逃走









音也「はぁっ…ここまでくれば、大丈夫じゃない?」

可恋「うん、そうだね…っ」

   休日、真昼間。

   久々に休みを貰えた私たちは、2人でショッピングなどをして

   休みを満喫していた―――はずだった。

   市街を歩いていた矢先、

   ファンに音也の変装を見破られてしまったのだ。

   帽子も深くかぶり、サングラスをかけて

   ばっちりだったはずなのに。

   そして、その事態を悪化させたのは――

   私と音也が手を繋いでいたこと。

   超人気アイドルとその曲をつくる作曲家。

   関係を疑われるしかない。

   そして走って逃げて来た―ということで。

   今に至る。

可恋「音也っ、変装これからもっとちゃんとしてね?」

音也「うん…ごめん…」

可恋「…まぁ、シャイニーが何とかしてくれるだろうけど。

   怒られるのは覚悟しないとね」

音也「うん……」

可恋「…しかし、どうしようねこれから。

   きっと同じ格好で歩いてたらまた見つかる…あ。」

音也「ん?」

可恋「音也、確かさっき上着買ってたよね?」

音也「あー…うん、買ってたよ!フード付きのやつ♪」

   るんるんで袋から取り出す音也。

   こんな緊急事態で、まだ笑顔でいれるなんて…。

   …まぁ、そこもいいところなのかもだけど。

可恋「その上着脱いで、そっち来て。ついでに帽子も外して」

音也「分かった!」

   いそいそと着替えはじめる音也。

   これで少しは大丈夫かな…と思っていると、

  「音也見た!?」

  「こっちの方にいたよね!?」

音也「…!!」

   ――ファンが、接近してきていた。

可恋「…音也、もっとフードで顔隠して」

音也「うん!」

   はぁ…何でこんなことに…。

  「…あ!あそこ誰かいるよ!!」

可恋「わっ…」

   ファンが私の影を見つけてしまった。

   何人かの女の子が、私を音也だと勘違いし、駆け寄ってくる。

可恋「ど…どうしようっ……」

音也「……俺に任せて」

可恋「え、……んっ!」

   いきなり真剣な表情になったかと思えば、

   腕を引き寄せられ――――キス。

可恋「っ…お、とや……何っ……」

音也「黙ってて……」

可恋「んんっ…!!」

   熱く、濃厚なキス。

   きっと、今までしたことがないくらい―激しく。

可恋「ふっ……んぁっ…!」

  「…わっ、違ったよ…っ」

  「悪いから、早く行こっ」

   私たちがキスをしているのを見て、

   どうやらファンは勘違いして戻っていったようだ。

音也「……はぁ…」

   離れる唇。

可恋「っ馬鹿…何でキスなんかっ!」

音也「だって逃げればまた追いかけられるし」

可恋「それは…そうだけど…!」

音也「でも、気持ちよかったでしょ?」

可恋「…!!」

   いつもどおりの人懐っこい笑顔。
 
   しかし今日は、どこか大人っぽい様子で。

可恋「…ふんっ」

   こんなキスを味わえるのなら、

   たまには追いかけられてもいいかもしれない。










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ちゅーする音也を書きたかっただけ。








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