三人は固まってしまった。
チャンドラとミリアリア、そしてディアッカ。若干一名を除き、思いもよらぬ再会劇に、言葉も出なくなっている。

「……知り合い?」
「まあ、そんな所だ」

シホの問いかけに、ディアッカが答える。
このやり取りで、ディアッカの方は、金縛りから抜け出した。

「よう、二世、久しぶり。どうしたんだよ、わざわざ月まで」
「いや……その……」

きっと彼の戦艦にも、AA――とまで行かなくとも、オーブ船籍が入港してる事実は、伝わってるだろう。
自分達がそこに関わっているなど、知られてはならない。
二年前は味方だった人物でも、今現在は「ザフト」なのだから。

「ちょっと、観光にな」
「ふぅん」

軍事関係の面でびくびくしながら、一方でチャンドラは、ディアッカの態度に違和感を覚えていた。
最初は驚いたディアッカだが、ミリアリアに関して、何も話を振ろうとしない。

逆に、ミリアリアの様子が気になった。
下を向き、肩を震わせる彼女の姿が。

「ディアッカこそ、どうしたんだよ。復隊したんだろ? ザフトに」
「ああ。もー毎日大変で大変で。今日も短すぎる休暇を堪能中」
「そっか。なら、邪魔しちゃ悪いな」

とにかくチャンドラは、一刻も早く、目の前の三人組から離れたかった。
それは――ミリアリアも同じらしい。

「……いこ、チャンドラさん」

袖を引っ張り、離れることを促す。

「じゃ、また今度な」
「おお」

本当に――本当に不思議だ。
どうしてこんなに、あっさりしている??

ミリアリアと二人で歩いているのに、ディアッカがこんなにも簡単に、自分達を送り出してくれるとは思わなかった。
ありがたいと感じはするものの、心に何かが引っかかる。

「……まさか、こんな所であいつと出くわすとは、ね」

笑い混じりに、あっけらかんと言うチャンドラ。しかしミリアリアは、落ち込んだままだ。

「やっぱ、振った男と偶然ばったり――は、やりにくいよな〜」

何に気を落としているのか分からないが、少しでも雰囲気を明るくしたくて、そんなことまで言ってみたが――

「――がうの」

ひどく小さな呻きとともに、彼女はその場にしゃがみ込んでしまった。

「え、え?! ミリィちゃん??」
「ちがうの……」

オロオロするチャンドラを他所に、膝に顔をうずめるミリアリアは、衝撃的事実を告白した。

「振ったんじゃないの……」

涙を溜めて、彼女は告げる。


「わたしが、ふられたの」


瞬間、チャンドラの頭は真っ白になった。

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