可恋「早くついちゃった……」 携帯を見ながら呟く。 今日は翔と久々に会う。 ここ最近は仕事が忙しくて会えるどころか メールもできなかった。 だから、会えるのが楽しみで……。 「ねぇ!ST☆RISHの新曲買うー!?」 「もちろん!私那月くん好きなんだー♪」 「レン様もよくない!?」 「えー、私は翔ちゃんだよー!」 待っていると、時々聞こえてくるST☆RISHの話題。 本当に、アイドルなんだよなぁ……。 はぁ、とため息をついた。 『ST☆RISH新曲発売!』 『ゲストはST☆RISHです!』 『表紙ST☆RISHなんですって!』 毎日毎日、テレビや新聞、雑誌から 取り上げられるST☆RISH。 最初は、私もすごく嬉しかった。 長年の彼氏の夢が、やっと叶ったんだ。 テレビでも、翔が見れる、って。 でも人気になるにつれて、看板に翔がいたり、 聞こえてくる音楽が翔の歌だったり、 翔の話をして楽しそうに離す女の子がいたり。 ―――翔が、遠くに行くみたいで、悲しい。 可恋「おいてくなよ…バーカ…」 独り言。 目からつたう雫になんか構っていられないくらい、 寂しさがどっとあふれてくる。 本当は、わがまま言いたい。 『仕事より私を選んでよ』って。 でも、そんなこと言えない。 仕事を、アイドルの翔を、応援しなくちゃいけない―。 『え、また休みなくなったの? …そっか、頑張れよっ!』 こんな言葉、言えるほど強くない。 本当は行って欲しくない。 「…何、泣いてんだよ」 ふっ、と、自分の前が暗くなったと思うと、 抱きしめられた。 可恋「…翔っ…」 翔だ―――――。 翔 「何で、泣いてんの?」 可恋「翔、がっ…。どんどん人気になって……っ」 嗚咽を上げながらとぎれとぎれに言う。 翔 「うん…」 可恋「私、好き、なのにっ…翔が、遠く……行っちゃ……っ! 行かないでっ、置いて、かないでよ……っ!!」 そう言うと翔は私を離し、 可恋「………んっ…」 キスをした――――……。 翔 「ごめんな…寂しい思いさせて、ごめんなっ…」 翔の目からも、涙があふれていた。 翔 「でも、俺はどこにも行かない…っ。 一生、ずっと、お前の傍にいる…」 そう言って、翔は涙を手で拭い、鞄から白い箱を取り出した。 翔 「…本当は、もっと後で出すつもりだったんだけど…」 可恋「……っ!」 白い箱を開ける翔。 中身は―――― 翔 「…可恋。俺と、結婚…して下さい」 とても綺麗なリングだった―――。 それに感動して、また涙が溢れる。 翔 「ははっ…そんな泣くなよ」 流れる涙にくちづけをする翔。 可恋「だってっ…嬉しすぎて……っ」 翔 「…で、答えは……?」 可恋「喜んでっ…………」 翔は微笑み、綺麗なリングを私の指にはめる。 翔 「…もう、1人にさせない。幸せにするから……」 可恋「うんっ、うんっ…」 2人の影が、1つに重なった――――………。 [*前] | [次#] |