7 「……ミリィちゃんは……」 小さく、チャンドラは声を出した。 思ってもみない大チャンスである。 傷心の彼女を慰める……つけ入る様で心は痛むが、彼はこの機会を逃したくは無かった。 彼女の肩に手を置き、優しく。 「あいつのこと……まだ、好きなの?」 言って――愕然としてしまう。 何を言っているんだ? そんな事を言いたい訳じゃないだろ? もっとこう……あるじゃないか、色々と。 伝えたい思いはある。しかしそれは脳にとどまり、代わりに口をつくのは、思いとは正反対の言葉。 「でも、ディアッカは……」 「あいつは良いんだ。ミリィちゃんが、あいつのこと、どう思ってるのか」 <――って、何訊いてんだよ、俺!!> そんな事訊いたって、答えは目に見えている。 絶対に、ミリアリアの口から聞きたくない答えが。 万に一つの奇跡を願っても、全くもって、ありえない。 「……すき……みたい」 小さくつぶやき、彼女は顔を伏せる。その姿がまた愛らしく、儚げで……チャンドラはやり切れない気持ちで一杯になった。 何故彼は、彼女を置いて、プラントに――ザフトに戻ってしまったのか。 いや、分かっている。どうしようもない現実があることを、チャンドラは知っている。 ミリアリアは、ナチュラルだから。 ナチュラルが平和に暮らせるほど、プラントの情勢は安定化していない。 連れて行けるはずも無い―― 「ずっと……ずっと、好きで。でも、あいつのこと忘れなくちゃって……だから、自分が振ったんだ、って……あんな男、自分から見限ってやったんだって、そう、考えるようにして……」 瞳に涙を溜めながら、彼女はあざ笑った。 「……駄目だなぁ、私……そんな事したって、何が変わるわけでもないのに」 実際――想いは消えるどころか、膨らむ一方だ。 「どうしたら、忘れられるんだろう……」 遠いどこかを見やるミリアリアの瞳。 うつろで、哀しみのあふれる瞳。 「……なら、忘れなきゃ良いんだよ」 そんな彼女を見ながら、我知らず、チャンドラはつぶやいていた。 |