姫始め 1月1日のこと。 「なぁサンジ。姫始めってなんだ?」 元旦の朝っぱらからルフィがそんなことを聞いてきた。 おれは朝食…いわゆるお節を作っていた手を止めた。 「なんで」 「ナミとロビンが話してたんだ。んで、どーゆう意味だって聞いたら、サンジに聞けって言われた」 …ナミさん。それは、おれがコックだからですか?それとも…。 つぅっと嫌な汗が一筋流れた。 「なぁ。知ってんなら教えてくれよぉ」 ものを知らないのを馬鹿にされたと思っているのか、口を尖らせて拗ねた声を出す。 フム。どうしようか。 おれはポケットから煙草を出し、火をつけ一息。 「ルフィ。それ、マジで知りたいのか?」 「おぅっ!」 ぱぁっと顔を輝かせ、身を乗り出してきたルフィ。 その顔が可愛くて愛しくて、悪戯心に火がついた。 「よし。教えてやるよ。実践で詳しくな…」 ルフィの耳元でそう囁き、朝飯…まぁ新年の挨拶後の宴で昼を過ぎちまうだろうが、それが終わったら展望室に来るように伝えた。 もちろん、一人で、こっそりと来いよと言葉を添えることも忘れずに。 まぁクルーの皆は分かってたみたいで(あぁ、何とも情けない。だけどそんなの関係ないくらいに、おれは満たされたんだが)誰も展望室には近づかなかった。 まさかルフィからのお誘い。 (おれはそう受け取った) 据え膳食わねばなんとやら、だ。 ********* それから。 ルフィの匂いも体温も声も、全部おれのものだと実感。つか再確認。 幸せ過ぎる年明けだ。 ナミさんとロビンちゃんには感謝の意を込めて、夜には素敵なデザートを用意した。 いくらなんでも、口には出さなかったけどな。 だっておれは麗しきこの2人が大好きで、そんな2人に惚気のようなものを聞かせるのは失礼に当たるし、まだ残るプライドが許さない。 2人の目は「感謝しなさいよ」と言っていた。 はい。とても感謝しています。 ルフィは夜になっても、体を怠そうにさせていて、おれと目が合うと、ぽっと頬を赤くさせながらじろりと睨むが、その後少しだけ笑った。 クソ可愛い過ぎる。夜も絶対止まらない。 次の日には、きちんと用意したさ。 軟らかく炊いた飯。いわゆる姫飯(ひめいい)をな。 意味を説明してやると、ルフィはまたおれを小さく睨んでたっけ。 あぁクソ可愛い。今年一年も、この愛しき船長はおれを満たしてくれるだろう。 END |