5 三人は固まってしまった。 チャンドラとミリアリア、そしてディアッカ。若干一名を除き、思いもよらぬ再会劇に、言葉も出なくなっている。 「……知り合い?」 「まあ、そんな所だ」 シホの問いかけに、ディアッカが答える。 このやり取りで、ディアッカの方は、金縛りから抜け出した。 「よう、二世、久しぶり。どうしたんだよ、わざわざ月まで」 「いや……その……」 きっと彼の戦艦にも、AA――とまで行かなくとも、オーブ船籍が入港してる事実は、伝わってるだろう。 自分達がそこに関わっているなど、知られてはならない。 二年前は味方だった人物でも、今現在は「ザフト」なのだから。 「ちょっと、観光にな」 「ふぅん」 軍事関係の面でびくびくしながら、一方でチャンドラは、ディアッカの態度に違和感を覚えていた。 最初は驚いたディアッカだが、ミリアリアに関して、何も話を振ろうとしない。 逆に、ミリアリアの様子が気になった。 下を向き、肩を震わせる彼女の姿が。 「ディアッカこそ、どうしたんだよ。復隊したんだろ? ザフトに」 「ああ。もー毎日大変で大変で。今日も短すぎる休暇を堪能中」 「そっか。なら、邪魔しちゃ悪いな」 とにかくチャンドラは、一刻も早く、目の前の三人組から離れたかった。 それは――ミリアリアも同じらしい。 「……いこ、チャンドラさん」 袖を引っ張り、離れることを促す。 「じゃ、また今度な」 「おお」 本当に――本当に不思議だ。 どうしてこんなに、あっさりしている?? ミリアリアと二人で歩いているのに、ディアッカがこんなにも簡単に、自分達を送り出してくれるとは思わなかった。 ありがたいと感じはするものの、心に何かが引っかかる。 「……まさか、こんな所であいつと出くわすとは、ね」 笑い混じりに、あっけらかんと言うチャンドラ。しかしミリアリアは、落ち込んだままだ。 「やっぱ、振った男と偶然ばったり――は、やりにくいよな〜」 何に気を落としているのか分からないが、少しでも雰囲気を明るくしたくて、そんなことまで言ってみたが―― 「――がうの」 ひどく小さな呻きとともに、彼女はその場にしゃがみ込んでしまった。 「え、え?! ミリィちゃん??」 「ちがうの……」 オロオロするチャンドラを他所に、膝に顔をうずめるミリアリアは、衝撃的事実を告白した。 「振ったんじゃないの……」 涙を溜めて、彼女は告げる。 「わたしが、ふられたの」 瞬間、チャンドラの頭は真っ白になった。 |