…もうだめ、いっちゃいそ…ッ」
「うん、いいよ、リノ。」
「っぁあ…ッマット、マット…ッあぁんっ!!!!」
登りつめたなにかが弾けるような感覚。
絶頂の余韻で、リノはびくっと体を揺らす。
「っぁ……はぁっ……」
涙が浮かんだ目で、マットを見上げる。
「ひとりで、いっちゃった…ぁ」
「───あー!もう無理!本当に可愛すぎる!」
ガバッと抱きつくマット。
「マット、ごほうびちょーだい…?」
「嫌っつーくらいあげる。」
このあとに、何度も何度も二人で重なったことは言うまでもない。
「すごい、ご褒美いっぱい…もらった」
「俺はまだあげたりないけどねー、リノがもう貰えないらしいからしょーがない。」
くすくす笑って、リノを撫でる。
「マットが元気すぎるのー!」
「こんな可愛い彼女いたら元気にもなるわ。」
そういうと、リノは顔を真っ赤にして、その顔を隠すようにマットの胸に収まる。
「私だって、マットみたいな彼氏いたら、その、気持ち的には…もっとしたいもん。」
恥ずかしそうにそう言うリノの可愛いことといったらない。
好きすぎておかしくなりそうだ。
「リノ、キスだけなら…だめ?凄くしたい。」
「いいよ?…キスだけなら、ね?」
「Thanks!」
口に、とは言っていない。
布団を剥いで、リノの秘部にキスをする。
「マット!!」
だめ!と、怒ってみせたリノだが、次第に流されていき、結局またご褒美の続きを貰うことになった。
お一人様で