犬も食わない


本日快晴。船は順調に進んでいる。
…のだけど、何なのよ。船内のこの重い空気は。

原因はルフィとサンジ君なのは分かってる。
だけど、どうしてそうなったのよ。朝までは仲良く(目障りな程にね!)してたじゃないのよ。

放っておいてもよかったんだけど、やっぱりこの重い空気は気分の良いものじゃない。私は甲板で顔の上に麦わら帽子を乗せて寝転がっているルフィに声をかけた。

「ルフィ。あんた何したのよ?」

「…ナミか」

ルフィは私の問い掛けに、帽子をずらし、不機嫌そうな顔を覗かせた。

「失敬だな。おれは何もしてないぞ。悪いのはサンジだ!」

頬をぷぅっと膨らませて抗議をする可愛い顔。つい意地悪したくなってしまう。

「『サンジ君に』なんて言ってないけど」

「うぅっ…」

しまったというように、言葉を詰まらせ顔を赤くさせている姿はやっぱり可愛い。

「冗談よ。サンジ君があんたに対して目も合わせないから、何があったのかなと思ったのよ」

「…知らねぇ」

「盗み食いとかした訳じゃないの?」

「してねぇよ!」

「いたずらをやりすぎたとか」

「やってねぇよ!やってきたのはサンジだ!」

そう言ってルフィはしまったとでも言うかのように、口を押さえ、顔を赤くしている。

「…なにそれ。どうゆうことよ…」

聞くのが恐いが、興味の方が勝ってしまい、問い掛けた。
ルフィは口を尖らせながら小さく呟き始めた。黙っていても聞き出されると分かっているのだろう。

「………だってサンジさ。おれがもう嫌だって言ってるのに、何度もやろうと…」

そこまでルフィが言いかけた時、大きな衝撃音と共に、ルフィが目の前からいなくなった。代わりに、目の前には衝撃によって発生したであろう白い煙幕。

「てめぇナミさんに何言おうとしてやがる!」

「サンジ君!」

衝撃音は、サンジ君がルフィに自慢の足技をお見舞いしたせいらしい。
サンジ君は、笑顔で、しかし若干(ううん。かなりね)気まずそうに私の方を見た。

「すみませんナミさん。ルフィあっちに連れていきますね」

そう言って、ルフィを引きずってキッチンに行こうとするところを呼び止めた。

「サンジ君。元気なのはいいけど、相手のことも考えないと嫌われちゃうわよ」

瞬間、サンジ君が固まったのが分かったけど、気にせずにみかん畑へと向かうことにした。これ以上は、もう聞くのも関わるのもやめるわ。面倒だもの。



キッチン内ではルフィとサンジ君がいて、出てくる頃には仲直りをしているだろう。
そう。いつも通り目障りなくらいに。










「おいルフィ。おれが何で何度もやりたがるか、理解してねぇだろ」

「…だから、やりたいだけだろ?別におれじゃなくてもいいんだろ!サンジは!」

「ふざけんな!おれが今回怒ってんのは、お前のその考え方だ」

「…え?」

「誰でもいいとか、そんな訳ないだろ!?おれはルフィだからいいんだぜ?ルフィがいいんだよ」

「…本当に?」

「当たり前だろ。言わせんなよ馬鹿」

「うん…ごめん…」

「お前の怒りの原因も、おれがやれれば誰でもいいとか思い込んだからだろ」

「うっ…」

「全く。二度とそんなこと考えんじゃねぇよ」

「おぅ!」



そんなキッチンでの会話を、ロビンが能力で聞いていたが、流石に見るのは野暮だろうと、そこまでの会話を聞いて、読んでいた本に意識を移す。

「仲良しさんね」

そう小さく呟きながら。





END


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