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あいつとあの子が結婚するって



兄弟と好きな子が結婚した六つ子の話
繋がってない


大好きな2人が結婚した。報告されたとき、結婚式ではスピーチもやってほしいんだと、そう言われた。私たちが結ばれたのは、おそ松くんが私と彼の背中を押してくれたからなのって、幸せそうな顔で言われたんだ。そんな顔で頼まれちゃ、俺も君のこと好きだったよなんて言えるはずがなかった。

大好きな兄弟と大好きな彼女は誓いのキスをした。俺はそれを一番近くで見守っていた。神様よりも、誰よりも近くで。あいつはいい奴だなんて知っているのだ。だから笑って祝福した。演技は上手だから上手く笑えていただろう。引き出物のバウムクーヘンは、 とても甘いのに何故かひどくしょっぱかった。

「おめでとう」そう言った声は、震えてはいなかっただろうか。俺だって、君のこと好きだったよ。それを伝えて拒まれるのを怖がって怯えて恐れて怖気づいた。だって、否定されるのは嫌じゃないか。そうしているうちに彼女は他の男の物。しかも、相手は自分の一番近くにいた男だ。笑えない話だった。

ああ良かったねおめでとう。幸せになれるんじゃないですか、僕みたいなクズの隣にいるよりは、ずっと。あいつならきっと彼女を幸せにしてやれるだろう。これが最適解。クズなんかに想いを寄せられても、好きだと告げられても気持ちの悪いだけでしょう。だからこれで良かったと、そう自分を騙していた。

結婚するんだ!おめでとー!あの子は幸せに笑っていて、その笑った顔を幸せそうに眺めるのは僕の兄弟。僕めちゃくちゃあれ投げるね!あの、米!ライスシャワー!二人が帰った部屋で一人になって、あれ、おかしいな。大好きな2人が幸せそうなのに、どうして僕は、泣きそうになっているんだろう。

おめでとう、ブーケは僕にくれるよね?そう言って可愛く笑えば、彼女も兄さんも笑った。知っているんだ。あんなおかしな兄さんでも、誰より優しい人だってこと。だって後ろから、いつも見ていたから。知っているんだ。あの子が兄さんのことずっと好きだったこと。だって後ろから、いつも見ていたから。

これでいいのだと強がる声は、誰にも聞かせず飲み込んだ。