ふわふわドーナッツ


昼飯を食っている最中に、テーブルの下でこっそりと手を繋いだ。



そうしたら、ナミに怒られた。

「あんた達、両手出して食べなさい!ほら、お皿押さえないからこぼしてる!」

だって。

サンジなんか

「サンジ君?貴方マナーについてうるさいはずよね?」

なんて睨まれてた。



ナミからは手を繋いでるところなんて見えないから、ただおれ達が怠慢なだけに写ってるんだと思う。


違うんだけどな。


少しの間でも離れていたくなくて

少しの間でも触れていたくて


だから手を離した後も、お互いの片方の膝をくっつけ合ってた。


触れているところが、じんじん暖かい。
そこから、ふわ、て幸せな感覚が広がる。
上手く説明出来ないけど、ふわふわして、きゅうってなる。
身体全部が。

ちらりとサンジを見たら、サンジもおれを見てて。
ぱちりと目が合えば、目を細めて凄く優しく笑った。

うわ、その顔やばい。
何だよサンジ。今そんな顔するなよ。皆いるんだぞ?


二人でいるときには、たくさん優しい笑顔を見せてくれるけど、皆でいるときには違うくせに。


皆がいるときにも、サンジは勿論笑う。
だけど違うんだ。
うん、全然違う。


思わず啣えていたポテトフライをぽろりと落とし(皿に落ちたからセーフだ)更に顔が熱くなったけど

「こぼしてんじゃねぇよ、クソゴム!」

乱暴な言葉遣いと共に、頭にチョップされた。

うげ、痛ぇ!
微妙に舌噛んだぞ?


それでもお互いの膝は触れ合ったままで。


皿に目を戻し、落としたポテトフライを再び啣えて今度はきちんと噛んで飲み込んだ。

ごくん。



触れているところが、じんじん暖かい。

サンジの作った料理を飲み込んだ喉もお腹も暖かい。
サンジが触れて、心を込めて作ったものだからかな。


ぼんやりそんなことを考えていたら


「今日のおやつはふわふわドーナッツ」


サンジが一言そう言った。


チョッパーやウソップが、やったぁと騒いでる。

おれは、今度は、啣えていたにんじん(これ、甘くて好きだ)をぽろりと落とし、かぁと顔を赤くした。

にんじんは皿には落ちずにテーブルに転がる。

「だから、こぼすなって言ってんだろ!」

サンジが今度は、おれのほっぺを引っ張る。
びょーんと伸びるほっぺ。

それからぐいと顔を引き寄せて耳元で囁いた。


「よろしく、キャプテン」


皆には聞こえないくらいの小さな囁き。
一瞬の出来事。


囁かれた耳がじんじんする。
顔も赤いんだと思うけど、どうにもならない。


テーブルに転がったにんじんをフォークで刺して、今度はきちんと噛んで飲み込んだ。

…甘い。



昼飯が終われば、おやつがあって、夕飯があって、夜食。


それから今日は夜食の後に、サンジとの甘い甘い時間が待っている。



ふわふわのドーナッツ



それが二人の秘密の暗号。


甘くてふわふわで。
そっくりだから。




じんじん暖かい触れ合う膝もいいけど、やっぱり全身で暖かさを感じたい。
だからおれはサンジに、こう言葉を返す。



「たくさんくれよな?サンジ」






END


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